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#3 大河ドラマ「光る君へ」たらればさんに聞く

源氏物語のあのシーンが…!「光る君へ」ライブで楽しめる〝幸運さ〟

滋賀県大津市の「大河ドラマ館」では「光る君へ」の主人公・紫式部「まひろ」を演じる吉高由里子さんが撮影で着用した衣装も展示されています
滋賀県大津市の「大河ドラマ館」では「光る君へ」の主人公・紫式部「まひろ」を演じる吉高由里子さんが撮影で着用した衣装も展示されています 出典: 朝日新聞

紫式部を主人公としたNHK大河ドラマ「光る君へ」。SNSでは、リアルタイムで視聴する人がタグをつけておのおのの思いを発信しています。平安文学を愛する編集者のたらればさんは「大河ドラマになったことで、多くの人と〝ライブ感〟を味わえる幸運を感じています」と話します。(withnews編集部・水野梓)

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この記事は、大河ドラマ「光る君へ」第5回「告白」の放送後、2月4日にXで開催されたスペースの内容を編集して配信しています

源氏物語のシーンを見つけたいオタク心

脚本の大石静さんは「光る君へ」にさまざまな『源氏物語』の印象的なエピソードをちりばめています。

代表的なものでは、第1回「約束の月」で、幼少期の紫式部であるまひろが、かごの中の小鳥を逃がして追いかけ、三郎(道長)と出合うシーンがありました。

たらればさんは「これは、『源氏物語』「葵」のなかの、雀の子を犬君(女房)が逃がしてしまい、泣いている紫の上を光源氏が見初めるシーンを意識していますよね。幼い姫君が小鳥を逃がしたことで貴公子に出合うわけです。にくいな~と思いました」と話します。

直近の第7回「おかしきことこそ」では、女性の品定めをする男たちの会話を、まひろが聞いてショックを受けるくだりがありました。第3回「謎の男」のなかにも、若い男たちが女性を品定めするシーンがあります。

『源氏物語』「帚木」では、ある夏の日、雨の夜、光源氏のもとに頭中将たち男性貴族がやってきて、女性の好みや「質」を評するエピソードがあります。

たらればさんは「本家の『雨夜の品定め』は、ドラマよりさらにゲスいです。『女は中流がいい』だとか、『賢い女はつまらない』とか言い合っています。そういう(今の価値観でいうと)下品な話を、光源氏(≒道長)がほぼ聞いているだけ、というのは似ているかもしれません」と指摘します。

「こんな風にオマージュをちょいちょいと入れ込まれると、元ネタを見つけたくなるのがオタク心。視聴者としてのたしなみですよね」と笑うたらればさん。

「探すだけでもワクワクしますし、改めて源氏物語を読み直さなきゃいけないな…と思いましたね。それにしても、どこがどう出てくるか分からないので油断ならない。メモをとるか画面に見入るか呟くか、毎回毎秒迷っています」

大河ドラマで〝自分宛て〟の物語に

たらればさんは、「源氏物語も当時、きっと読者である女房たちがわいわい言い合いながら読んで、感想や元ネタを披露しあって、今回の大河ドラマのように楽しんでいたのだと思うんです。ただ、当時と今とでは文化も社会制度も生活環境も全く違うので、やっぱり根っこのところで源氏物語は自分宛の物語ではないんだなぁとも感じます」と話します。

「源氏物語も枕草子も、今から1000年前の作品であって、貴族のごく数十人、多くても数百人にあてられた読み物です。自分も含めて現代を生きる人々は、あの作品の想定読者ではなく、誰かの注釈なし、現代語訳なしには味わえません。そもそも自分が布団で寝転がって読んで感想を叫んだところで、もう雲の上にいる作者にはどうやっても届きませんし」

出典: ※画像はイメージです Getty Images

ところが大河ドラマになったことで、大きな変化が起きます。

知的なカルタ「偏継(へんつぎ)」や、豪華な装いで神に舞を捧げる「五節の舞」、入り組んだ伏線や台詞回しなど、当時の文化や宮廷行事がドラマで演じられることで、平安時代がとてもリアルに、身近に感じられるようになりました。

たらればさんは「『ああ…この作品は、私宛につくってもらっている』というカスタマイズされた喜びを感じています。そして何より、毎週毎週更新されて、こうやって皆さんとSNSを通じて一緒に楽しむことができる、新たに源氏物語読んでみようかなと思ってもらえる、このライブ感を味わえるというのは、なんと幸運なことでしょう」とたたみかけます。

「そんな幸運が、源氏物語ファンの心を乱しているんだろうと思います。自分の情緒が1年もつかな、というのはやっぱり心配ですが…」

「ハッピーエンドで終わってもいい」

藤原道長といえば、栄華を極めた人として知られていますが、たらればさんは「実は最後はしんどい亡くなり方をしていているんです」と話します。

「あれ、これってネタバレになりますか? あ、いや、でも道長が死んだの1000年前だしな…(笑)」

「彼は娘を(生涯もうけた6人のうち)5人も入内させ、そのうち2人は道長が現役の政治家であるうちに夫(帝)が亡くなっている。自身の権力を最も発揮しやすい状況を作り出した。これはひとりの栄華のためにやったとは思えません。彼は彼なりに、家族や子孫のためにやったわけです」

「しかし、ナンバーワンになるためには、たくさんの人を蹴落とさなければならない。娘6人のうち生前に3人まで亡くしていますし、自分の娘の夫を引きずり下ろすこともあったし、娘が政敵の怨霊から苦しめられることもあった。娘からそういったことを恨まれ、呪われてしまうこともあった。ドラマでは今後、そんな道長がどのように描かれるのか…」と語ります。

「光る君へ」のストーリーは、道長(三郎)からの恋文を焼いて思いを断ち切ろうとするまひろ、まひろに思いを寄せる道長、打毬(だきゅう)の会で道長に好意を持った倫子さま…とさまざまな感情が交錯していき、そこに政治的な思惑も絡み合っていきます。

史実では、たらればさんの〝最推し〟の清少納言が仕えた中宮・定子さまも、道長の台頭や父・道隆の死去などで、宮廷で孤立していってしまいます。

「史実が分かっているので、今からつらいですね…。ドラマはドラマ、フィクションなので、みんなで手をつないでハッピーエンドで終わってもいいんですよ、と強く訴えたいです」と話していました。

◆たらればさんの「光る君へ」スペース採録記事、前回は<「光る君へ」楽しみ方 間違い探しをするよりも…たらればさんの思い>、中編は<大河ドラマ「光る君へ」深掘りしたい人へ たらればさんのおすすめ本>です。

3月3日(日)21時~、再びたらればさんを招いたスペースを開催(https://twitter.com/i/spaces/1kvJpvpLNmbKE)します。ぜひご参加ください。

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