ネットの話題
規格外アスパラを「チンパラガス」と命名 水族館の人気者にそっくり
育つ途中でくにゃりと曲がってしまったアスパラガスに、「チンパラガス」と名前をつけて販売している新潟市の農園がSNSで話題になっています。形や大きさがふぞろいな野菜を安く売る例はたくさんありますが、この農園では通常の野菜と同じ値段で販売しているそうです。売れ行きやお客さんからの反応はどうなのか、聞いてみました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
「『B品』表示で売るのが忍びなくて『チンパラガス』と名前をつけた」
新潟市にある農園、SOGA FARMのこんなSNS投稿に、「アイディアの勝利」「ネーミングセンスが最高」「フードロス問題の対策にもなりそう」といった反応が寄せられています。
写真を見ると、真っ直ぐ育つはずのアスパラガスの先端がくにゃりと曲がり、まるでお辞儀をしているよう。
SOGA FARM代表の曽我新一さんは「昔から魚のチンアナゴに似ているなと思っていたんです」と語ります。
チンアナゴは、砂から顔やからだの一部を出して、ゆらゆら揺れる姿が人気の海水魚。
たしかに曲がったアスパラガスと形状がそっくりです。
ちなみに、チンアナゴの「チン」は日本犬の「狆」に似ていることが由来だそうですが、英名は「spotted garden eel」。
「斑点のある庭のウナギ」という意味で、地面から植物が生えてくる様子に似ていることが由来だそうです。
偶然とはいえ、不思議なつながりを感じます。
曽我さんによると、曲がっていても味や食感は普通のアスパラガスと変わらず、直売所のお客さんからも好評で、売れ行きは上々だそうです。
曽我さんによると、アスパラガスは風に当たるといったちょっとした環境ストレスでも曲がってしまうことがあるそうです。
「もっと時間とコストをかければ真っ直ぐなアスパラガスを作ることもできるのですが、うちの本業はトマト。そこまで手をかけてやれないという事情があるのです」
かつては、曲がったアスパラガスを通常のものより安く売っていたそうですが、そうすると正規品の方が売れなくなるというジレンマもありました。
コロナ禍や燃料・資材高騰といった打撃からの立て直しを迫られていた曽我さん。
「味は同じなのに安売りしてしまうのは矛盾しているし、もったいない。思いついた方法の一つが、ネーミングでした」
SOGA FARMではチンパラガス以外にも、こうした取り組みを続けてきました。
一部が黒ずんだトマトは、実を甘くするために水分を少なくする過程で生まれてしまいます。
見た目が悪いだけで甘みは抜群のトマトに「闇落ちとまと」と名付けたところ、テレビにも取り上げられ一躍人気者になりました。
とはいえ、規格品を軽視しているわけではないという曽我さん。「どちらも大事にしたいと思っています」と話します。
「チンパラある?」と、毎回チンパラガスを指名して買っていく常連さん。「闇落ちとまと」を「闇市のトマト」と勘違いして買いにきたおじいさん――。
直売所でのやりとりや、SNS発信などお客さんとのコミュニケーションを大事にしている曽我さんは、そんなほっこりエピソードも教えてくれました。
「味はもちろんですが、見た目や名前でも、ちょっと笑ってもらえたらいいなと思います」
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