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「光る君へ」楽しみ方 間違い探しをするよりも…たらればさんの思い

「源氏物語」の作者・紫式部を主人公にしたNHK大河ドラマ「光る君へ」。放送1カ月のタイミングで、編集者のたらればさんに、ドラマの感想を聞きました
「源氏物語」の作者・紫式部を主人公にしたNHK大河ドラマ「光る君へ」。放送1カ月のタイミングで、編集者のたらればさんに、ドラマの感想を聞きました

目次

「源氏物語」の作者・紫式部を主人公にしたNHK大河ドラマ「光る君へ」の放送から1カ月。平安時代の文学作品を深く愛する編集者・たらればさんに、その魅力と楽しみ方を聞きました。初回が衝撃的なシーンで終わり、「史実との違い」を指摘する声もありますが――?(withnews編集部・水野梓)

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この記事は、大河ドラマ「光る君へ」第5回「告白」の放送後、2月4日にXで開催されたスペースの内容を編集して配信しています

最推しの登場「情緒がもつのか…」

1000年の時を超えて読み継がれる『源氏物語』を書いた紫式部を、吉高由里子さんが演じる大河ドラマ「光る君へ」。藤原道長を柄本佑さんが演じ、脚本は大石静さんです。

制作発表時からSNSでファンとしての思いを発信してきた編集者のたらればさんは、「ドラマが始まるまでは、不安9割・期待1割でした」と振り返ります。

「源氏物語は原典が現存していませんし、解釈もさまざま。作者である紫式部の出自も諸説が林立しています。それを、誰の解釈、どの学説ベースでやるのか、それをマニアや研究者は受け入れられるのか、そもそも『合戦』がない、平安宮中の貴族たちのドロドロ政治&恋愛劇を現代の視聴者は楽しめるのか…。何から何まで不安で…どの立場で心配しているんだ、と言われたらその通りなんですが…(笑)」

「光る君へ」に主演する俳優の吉高由里子さんが参詣者に豆をまいた成田山新勝寺の節分会=2024年2月3日、千葉県成田市、上沢博之撮影
「光る君へ」に主演する俳優の吉高由里子さんが参詣者に豆をまいた成田山新勝寺の節分会=2024年2月3日、千葉県成田市、上沢博之撮影

しかし始まってからは、「あっという間の1カ月。毎週、毎週、心が上がったり下がったり、翻弄されまくっています。予想をはるかに超えるできばえですね」と評します。

「すごく面白いんですが、一番心配なのは、1年間、最終回までに自分の情緒がもつかどうかです。特に第6回の予告に清少納言(ファーストサマーウイカさん)が登場して、心が乱れています」と苦笑します。

『枕草子』を書いた清少納言を愛するたらればさん。

「このあと、千年前に死んだはずの〝最推し〟が大河ドラマに登場して、何千万人という視聴者が見ているなかで、史実としては凋落していってしまう…。織田信長や明智光秀が好きな人とかは、だいたい3年に1回くらいのペースでこのハラハラを味わっているんですよね。毎回どうやって本能寺を迎えているんでしょう、本当に聞いてみたいです」と話します。

「間違い探しをするよりも」

紫式部は本名さえもはっきり分かっておらず、母親については資料がほとんど残っておらず早くに死別したらしい、と言われています。

「光る君へ」第1回では、紫式部の子どもの頃の「まひろ」が、同じく子どもの頃の「三郎(後の藤原道長)」に会いたくて待ち合わせ場所へ急いで向かう道中に、三郎の兄・道兼がまひろの母を殺害する、という衝撃的なシーンで終わります。

「そうとうの勇気がないとできない展開だなと思いましたね。道長の『三郎』呼びについても、父・兼家には5人の息子がいるのでおそらく当時、道長は『五の君』と呼ばれていたんじゃないかなと思いますし、気軽に一人徒歩で街中を歩き回るし、兄の道兼は自らの手で殺人を犯すし…。そういう演出を観て、ああ、これは、紫式部ではなく『まひろの物語』なんだなという決意を実感しました」と指摘します。

第1回の終了後、SNSでは史実との違いを指摘する声もありました。

しかし、たらればさんは、KADOKAWAソフィア文庫が主催した研究者の河添房江さん(東京学芸大学名誉教授)と川村裕子さん(新潟産業大学名誉教授)のスペースを聞いて、共感したことがあるそうです。

「河添先生が『間違い探しをするよりも、史実との違いを知って(ドラマでは)なぜこう変えたんだろうと考えるほうが楽しい』と仰っていたんです。これは見習いたいなぁ、すばらしい理想の視聴スタイルだなと敬服しました」と言います。

道長は女性に応援された政治家

第5回では、兄・道兼がまひろの母を殺したことを知った道長が、兄を問い詰めます。

一方で、吉田羊さん演じる道長の姉・藤原詮子は、早期の譲位・退位をもくろみ円融帝を毒殺しようとした父・藤原兼家のやり方に絶望します。

たらればさんは「今回の大河、『うまいなぁ』と思う設定はいくつかあるんですが、その中でも『詮子の絶望をきっちり描いているところ』は出色の出来だと思うんですよね」と指摘します。

現存する古記録や史料で、詮子は早いうちから円融帝と没交渉になり、帝の一の君(第一皇子)である懐仁親王とともに実家へ里下がりしていたことや、そこに父・兼家の思惑が絡んでいたことは分かっていますが、それを踏まえつつ、「光る君へ」では「本人(詮子)は帝と健全な関係を保ちたい、愛し合っていたいと思っていたけれど、父や兄の思惑や政治力学で許されなかった(かもしれない)」という視点を入れています。

「道兼や道隆が出世できたのは、ひとえに自分(詮子)が帝と苦しいながらも関係を保ち、男子を産んだからであって、女子の力を使うだけ使っておいて、ひと段落したら蚊帳の外どころか夫を毒殺狙いかよ、という怒りは、考えれば考えるほど真っ当なんですよね」と指摘します。

「そこで、右大臣である父とのパワーバランスを考えると、左大臣・源雅信に近づくしかありません。詮子さまが娘の源倫子さまを道長へ紹介するんだろうな、と考えられますよね」

たらればさんは「藤原道長は女性に応援され、女性の力を大いに借りて出世していった政治家」と指摘します。

「ここからさらに、どんどん女性が活躍してゆくでしょう。そういう時代なので。そのうえで、第5回で道長に『父や兄のような政治家にならないぞ』という片鱗が芽生えていますよね。もともとわたしは筋金入りの清少納言派で、これまで藤原道長という政治家が好きじゃなかった…はっきり言うと嫌いだったんですけど、このドラマのおかげでうっかり好きになりそうです」と言います。

一方で、凋落していく〝最推し〟を見なければならない状況に「最終的には報われない、ということが分かっているわけですよね。そこへの道行きがせめて幸せであればなぁという願いを持っています…。ああ本当に、石田三成とか坂本龍馬が好きな人は、毎回どうやって気持ちに折り合いを付けているんでしょうか…って、我ながら何言ってるんでしょうね(笑)」と話しています。

◆次回は、読んでおくとさらに「光る君へ」が楽しめる、たらればさんのおすすめ本を紹介します

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