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骨髄バンク、ドナー登録やってみた 「これで終わり?」想像より簡単
ドナー登録者の半数超が40代以上で、若い世代の登録が喫緊の課題となっている骨髄バンク。そもそもどこで、どんな風に登録できるのでしょうか? 記者がドナー登録をしてみました。(withnews編集部・水野梓)
日本骨髄バンクは、骨髄移植が必要な血液などの病気の患者と、ボランティアで登録したドナーをつないでいます。これまで、2万8千例を超える骨髄・末梢血幹細胞提供を取り扱ってきました。
バンクのドナーには現在54万人が登録していますが、半数超が40、50代です。
ドナーの健康を考えて「55歳で引退」と決まっています。そのため、10年以内におよそ22万人も減ってしまう――という厳しい現状に直面しているのです。
˗ˏˋ #ドナー登録 のやり方⭐️ˎˊ˗
— (公財)日本骨髄バンク (@JMDP1789) November 21, 2023
①登録のしおり『チャンス』を読む📖
➡https://t.co/50j8m7SyEL
②登録会場へ🏃
「登録申込書の記入」と「2mLの採血」をして受付完了💉
📢提供経験者が語る!
ドナー登録~提供までの流れはこちらから
➡https://t.co/fWMUKK1m5N#骨髄バンク
そこでSNSなどを通じて、若い世代を中心にドナー登録を呼びかけています。
骨髄バンクがドナー登録を呼びかけていることは知っていたものの、「なんとなくうまくいっているのかな」と漠然としたイメージを持っていたので、取材を始めてとても驚きました。
移植を必要とした患者さんやドナー経験者の取材を経て、自分も役立てるなら役に立ちたい――。
そう考えるようになり、骨髄バンクや日本赤十字社の協力を得て、自身のドナー登録の流れを取材させてもらうことにしました。
骨髄バンクのドナーは、全国各地の献血ルームや保健所などで登録できます。
ホームページに記載されているドナー登録受付窓口の情報を確認し、事前に問い合わせるとスムーズだといいます。
記者が訪れたのは1月下旬、東京・秋葉原の献血ルーム。東京都赤十字血液センターの広報担当者・平柳美月さんが出迎えてくれました。
アニメやサブカルチャーの発信地らしく、入り口にもアニメのグッズが展示されていたり、本棚にはずらっと漫画が並んだりしています。
ドナー登録ができる条件は下記のようになっています。
病気の治療中や、がんや白血病など血液の病気にかかったことがある人、輸血を受けたことがある人などは登録できません。
年齢制限をのぞけば、健康状態がよく、献血ができる人はドナー登録もできそうです。
献血ルームには、ドナー登録の説明用のタブレットが置いてあり、提供の内容を確認することもできます。
骨髄バンクの冊子「チャンス」に付属している登録申込書に、氏名・血液型といった必要事項を記入して、スタッフに渡します。
記者の場合は、せっかくなら献血もしようと考え、学生時代ぶりの献血の受付手続きも進めました。
受付のタブレットで海外渡航歴などの質問に答えていきますが、アプリやウェブで事前に答えておけば、その手続きをスキップできるそうです。
医師の問診を経て、あたたかい飲み物(無料で、お茶やスープなどバラエティーも豊か)で水分を補給したあと、事前検査へ。少量の血液を採取し、貧血の恐れがないか調べます。
この事前検査の時に、骨髄バンクに送るための血液も採取します。
秋葉原の献血ルームでは、骨髄バンクのドナー登録者は1日に1人いるかいないか、とのこと。
水泳の池江璃花子選手の時のように、著名な人が白血病を公表した時などは、一時的にドナー登録者が増える傾向があったそうです。
採血した血液の検体は専用バッグに入れられ、血液センターに送られます。
献血をしない場合は、ドナー登録はこれで終了で、「あれ?もう終わり?」という感覚でした。
混んでいない日にスムーズに進めば、15分ほどで終わるとのことでした。
記者はその後、久しぶりの献血へ。事前検査で血色素量が男性13.0g/dL以上、女性12.5g/dL以上あれば、もっとも求められる全血400ミリリットルの献血が可能です。
取材が決まった日から鉄分多めの食事を意識していたものの、以前、血色素量が低くて献血ができなかった経験があり、「できなかったらどうしよう」と心配していた記者。
結果は、12.2g/dLでした。あれっ、下回ってしまった。
しかし12.0g/dL以上あれば、赤血球などを体に戻す「成分献血」は可能です。
平柳さんは「献血というと、事故に遭った時の大量出血用などの輸血で使われるイメージがあるかもしれませんが、実は最も多く使われているのは『がん』の治療です。また、そのまま輸血に使われるだけでなく、感染症・やけどなどの治療の薬の原料にも使われています」と話します。
献血された血液量のうち、2022年度は44.5%が輸血用として使われ、55.5%が「血漿分画(けっしょうぶんかく)製剤」用として使われています。
ドナーから骨髄を移植される患者さんも、治療で輸血や献血から造られた製剤を使うケースは多いそうです。
初めての成分献血に緊張していましたが、針の太さは全血献血とあまり変わらず、痛みもありませんでした。
スタッフの皆さんも「寒くないですか?」「定期的に脚を動かしてくださいね」などと声をかけてくださり、あたたかい湯たんぽをおなかに抱えて、相撲中継を見ているうちに40分ほどで終わりました。
赤血球などを体に戻せるので全血献血よりも負担が少なく、2週間後にはまた献血が可能だといいます。
終了後、水分をとって休憩している間に、ドナー登録カードが完成して献血カードとともに手渡されました。
実際に骨髄移植に進むには、患者とドナーの白血球の型が適合する必要があります。
その確率は数百から数万人にひとりともいわれ、ドナー登録しても1度も適合通知が来ないまま…という人も多いようです。
しかし、同じ型のドナーが見つかっても、「仕事が休めない」といった理由で骨髄提供につながらないケースも多く、希望する患者の二人に一人しか骨髄移植がかなっていない厳しい現状があります。
骨髄提供ドナーを経験した漫画家の水谷さるころさんは、「ドナーは〝選ばれし勇者〟」と表現していました。
「採血が平気とか健康状態がいいとか、もちろんドナー登録には向き不向きがある」としつつも、「『勇者に選ばれた!』という気持ちで前向きにやってもいいと思うんです」と話していたのが、記者の心に強く残っています。
できれば誰も病気になってほしくない…と願うものの、そんなわけにもいきません。
必要とする誰かと型が一致したとき、もし自分が役に立てるなら役立てたらと思います。
その時まで、定期的に献血にもいきたいな、と改めて感じた体験でした。
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