連載
#158 ○○の世論
投票率アップ有効策は?罰金・ネット投票・ポイント付与…世論を分析
「義務投票制」を導入している国では…
衆院選、参院選といった国政選挙の投票率の低迷が近年、問題になっています。罰金、ポイント付与、インターネット投票――。朝日新聞社が2~4月に実施した全国世論調査(郵送)で、国政選挙の投票率を上げるための有効な対策がどれかを尋ねたところ、こんな結果となりました。(朝日新聞記者・寺本大蔵)
国政選挙の投票率はかつては70%台でした。ところが、2010年以降は50%台で、直近の21年衆院選は56%、22年参院選は52%と低調でした。
国民の代表を選ぶ国政選挙の投票率を上げるにはどうすればよいのでしょうか。
今回の調査では、選挙の制度面で有効と思う対策を「4つの選択肢」からいくつでも選んでよい方法をとりました。結果は次の通りでした。
みなさんはこの結果をどう思いますか?
「インターネット投票の導入」の高い数値はある程度、想像ができたかもしれません。
他方、「罰金を科す」が10%未満と、これほど少ないと予想できたでしょうか。実は国政選挙での罰金制度は海外のいくつかの国で導入され、効果を発揮しているのです。
オーストラリアでは約100年前から、正当な理由なく投票を棄権すると罰金を科される「義務投票制」を導入しています。投票率は導入前の約5割から導入後の約9割に跳ね上がったそうです。
最近の投票率でも約9割と高い水準を維持し続けています。罰金はおよそ2000円だそうです。
海外の例にならい、国政選挙での罰金制度を日本でも導入するべきだとの有識者からの意見はこれまでもありました。
しかし、今回の7%という結果をみると、罰金という仕組みは、日本ではなじまないのかもしれません。
男女別でみると、男性10%、女性4%と男女で差がありました。
最も多かった「インターネット投票の導入」を、年代別でみてみましょう。
30代が80%、18~29歳は79%だった一方、70歳以上が53%、60代は58%でした。若年層が高く、高齢層は低い傾向にあります。
日常生活でのインターネットの利用頻度が影響したと思われます。
2番目に高かった「投票所設置拡大」を、男女別でみてみると、男性44%、女性55%と10ポイント以上の差がつきました。
他の3つの対策と比べて男女差は最大でした。
現状の投票所は地域の小学校などが多いですが、女性は男性よりこうした投票所にあまり期待していないのかもしれません。
買い物などで外出した先のコンビニエンスストアやスーパーなどで投票できると便利ですよね。
3番目に高かった「商品券やポイントなど投票特典の付与」もみてみましょう。
まず、年代別に分析してみます。18~29歳が43%、30代は42%と若年層ほど高い一方、70歳以上が18%、60代は27%と高齢層ほど低い結果でした。30代女性が47%と特に高かったです。
キャッシュレス決済などでもらえる「ポイント」を集める「ポイ活」が近年、節約の手段として人気です。
ポイ活になじみのある30代以下の若年層が「投票特典の付与」を支持したのかもしれません。
さらに地域別でみると、大阪府29%が東京都22%を上回りました。「商いの街」大阪だけに、投票特典にはより敏感だったのかもしれません。
実際にこれらの対策を導入するには、法律面や費用面などで障壁が予想されます。
ただ、今のまま低い投票率が続くと、近い将来、導入が本格的に検討される日が来るかもしれません。あなたは、どの制度の導入が効果的だと思いますか?
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