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骨髄バンク、ドナー登録やってみた 「これで終わり?」想像より簡単

採血があり「もっと大変なのかな」と感じていた骨髄バンクのドナー登録。献血とセットであれば、その流れのなかで登録でき、想像していたよりも簡単でした=2024年1月、東京・秋葉原の「akiba:F献血ルーム」
採血があり「もっと大変なのかな」と感じていた骨髄バンクのドナー登録。献血とセットであれば、その流れのなかで登録でき、想像していたよりも簡単でした=2024年1月、東京・秋葉原の「akiba:F献血ルーム」

目次

ドナー登録者の半数超が40代以上で、若い世代の登録が喫緊の課題となっている骨髄バンク。そもそもどこで、どんな風に登録できるのでしょうか? 記者がドナー登録をしてみました。(withnews編集部・水野梓)

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55歳でドナー引退 若い世代に呼びかけ

日本骨髄バンクは、骨髄移植が必要な血液などの病気の患者と、ボランティアで登録したドナーをつないでいます。これまで、2万8千例を超える骨髄・末梢血幹細胞提供を取り扱ってきました。

バンクのドナーには現在54万人が登録していますが、半数超が40、50代です。

ドナーの健康を考えて「55歳で引退」と決まっています。そのため、10年以内におよそ22万人も減ってしまう――という厳しい現状に直面しているのです。

そこでSNSなどを通じて、若い世代を中心にドナー登録を呼びかけています。

【関連記事】「ぼく、しむ」ドナーを待つ息子のために父は… 骨髄バンクのピンチ

骨髄バンクがドナー登録を呼びかけていることは知っていたものの、「なんとなくうまくいっているのかな」と漠然としたイメージを持っていたので、取材を始めてとても驚きました。

移植を必要とした患者さんやドナー経験者の取材を経て、自分も役立てるなら役に立ちたい――。

そう考えるようになり、骨髄バンクや日本赤十字社の協力を得て、自身のドナー登録の流れを取材させてもらうことにしました。

献血ルームや保健所で登録可能

骨髄バンクのドナーは、全国各地の献血ルームや保健所などで登録できます。

ホームページに記載されているドナー登録受付窓口の情報を確認し、事前に問い合わせるとスムーズだといいます。

【ドナー登録 受付窓口】https://www.jmdp.or.jp/reg/reception/

記者が訪れたのは1月下旬、東京・秋葉原の献血ルーム。東京都赤十字血液センターの広報担当者・平柳美月さんが出迎えてくれました。

秋葉原の献血者は30~40代の男性が多く、若い世代が多いのは新宿や池袋の献血ルームだといいます
秋葉原の献血者は30~40代の男性が多く、若い世代が多いのは新宿や池袋の献血ルームだといいます

アニメやサブカルチャーの発信地らしく、入り口にもアニメのグッズが展示されていたり、本棚にはずらっと漫画が並んだりしています。

ドナー登録ができる人は…

ドナー登録ができる条件は下記のようになっています。

・18歳以上、54歳以下で、健康状態が良好
・体重が男性45kg以上/女性40kg以上
・提供の内容を十分に理解している

病気の治療中や、がんや白血病など血液の病気にかかったことがある人、輸血を受けたことがある人などは登録できません。

【ドナー登録の条件】https://www.jmdp.or.jp/reg/requirement/

年齢制限をのぞけば、健康状態がよく、献血ができる人はドナー登録もできそうです。

※献血は55歳~69歳でも可能ですが、65歳以上の献血は60~64歳の間に献血経験のある人のみ

献血ルームには、ドナー登録の説明用のタブレットが置いてあり、提供の内容を確認することもできます。

献血ルームの入り口には、骨髄バンクについて説明するタブレットが備えつけられています
献血ルームの入り口には、骨髄バンクについて説明するタブレットが備えつけられています

骨髄バンクの冊子「チャンス」に付属している登録申込書に、氏名・血液型といった必要事項を記入して、スタッフに渡します。

献血の事前検査で血液を採取

記者の場合は、せっかくなら献血もしようと考え、学生時代ぶりの献血の受付手続きも進めました。

受付のタブレットで海外渡航歴などの質問に答えていきますが、アプリやウェブで事前に答えておけば、その手続きをスキップできるそうです。

医師の問診を経て、あたたかい飲み物(無料で、お茶やスープなどバラエティーも豊か)で水分を補給したあと、事前検査へ。少量の血液を採取し、貧血の恐れがないか調べます。

