連載
#4 火事に遭ったら?
「最後まで使わないで」 ボタニカルキャンドルが火災の原因に?
ふと気づいたら、火柱を上げて激しく燃えていた――。ロウの中にドライフラワーなどの植物を閉じ込めて作る「ボタニカルキャンドル」を使っていたところ、火事になりかねない危険な燃え方をしたという投稿がSNSで話題になっています。実際に、ボタニカルキャンドルが原因と見られる火災も複数発生しており、自治体も注意を呼びかけています。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
火をつけてしばらく経ってからキャンドルを見たら、大きな火柱になっていた――。
ボタニカルキャンドルを使っていた体験を漫画にしたワンコロもちべヱさん(@WANKOnin)の投稿がX(旧ツイッター)で話題になっています。
「こんな危険があると知ることができてよかった」「結構強烈ですね」
SNS上では、おしゃれなキャンドルのイメージと激しい燃え方のギャップに驚く声が上がっています。
なぜ、このようなことになってしまったのでしょうか。
ボタニカルキャンドルの使い方について注意喚起をしている自治体の一つ、愛知県岡崎市の消防本部に話を聞きました。
担当者は「ボタニカルキャンドルは点火して時間が経つと、火が急速に広がる可能性があります」と話します。
消防本部では、職員が手作りしたキャンドルを使った実証実験の様子を広報チラシにして注意を呼びかけています。
火をつけてから1時間ほど経ったボタニカルキャンドルは、ロウが溶け、キャンドルの中に閉じ込められていた植物が露わになっています。
さらに時間が経つと、火がキャンドル全体に燃え移ります。
その14分後には、キャンドルは溶けて液体になり、受け皿からこぼれて炎がテーブルにまで広がっていきました。
担当者は「ボタニカルキャンドルを長時間、あるいは繰り返し使う内にロウが目減りし、内部に閉じ込められていた植物が露出することがあります。これがロウソクの芯の役割を果たすことで火が燃え広がってしまうことがあるのです」と話します。
一度炎が大きくなってしまうと、その熱でキャンドル全体が溶け出して非常に危険な状態になるそうです。
市販されているボタニカルキャンドルには、長時間火をつけたままにしない、近くに燃えるものをおかない、溶けたロウがこぼれないように深さのある容器に入れて使うなどの注意事項が書かれていますが、これらを守らなかったために起きたと見られる火災が実際に発生しているそうです。
もしも、ボタニカルキャンドルが危険な燃え方をしてしまった場合、どうすれば良いのでしょうか。
ホームページでキャンドルに関する注意喚起をしている、新潟市消防本部に聞きました。
「水をかけて消そうとするのはやめてください。ロウが溶けた状態のキャンドルは、熱した油で満たされた鍋と同じような状態です。水蒸気爆発を起こし、一気に炎が広がる危険性があります」
初期消火の方法として有効なのは、燃焼に必要な酸素を奪うことだそう。
「火がまだ小さい状態であれば、金属製のボウルなどを上から被せて空気を遮断する方法が考えられます」
これが難しい場合には消火器を使う必要がありますが、種類にも注意が必要だと言います。
「一般的な家庭においてある粉末式消火器でも消せないわけではないのですが、噴射の勢いで火が付いた状態のロウが飛び散ってしまうことがあるのです」
泡で火を包み込んで消す、スプレー型の消火器がより適しているそうです。
「ホームセンターなどでも購入できるので、普段キャンドルをよく使う家庭では、あらかじめ備えておくと良いでしょう」
キャンドルを繰り返し使っているうちに中の植物が露出しそうになったら使用を中止し、そもそも危険な燃え方をしないようにするのも大事だと言います。
「もったいなくて最後まで使いたくなる気持ちも分かりますが、キャンドルが溶けてきた、小さくなってきたなと感じたら、雑貨として飾って楽しんでください。何よりも安全が第一です」
冬はクリスマスなどの行事でおしゃれなキャンドルの人気が高まると同時に、空気が乾燥して火災の被害が大きくなりやすい季節でもあります。
新潟市消防本部では、ボタニカルキャンドルの作り方を教える教室や体験イベントなどを回って、安全に楽しんでもらうための注意喚起をしているそうです。
「大原則として、料理をする時などと同様に、火を使う際には絶対に目を離さないでください。楽しい思い出が悲劇に変わってしまわないように、消防からのお願いです」
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