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#136 #父親のモヤモヤ

「家族のために働いているつもりが」男性育休のきっかけになったこと

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画像はイメージです 出典: Getty Images

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

 

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働きながら子育てをする親にとって、仕事と家庭のバランスを保つことは課題です。3児の父で男性育児のコミュニティを運営するシカゴリラさん(38)は、2度育休を取り自分なりに両立してきました。もともと「父親は家族のために働くもの」と思っていましたが「自分の考えは間違っていた」と話します。(聞き手:河原夏季・高橋健次郎)

<シカゴリラさん:1984年生まれ。7歳、3歳、1歳の3児の父。金融系の会社員で、現在は育休中。2020年6月から男性育児に関するコミュニティ「パパ育コミュ」を運営している>

積極的に育児をする父親と出会いたい

河原:シカゴリラさんは男性育児に関するコミュニティ「パパ育コミュ」を運営しています。なぜコミュニティを始めようと?

シカゴリラさん:第2子が生まれて1年間の育休を取った2020年ごろは、同じように育休中のパパが周りにおらず(編集部注:2020年の男性育休取得率は12.65%)、そもそも新型コロナウイルスの影響で家から出る機会が少なくなっていました。

気軽に同じ境遇の方と集まれるオンラインの「場」があったらいいなと思って、ネットで「パパ育コミュ」を立ち上げ、育児をしているパパさんへ参加を呼びかけました。

今でも育休を取る父親は多くありませんが、当時はより少なく、平日の日中に児童館や公園へ行ってもほとんど母親しかいません。積極的に育児に携わっているパパさんと気楽に会える場を作りたいと思いました。

コミュニティで使っているLINEのオープンチャットには、現在500人ほどが参加しています。雑談メインで、朝に子育ての悩みを投稿すると、夜には10件くらい返信があるんです。

そのほかSlackでも活動していて、180人くらい入っています。Slackのメンバーの7、8割は長期の育休を経験していて、1年取ってる方もいます。
 
父親たちが参加する「パパ育コミュ」
父親たちが参加する「パパ育コミュ」 出典:パパ育コミュのサイトより

オンラインで悩みを共有

高橋:すごいですね。日本全国だと、2021年の女性の育休取得率は85.1%、男性の育休取得率は13.97%ですが、このサークルでは積極的なパパさんがたくさんいらっしゃる。どんなお悩みをチャットに投げているのでしょうか?

シカゴリラさん:いろんな内容があります。例えば、家事では「洗濯機は何を使っていますか」といったこと。縦型がいいか、ドラム型がいいかとか、中にはガス式の乾燥機を使ってる人がいました。

ほかには、夫婦の関係性ですね。産後、妻が少し精神的に不安定になってどうしようといった相談があり、メンバーが自分の経験を伝えています。

高橋:夫婦のことは結構ディープな相談ですね。顔も本名も知らない、ネット上の程よい距離感だから言えるといった気持ちもあるのでしょうか?

シカゴリラさん:そうだと思います。夫婦関係が悪くなってきていることを、会社の同僚には相談しづらいと思いますが、コミュニティは匿名でやっていますし、パッと来て気軽に相談して出ていけます。オンライン上のコミュニティのメリットだと思いますね。

我々は専門家ではなく、ただのパパの集まりです。正直、解決策を出すところには至らない。参加者の方も解決策までは求めていないんじゃないかという気がします。

同じような境遇の人がいて、同じような悩みを抱えていると分かることがコミュニティの価値だと思っています。
 
 

男性育休、復職後が課題

河原:意見交換をするなかで特にどんなお悩みが多いか、傾向はあるのでしょうか?

