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#251 #withyou ~きみとともに~
夏休み最終日、8月31日じゃない? 〝9月1日〟問題への注意点は
夏休み最終日の8月31日にまとめて宿題をやろう――。そんな子どもの頃の思い出がある方も多いのではないでしょうか。しかし、実は地域ごとに夏休みの開始と最終日、日数は異なり、ワン・パブリッシング社が運営する「学研キッズネット」編集部では、47都道府県に調査して作った一覧をサイトで公開しています。企画したきっかけを聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・高室杏子)
「学研キッズネット」が掲載している夏休みの期間の一覧では、47都道府県のそれぞれの長さを色別で示しています。
東海と山陽、四国はやや長めの期間とする県が多く、関東甲信越と北陸は「35~39日間」が多くなっています。北海道・東北は短めの夏休みとする県が多い傾向です。九州も宮崎の34日間が最短で、42日間の長崎と鹿児島以外は35~39日間です。
最も期間が短いのは、北海道の26日間。7月26日と最も遅く始まり、8月20日までと最も早く終わります。
最も期間が長い42日間の夏休み期間を設けているのは、千葉や愛知、四国や長崎など12県がありました。
全都道府県のうち、8月31日が「夏休み最終日」にあたるのはこの12県に41日間の兵庫を加えた13県でした。31日が最終日というイメージが強いものの、約6割の27都道府県で最終週の月曜日である28日までに学校が再開していることになります。
1996年にオープンしたサイト「学研キッズネット」。編集長の金野拓哉さんは「6月になると、〝夏休み いつから〟と検索する人が増えるんです」と企画した理由を語ります。
子育てをする父親・母親の多い編集部での普段の会話でも「予定を立てやすくなるから夏休みの期間がわかる一覧があると使いやすい」という声が上がり、今年初めて記事を企画しました。
学研グループは、夏休みなど長期休みの子どもたちの学びも応援してきました。子どもたちや保護者が悩みやすい「自由研究」を支援するプロジェクトを2000年代から実施してきたなかで、夏休みの地域差を把握していたそうです。
47都道府県の教育委員会に問い合わせたり、各学校のHPを確認したりするなどして、夏休みの期間を取材。「同じ都道府県内でも学校によって日程が異なる場合がある」として、「詳しくは各小中学校までお問い合わせください」と注意書きも添えました。
金野さんは「貴重な夏休み。旅行や学校の課題など予定を立てるのに役立ててほしい」と話しています。
夏休みの終わりに地域差があることで、あるメッセージの出し方にも工夫が必要なことがわかります。
いわゆる「9月1日問題」です。
学校に行きたくないと感じていたり、環境の変化が不安だったりする子どもたちにとっては、夏休み終盤から夏休み明けは、精神的に不安定になりやすい時期です。
データは少し古くなりますが、2016年に明らかになったのは、過去40年間に自死した18歳以下の子どもの人数が、9月1日に多かったことから「9月1日問題」と呼ばれてきました。
悩む子どもたちのための相談先や情報を届けるといった、大人による発信やケアが重要です。
そのタイミングが必ずしも一律ではないことが、学研キッズネットの一覧からもわかります。
以前から夏休みの終わりはすべての地域で31日ではありませんでした。不登校新聞者代表の石井志昂さんは、2016年の内閣府が公表した調査で9月1日に子どもの自殺が多いことが判明した際に「東北ではもっと早い」「最近は休み明けが前倒しされている」という指摘があったといいます。
石井さんは、「8月20日頃から再開する学校もあることを意識して、長期休みが明けるころに、子どもたちに精神的な重い負担はないか気にかける必要がある」と伝えます。
さらに、「不登校だったり、学校に行くことがつらいと悩んだりする子どもたちは、時期を問わずにいます。9月1日に限らず『気にかけること』は子どもを救います」
もし子どもが「死にたい」と訴えたり、自死のリスクがある子どもに話を聞いたりするときには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。
石井さんは、「TALKの原則」に沿った聞く姿勢が重要だと話します。
石井さんは「軽く受け止める、しかりつけるといった行為はNGです。言葉にできなかったり、心配させないようにふるまったりする子どももいます。大人が心配していることを伝えて、子どもの気持ちを尋ね、受け止めて、心身の安全につなげてください」と話しています。
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