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家族と一緒に夕食を囲むため?「しまむら」の閉店時間が早い理由は…
「ファッションセンターしまむら」の閉店時間が早いのは、従業員が家族と夕食を囲むため――? 「しまむら」の閉店時間が多くの店舗で夜7時であることから、そんな投稿がSNSで話題になりました。広報担当者に取材すると、「7時にお店を閉める」背景には、さまざまな事情がありました。
全国に衣料品をあつかう「ファッションセンターしまむら」を展開している「しまむら」の広報担当者によると、複合商業施設内の店舗などを除いたほとんどの店舗で閉店時間は午後7時になっているそうです。
ツイッターには「しまむら」の閉店時間の理由について、「わりと早めなんだけど、その理由が『急いで帰れば家族と夕飯を食べられるギリギリの時間だから』っていう優しい理由なのめっちゃ好き」と好意的に投稿され、話題を集めました。
実際に、こういった理由で閉店時間が決まったのでしょうか。広報担当者からは「長年、午後7時閉店で営業しているため、さかのぼって少し調べてみます」と回答が。
社内で調査してもらったところ、時期や理由がはっきりと分かる資料などはなかったものの、「入社28年のベテラン社員も『私が入社したときには既に午後7時だった』と話していました。少なくとも、30年ほど前からではないでしょうか」と話してくれました。
考えられる理由の一つとしては、夜遅くまで営業しても、利用者にとっても店舗にとってもメリットが無かったという点が挙げられると言います。
「当時の客層の中心は主婦層でした。午後7時以降は営業しても、お客様のニーズがない時間帯です」
一方、夜遅くまで営業しないことによる利点もあります。担当者は「おそらく、人材確保が理由の一つではないか」と言います。
しまむらで働く従業員のうち、8割以上がパート社員で、その中でも家庭を持つ女性が多数を占めているそうです。そのため、同社では「主婦も働きやすい」職場環境を大事にしており、「午後7時閉店はその延長と言えます」。
しまむらには「地域の優秀な主婦層から従業員を採用したい」という目標があるそうです。
「遅い時間までの勤務だと、家庭との両立が難しくなってしまいます。融通が利くシフト制、育児や家事と両立ができることが、弊社を選んで頂く理由の一つになっているのは確かだと思います」
そんなしまむらですが、1980年代には他のアパレル業や接客業などとの人材獲得競争が激化し、働き手の確保に苦戦したこともあったそうです。
給与などの待遇改善に加え、経験を重ねたパート社員を店長なども含む正社員に登用する仕組みを作りました。今ではしまむら店長のうち約7割がパート社員出身だそうです。
担当者は「『子どもが小さいうちはパート勤務で』『手がかからなくなってきたから店長をやってみよう』。そんなライフスタイルとマッチしたという面もあるのかもしれません」と話します。
今、多くの業界で人手不足が問題になっていますが、しまむらでは「今のところ採用は順調」だとのことです。
何時までお店を開けるか。利便性と従業員の働き方のバランスをどう取るかという問題は、地域や社会情勢との兼ね合いによっても変わってくると言います。
例えば、本州よりも夜遅くに買い物をする習慣がある沖縄県の店舗では、以前は午前11時から午後9時までの営業時間でした。
これを、コロナ禍では午前10時から午後8時までにして、閉店時間を1時間早めました。
コロナが落ち着いた後も、売り上げ減などのマイナスの影響は少なかったため、営業時間を午前10時から午後8時までに変更しました。従業員からは「家族と一緒に夕食を取れる日が増えた」といった、好意的な受け止めがほとんどだといいます。
担当者は「しまむらグループでは、お客様や従業員だけでなく、社会にとっても『いい会社』を作ることを目標に掲げている」と話します。
この閉店時間に注目が集まったことについては、「長年続けてきた、弊社の働き方、営業スタイルが社会に好意的に受け止められたようで、嬉しく思います」と話しています。
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