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クイズ王・伊沢拓司さんが考える「学び」 制作過程を見せるサービス

「『学び』の概念をどんどん拡張していきたい」

クイズ王・伊沢拓司さんに、新たな挑戦について聞きました
クイズ王・伊沢拓司さんに、新たな挑戦について聞きました

目次

YouTubeやテレビ、書籍、イベントとマルチに活躍するクイズ王・伊沢拓司さん(29)。編集長として立ち上げたWebメディア「QuizKnock」は7周年を迎え、12月、新たに会員制の有料サービスを始めました。伊沢さんは「『学び』の概念を広げていきたい」と話します。(インタビュー全3回の2回目)

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」
【インタビュー①】クイズ王・伊沢拓司さんのメディア運営 根底に「知へのリスペクト」
【インタビュー③】「東大王」と歩んだ伊沢拓司さん テレビとYouTubeの違いは?

「学び」の概念を広げる新サービス

ーーQuizKnockはテキストもあり、動画もあり、新たに会員制の有料サービスを立ち上げましたが、どういった狙いがあるのでしょうか?
<フォロワークラブ「QuizKnock schole(クイズノック スコレー)」>
QuizKnockメンバーによる生配信や動画、ラジオに加え、動画の校閲スタッフが制作の裏話をつづったコラムや、不採用となったYouTube動画のサムネイル紹介など、コンテンツが完成するまでの試行錯誤の過程を公開する会員限定の有料サービス。月額330円~。
伊沢拓司さん(以下、伊沢):一つはファンとの距離感を大事にしたいということです。QuizKnockはどんどん大きくなっているので、昔からのファンの中には疎外感を感じる人もいるのかもしれません。そうだとしたら近づきたいな、と思います。

もう一つ、「学び」の概念をどんどん拡張していきたいという狙いがあります。学校で習う学びだけではなくて、ありとあらゆる学びを届けられるのが僕たちの強みです。

学びを、何に役立つかで判断することはすごく無意味。知識は使う側にならないと価値が分からないこともありますし、使うための知識が全てではありません。知識の価値は誰かが定義できるものではない。学びの領域を絞る必要もなくて、学びに関しての制限はどんどん取っ払っていきたいと思っています。

会員制サービスでは、演者に焦点を当てたコンテンツもありながら僕たちが今まで築き上げてきたコンテンツ制作のノウハウも提供します。僕たちがやってきた試行錯誤をお裾分けして、見てくれた人が同じ事を繰り返さないように「車輪の再発明(すでにある技術や解決法を再び一からつくること)」を防ぎたいと思いました。これも立派な学びです。     

たとえば、コンテンツを作る中で試行錯誤をしたりミスをしたりしたケースは、共有することでいい学びになりますよね。しかも、提供できるメディアは少ない。我々が作り出せる価値だと思うんです。

だからこそ「ファンクラブ」ではなくて「フォロワークラブ」なんです。
 
「QuizKnock」のメンバー
「QuizKnock」のメンバー 出典: 株式会社baton提供

「ファン」ではなく「フォロワー」が対象

ーーなぜ「フォロワー」と?

伊沢:QuizKnockを見ている人の中には、クイズは好きだけどQuizKnockが好きかと言われるとそうではない人もいます。QuizKnockの技術的な部分には興味があるけど、QuizKnockメンバーのキャラクターが好きというわけではない人たちにも学びを届けたくて、ふくら(QuizKnockのメンバー・ふくらP)が「フォロワークラブ」とつけました。

そもそも、QuizKnockって演者は目立ちますが、「主役は誰だろう」ということなんです。

動画の場合は企画を作っているディレクターが主。演者は目立ちますが、ディレクターの裁量の範囲内で自由にやる、というのが仕事です。演者に求められることはキャラクターであって、全力の個性ではない。キャラクターは個性から派生するものですけど、個性を100%出すことは求められていません。必要な役割を、自分のやり方で果たす、それが仕事です。

ものづくりにかける時間で言ったら、演者の撮影時間は1時間。でも、問題制作や動画編集、校閲・校正の時間を含めると、1本の動画をつくるのに約55時間がかかっています。演者の撮影時間は、全体のわずか55分の1。有料サービスの「schole」でQuizKnockのノウハウをお見せするとなったとき、その残りの「54」を見せた方がいいんじゃないか、制作過程をお見せしない手はないよねというのが僕たちの考えです。

「schole」は組織力を見せる最高のツールでもあります。失敗や試行錯誤を、お見せできる範囲でお見せしたいと思います。
 
出典: 菊池康全撮影

炎上対策「事実に優先されるものはない」

ーー「schole」のコンテンツのなかには、炎上対策としてのノウハウもあるんですか?

伊沢:校閲者にスポットライトを当てたコンテンツもあります。炎上はめっちゃ怖いので、校閲はまさにそれを防ぐ手段の一つです。動画の場合、細かな部分にこだわって準備し、校閲体制を敷いて配信までに半年かけています。

ライターに向けては、僕も例年炎上対策講座をします。炎上対策の根底にあるのは、「事実に優先されるものはない」ということ。事実が間違っているコンテンツは出しません。ひたすら知に対して誠実であることが最優先で、それが結果的に炎上対策になっています。

演者に関しては月1回反省会をしていて、そのときに校閲者から「この表現はやめてください」という指摘が回ってきます。よくない発言があった場合は差し戻しもありますし、これまでに大きな炎上がないのは、そうした多くの作業者の力と感覚によるところが大きいです。

炎上の原因は、無意識や即興性によるものが多いです。誰もわざわざその表現をしようと思っているわけではない。でも、狙っていないところでちょっとした配慮のなさ、言葉が出てこなくて別の表現を使ったことによるズレ、意識のゆるさ、そういったものが出てしまう。正直、誰しもがあることだと思うんです。

無意識だからこそ気をつけないといけない。炎上するテーマを扱っていなくても炎上しづらいとは全く思わないし、テーマとして扱っていないからこそ怖さはあると思って、みな丁寧に仕事をしています。
 
【インタビュー①】クイズ王・伊沢拓司さんのメディア運営 根底に「知へのリスペクト」
【インタビュー②】クイズ王・伊沢拓司さんが考える「学び」 制作過程を見せるサービス

【インタビュー③】「東大王」と歩んだ伊沢拓司さん テレビとYouTubeの違いは?
<伊沢拓司さん>
1994年生まれ。東京大学経済学部卒業。『高校生クイズ』で史上初の個人2連覇を達成。2016年に東大発の知識集団・QuizKnockを立ち上げ、現在YouTubeチャンネルは登録者数210万人を突破。2019年に株式会社QuizKnockを設立し、CEOに就任。『東大王』『冒険少年』などのテレビ番組にレギュラー出演するほか、全国の学校を無償で訪問するプロジェクト「QK GO」を行うなど、幅広く活動中。
 

※インタビューの3回目は、12月28日(木)に公開予定です。

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