シカゴリラさん:子どもが小さい方が多く、育休を取った方も多いので、やはり復職してから仕事と育児の両立が難しいと感じている方がほとんどですね。

復職後にいかにして家庭の時間を作るか、夫婦の分担をどうするか。おそらく夫婦ごとに違っていて、正解はありません。ただ、どういう風にコミュニケーションをとったらお互いが納得できるのかという悩みは多いと思います。

高橋:育休後の分担について話し合うことがあるのはとてもいいですね。育休を取った方でも、復職したら家事育児が分担できていなかった元の生活に戻ってしまうケースがあります。子育て期間は長いので、育休後にどれだけマインドを変えられるかがすごく大事です。コミュニティで育休後について相談できる仲間がいるのはとても大きいですね。

シカゴリラさん:本当におっしゃる通りです。育休は育児の始まりであって、育休が明けても育児はずっと続きます。

子どもが小さいときはずっと手がかかります。育児をしたいというパパさんは多いのですが、一方で、育休中に十分休んだのだから「復帰したら一生懸命働いてほしい」と思う人も会社には少なからずいらっしゃる。そのギャップに苦しむパパさんがたくさんいます。
 
子どもたちと水遊びをするシカゴリラさん=本人提供
子どもたちと水遊びをするシカゴリラさん=本人提供

育休中から人事・上司と相談

河原:シカゴリラさんは第2子の育休後、職場復帰したときはどうでしたか?

シカゴリラさん:育休中に何も準備せずに復職してしまうと、元の働き方に戻ってしまうと思ったので、事前に人事と相談しました。どういう制度が使えるか聞き、上司にも自分がどういう働き方をしたいか相談して、柔軟な働き方をさせていただく形になりました。

河原:コミュニティでの交流を通して、「この働き方はいいな」など参考になったケースはありますか?

シカゴリラさん:そうですね……さまざまな働き方やキャリアプランがあるので、「これが理想的な働き方」というのは正直ないかもしれません。

ある方は復職してから時短勤務にして、「もう出世はしない」と割り切っていました。完全にテレワークにして、家族の時間を作っているIT系の会社員の方もいますし、中には主夫になった方もいます。

一方で、出世してキャリアを築いていく方もいます。そういう方は、子どもが寝静まった深夜にちょっと残業して仕事も一生懸命こなし、資格を取って管理職になられています。いろんなキャリアプランに合わせて、みなさんそれぞれが頑張ってるなぁという印象です。

高橋:悩みつつもいろんなモデルがありますね。時短されている方もいらっしゃるし、キャリアをさらに磨きたいという方もいらっしゃる。いろんな働き方、生き方があり、自分に合ったやり方はこれかもしれないと選択肢が見えてくることはいいですね。
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画像はイメージです 出典: Getty images

「家庭の笑顔」が増えた

河原:今でこそ率先して仕事と子育ての両立をしているシカゴリラさんですが、第1子が生まれたときは育休を取らず猛烈に働いていたそうですね。当時と今とで、育児への向き合い方にどんな変化があったのでしょうか?

シカゴリラさん:昭和世代の父親の姿を見て育ったので、第1子が生まれたときは、知らず知らずのうちに「父親は家族のために働くもの」「家族を養うもの」というアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)や性別役割分担意識がありました。

一生懸命、家族のために働いてるつもりだったんですけど、振り返ってみるとそれは決して家族のためになってなかったんです。妻が育児ですごくつらい思いをしていて、自分の考えが間違っていたと思いました。

家族のために働くということは、お金を稼ぐことだけではなく、家族と一緒に時間を過ごして家事をすることがすごく大事だと、育休をとって改めて感じるんです。

河原:育休中はどう過ごしているんですか?

シカゴリラさん:子どもが生まれたばかりのときは、妻が体を休めないといけないので、家事育児を全般的にやっていました。

産後1カ月くらいして妻が多少起き上がれるようになってからは、家事育児も少しずつ分担してやるようになりました。

産後3カ月を過ぎたころには結構分担するようになって、自分の自由な時間があるときは勉強をしたり、コミュニティの運営をしたりしています。私が家事育児をしている間は、妻に自由な時間を過ごしてもらって、少し余裕のある生活になりました。

河原:第1子のときと比べ、パートナーさんの表情も違いますか?

シカゴリラさん:そうですね、第2子、第3子は私が育休を取っていますし、妻も育児に慣れてきてるので、家庭の笑顔が増えているかなという気がします。
   ◇   ◇   ◇

パパ育コミュのHP:https://papaiku.jp/
シカゴリラさんのツイッター:@chicagoriller

※この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。

※シカゴリラさんのお話は、朝日新聞ポッドキャストでもお聞きいただけます。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。
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