この事前検査の時に、骨髄バンクに送るための血液も採取します。

血管の太さをみてもらい、献血する方とは逆の腕で事前検査をします
血管の太さをみてもらい、献血する方とは逆の腕で事前検査をします

秋葉原の献血ルームでは、骨髄バンクのドナー登録者は1日に1人いるかいないか、とのこと。

水泳の池江璃花子選手の時のように、著名な人が白血病を公表した時などは、一時的にドナー登録者が増える傾向があったそうです。

採血した血液の検体は専用バッグに入れられ、血液センターに送られます。

骨髄登録の検体を搬送するバッグ。夏は保冷するそうです
骨髄登録の検体を搬送するバッグ。夏は保冷するそうです

献血をしない場合は、ドナー登録はこれで終了で、「あれ?もう終わり?」という感覚でした。

混んでいない日にスムーズに進めば、15分ほどで終わるとのことでした。

献血のゆくえ、輸血だけじゃない

記者はその後、久しぶりの献血へ。事前検査で血色素量が男性13.0g/dL以上、女性12.5g/dL以上あれば、もっとも求められる全血400ミリリットルの献血が可能です。

取材が決まった日から鉄分多めの食事を意識していたものの、以前、血色素量が低くて献血ができなかった経験があり、「できなかったらどうしよう」と心配していた記者。

結果は、12.2g/dLでした。あれっ、下回ってしまった。

しかし12.0g/dL以上あれば、赤血球などを体に戻す「成分献血」は可能です。

出典:日本赤十字社の「献血基準」

平柳さんは「献血というと、事故に遭った時の大量出血用などの輸血で使われるイメージがあるかもしれませんが、実は最も多く使われているのは『がん』の治療です。また、そのまま輸血に使われるだけでなく、感染症・やけどなどの治療の薬の原料にも使われています」と話します。

献血された血液量のうち、2022年度は44.5%が輸血用として使われ、55.5%が「血漿分画(けっしょうぶんかく)製剤」用として使われています。

ドナーから骨髄を移植される患者さんも、治療で輸血や献血から造られた製剤を使うケースは多いそうです。

ドナー登録カードを手に…

初めての成分献血に緊張していましたが、針の太さは全血献血とあまり変わらず、痛みもありませんでした。

スタッフの皆さんも「寒くないですか?」「定期的に脚を動かしてくださいね」などと声をかけてくださり、あたたかい湯たんぽをおなかに抱えて、相撲中継を見ているうちに40分ほどで終わりました。

緊張していた成分献血。ひんやりした血液が戻ってくるような不思議な感覚で、少し肌寒くなりましたが、痛みなどはありませんでした
緊張していた成分献血。ひんやりした血液が戻ってくるような不思議な感覚で、少し肌寒くなりましたが、痛みなどはありませんでした

赤血球などを体に戻せるので全血献血よりも負担が少なく、2週間後にはまた献血が可能だといいます。

終了後、水分をとって休憩している間に、ドナー登録カードが完成して献血カードとともに手渡されました。

手渡されたドナーカード
手渡されたドナーカード

実際に骨髄移植に進むには、患者とドナーの白血球の型が適合する必要があります。

その確率は数百から数万人にひとりともいわれ、ドナー登録しても1度も適合通知が来ないまま…という人も多いようです。

しかし、同じ型のドナーが見つかっても、「仕事が休めない」といった理由で骨髄提供につながらないケースも多く、希望する患者の二人に一人しか骨髄移植がかなっていない厳しい現状があります。

骨髄提供ドナーを経験した漫画家の水谷さるころさんは、「ドナーは〝選ばれし勇者〟」と表現していました。

【関連記事】骨髄ドナーは〝選ばれし勇者〟3回経験した夫婦「健康のおすそわけ」

「採血が平気とか健康状態がいいとか、もちろんドナー登録には向き不向きがある」としつつも、「『勇者に選ばれた!』という気持ちで前向きにやってもいいと思うんです」と話していたのが、記者の心に強く残っています。

できれば誰も病気になってほしくない…と願うものの、そんなわけにもいきません。

必要とする誰かと型が一致したとき、もし自分が役に立てるなら役立てたらと思います。

その時まで、定期的に献血にもいきたいな、と改めて感じた体験でした。

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