連載
#159 ○○の世論
5類に移行「アフターコロナ」の空気感 マスクの着用機会は減った?
世論調査を分析
新型コロナウイルス感染症の法律上の扱いが、5月8日から季節性インフルエンザと同じ5類に変更されました。マスクの着用といった基本的な感染対策は個人の判断に委ねられ、医療費や検査費用は自己負担が発生します。客同士を仕切るアクリル板を取り払う飲食店が増えるといった変化がある一方、感染の第9波を心配する声もあります。こうした「アフターコロナ」の空気感を、全国世論調査の結果から探ってみました。(朝日新聞記者・四登敬)
「新型コロナ対策で国は、マスクをつけるかどうかは、個人の判断にまかせています。これを受けて、あなた自身は、マスクをつけることが減りましたか。減りませんでしたか」
朝日新聞社は全国世論調査(電話)で2回、マスクの着用についてこんな質問をしました。
1回目は、政府が3月13日から屋内外を問わず基本的に「個人の判断」に委ねることを決めたことを受けて、同月18、19両日の調査で。
2回目は、新型コロナ感染症の感染症法上の扱いが5類に移行した後の5月27、28両日の調査です。
結果は、3月調査が「減った」23%、「減らなかった」74%。5月調査は、「減った」43%、「減らなかった」55%でした。
「減った」は少数派ですが、マスクを着ける機会が減ったと答えた人の割合は増加しています。
3月の調査で、「減った」と答えた人を年代別に見ると、18~29歳で33%だった一方、60代以上では19%にとどまったのが目立ちます。
「減らなかった」と答えた人には、その理由も尋ねました。
最も多かったのは「感染対策のため」で、37%でした。調査したのは、スギなどの花粉が飛散する時期でしたが、「花粉症だから」を理由に挙げた人は16%でした。
「感染対策のため」と答えた人を年代別に見ると、18~29歳が19%、30代25%と低めですが、60代以上は47%と高めの値になりました。
年代が上がるほど、感染に対する警戒感が強いとみられます。このほかの理由は、「マスクが習慣になったから」11%、「まわりがつけているから」7%、「顔を隠せるから」2%でした。
5月の調査で「減った」と答えた人を年代別に見ると、18~29歳は60%、30代54%と高く、40代と50代は共に44%で全体結果とほぼ同じ割合になり、60代は38%、70歳以上は31%と低めになりました。
この傾向をみても、やはり年代が高い人の方が新型コロナの感染を警戒しているようです。
5月の調査では、「政府が、新型コロナウイルスの感染対策をインフルエンザ並みにゆるめたことは、よかったと思いますか。よくなかったと思いますか」という質問もしました。
「よかった」は74%、「よくなかった」は21%でした。政府の方針は、大半の人に受け入れられているようです。
ですが、ここでも高齢者層では感染対策を緩めたことへの受け止めが厳しい様子がうかがえます。
「よかった」は、18~29歳が83%だったのに対し、70歳以上は62%でした。逆に、「よくなかった」は18~29歳の14%に対し、70歳以上は29%になりました。
高齢者は感染した場合に重症化するリスクが高いことや、年金が主な収入になるなかで感染して医療機関にかかると自己負担が発生することが、こうした回答の背景にあるのではないでしょうか。
梅雨の時期に入り、今後は蒸し暑い日が当分の間、続くことでしょう。
感染対策が緩められ、マスクを外せば開放感も得られます。行楽地や飲食店にはにぎわいも戻ってきていますが、一方で、やはり感染するのは避けたい……。
この夏、あなたはマスクを外しますか?
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