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アニメの聖地巡礼、町おこしを続けるためには? 1作品では難しい?

専門家は、2011年以降にブームが集中したと話します

横瀬駅前の観光案内所に設置されていたアニメコーナー=2015年
横瀬駅前の観光案内所に設置されていたアニメコーナー=2015年

目次

アニメや漫画の舞台となった地域を巡る「聖地巡礼」。作品の舞台となったことがきっかけで観光客が増え、自治体の名が広く知れ渡ることもあります。一方で、アニメの放送から時が経つとブームが落ち着くケースも。盛り上がりから10年以上経つ地域も多くなってきたなかで、今後も「聖地」であるためにはどうしたらいいのでしょうか? 元アニメ雑誌編集者で、コンテンツツーリズムに詳しい聖地巡礼プロデューサーの柿崎俊道さんに聞きました。

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柿崎俊道さん
1976年生まれ。月刊誌「アニメージュ」(徳間書店)などのアニメ誌、アニメ関連書籍の編集・執筆を経て、ご当地イベントの企画などに携わる「聖地巡礼プロデューサー」となる。埼玉県のアニメイベント「アニ玉祭(アニメ・マンガまつりin埼玉)」第2回、第3回では総合プロデューサーを務めた。著書に『聖地巡礼 アニメ・マンガ12ヶ所めぐり』(2005年/キルタイムコミュニケーション)。Xは@Syundow

2011年以降に集中した「聖地巡礼」

ーーアニメの舞台となった地域を巡る「聖地巡礼」は、2000年代の盛り上がりが印象に残っています。2006年放送「涼宮ハルヒの憂鬱」の舞台となった兵庫県西宮市、2007年放送「らき☆すた」の舞台となった埼玉県鷲宮町(現・久喜市鷲宮)です。

2006、2007年の盛り上がりは、局所的だったと思います。「聖地巡礼」は、2011年以降に集中しました。

例えば、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(以下あの花)」(2011年放送)の舞台・埼玉県秩父市、「輪廻のラグランジェ」(2012年放送)の舞台・千葉県鴨川市、「ガールズ&パンツァー(以下ガルパン)」(2012年放送)で舞台となった茨城県大洗町です。

ファンの間で盛り上がっていただけでなく、地域がアニメで町おこしをすることに本気になった時期だと思います。

背景には、東日本大震災の影響もあります。「ガルパン」の舞台である大洗町の場合、もともと海水浴やアンコウ鍋などが有名な観光地でしたが、震災の影響で観光が厳しくなっていました。「あの花」の舞台である秩父市も、アニメ効果で観光客が増えています。
 
「あの花」は、東日本大震災直後の2011年4月に放送され話題を集めた作品です。その当時を、秩父市観光課で10年以上にわたりアニメツーリズムの施策を手がけてきた中島学さんはこう振り返ります。

「震災まで秩父市の観光入込客数は年間約380万~400万人で推移していましたが、11年には約354万人まで落ちてしまいます。ところが、『あの花』効果もあり、12年には震災前年を超える約396万人が秩父を訪れるようになりました」
アニメ『あの花』で活気の秩父、『聖地』になるまでの泥くさい活動
「あの花」のキャラが描かれた7種類の絵馬=2017年、秩父市桜木町
「あの花」のキャラが描かれた7種類の絵馬=2017年、秩父市桜木町 出典: 朝日新聞

アニメの聖地がきっかけで

ーーアニメや「聖地巡礼」の盛り上がりから10年以上経つ地域も増えてきました。アニメで町おこしをしてきた地域も、ひとつの作品だけでは効果が維持できないのではないでしょうか?

秩父市では、「あの花」以降も秩父周辺を舞台としたアニメが公開されました。脚本は「あの花」と同じく、地元出身の岡田麿里(まり)さんです。

その後、秩父市が舞台になっていなくても、岡田さんの監督・脚本作品を上映するなど盛り上げていました。

ーー地域がファンに楽しんでもらうための工夫をしているのですね。ほか、柿崎さんが注目するアニメの「聖地」はありますか?

「あの夏で待ってる」(2012年放送)の長野県小諸市です。作品が放送された当時、地元で温泉旅館を経営されている花岡隆太さんが中心となって、アニメと地域活性化を考えていました。花岡さんはコンテンツ側との接し方がとてもうまいんです。

1作品だけで来てもらい続けるのは難しいだろうと考え、サイクリングの漫画「ろんぐらいだぁす!」など、小諸市を舞台にしたほかの作品ともコラボを続けてきました。

その結果、「自ら仕掛けてもいいのではないか」と気づいたそうで、コロナ禍でも、一般社団法人こもろ観光局が有名VTuberさんに小諸市のオリジナルソングとPVを作ってほしいと依頼し、その動画が話題になって多くのファンが小諸市に集まったと聞いています。
 
ーーアニメの「聖地」がきっかけでも、その後はアニメに限らずコンテンツを集めているのですね。

人々が喜んでくれるならゲームでもいいし、アニメでもいい。

小諸市はサイクリングコースとしても人気の場所で、自転車レース「グランフォンド KOMORO」の企画もしていました。

それもレースだけではなくて、前日イベントではサイクルウェアや自転車用品などのメーカーの出店、自転車を題材にしたマンガを描く作家のトークイベントなど、様々な展開をしています。

地域を盛り上げるためだったら、アニメにこだわる必要はないというのは、他の地域にはない視点です。
 
「グランフォンド KOMORO」の前日に行われたイベント=柿崎俊道さん提供
「グランフォンド KOMORO」の前日に行われたイベント=柿崎俊道さん提供

「アニメファン」はもういない

ーー今後も地域が「聖地」となり、町おこしをしていくためにはどこに注目していけばいいでしょうか?

やはりインバウンド消費ではないでしょうか。

今も外国人旅行者に向けて「ざっくりアニメ」という切り口でやっている地域はあります。

でも実は、「アニメファン」という存在はいないんですよ。海外の人でも「マジンガーZ」が好き、「キャプテン翼」が好き、「NARUTOーナルトー」が好きという風に、解像度が上がってきています。

年間10~20作品しかテレビアニメが放送していなかった頃は、「アニメは何でも好き」という「アニメファン」はいました。
 
画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images
ただ、今はテレビアニメだけで制作本数は年間300本を超えています。劇場版や動画配信サービス限定の作品も含めるともっと多くなります。

そうなると全作品は見られないので、「アニメファン」というのは成立しないんです。好きなジャンルもそれぞれですし、「名探偵コナン」や「クレヨンしんちゃん」など、家族で観に行く作品もあります。

「アニメファン」かどうかでいうなら、もう国民みんなが「アニメファン」なのかもしれません。

アニメで町おこしをして国内外にアピールするならば、「アニメファン」というぼやけた存在ではなくて、個別の作品の「ファン」としてターゲットを絞ることが大事だと思います。
 

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