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令和のカレンダーに平成・昭和を併記、何のため? 出版会社に聞いた
平成35年、昭和98年…表記のあるなし、基準は?
今年は西暦2023年、元号で言うと令和5年です。しかし、カレンダーの中には「平成35年」「昭和98年」と併記されているものがあります。なぜ過去の元号で書かれているのでしょうか?
元号が令和になって早5年。平成や昭和で数えることはなくなりました。しかし、一部のカレンダーには「平成」「昭和」が併記されています。
カレンダーの元号併記についてSNSの反応を見てみると、「二度見した」「誰得?」「元号換算って必要な情報?」といった疑問や驚く声がいくつもありました。
一体、誰が何のために、いつから過去の元号を載せているのでしょうか? 元号が表記されていないカレンダーもありますが、この違いには何か理由があるのでしょうか?
日本カレンダー暦文化振興協会(東京都)に問い合わせてみると、「厳密には分からない」としつつも、大阪にある出版会社が詳しいのではと紹介してくれました。
カレンダーの元号併記について教えてくれたのは、株式会社中戸若松(大阪府富田林市:以下、中戸若松)の代表取締役社長・中戸彦一さんです。
「端的に言いますと、使う方の便利機能の一環。便利さを追求して併記するようになりました」
例えば、昭和や平成生まれの人が年齢を確認しやすいこと。
「『おいくつですか?』と聞かれたときに『何歳です』ではなく、『昭和何年生まれです』と答える方もいます」と中戸さん。生まれた年を元号で覚えている人は、今が昭和や平成で何年か分かると年齢をすぐにカウントできます。
日常生活においては、元号と西暦の両方が使われています。若い世代には西暦が一般的になっていますが、公的な書類では元号から年月日を書くことも多く、日頃からカレンダーで目にしていれば記憶に残りやすいかもしれません。
中戸さんは、過去の出来事を振り返る際にも役に立つと話します。「例えばニュースで昭和50年の出来事が取り上げられたとき、カレンダーに昭和98年と書かれていると48年前のことなのだと分かります」
「我々のカレンダーは老若男女、日本全国津々浦々に配られますので、過去の元号が入っていた方が便利なんです」
中戸若松では年間60種類ほどのカレンダーを出版していますが、中小零細企業が顧客へ配布するためのカレンダーが多いといいます。「我々があらかじめカレンダーの土台を作り、空白部分に企業の名前を入れています。企業は自社の顔としてカレンダーを出され、広告効果もあります」
元号の併記を始めたのは、1998(平成10)年のカレンダーから。「昭和より七十三年」「大正より八十七年」と記載しました。
「今が昭和98年と書く社もあれば、うちのように元年から数えて98年目という意味で『昭和より98年』と書く場合もあります」
現在では「昭和元年(大正15年)1926年」「平成元年(昭和64年)1989年」「令和元年(平成31年)2019年」と、それぞれ「元年」が西暦何年に当たるのか書かれたカレンダーも出版しているそうです。
元号を併記していないカレンダーもあります。ポイントは「デザイン性」です。
「絵や写真を楽しむデザインでは、暦の部分よりも絵や写真を前面に出します。その場合、元号は併記せず一つだけのほうがすっきりすることがありますし、西暦だけ入れているカレンダーもあります」
すでに2024年のカレンダーもでき上がりつつありますが、文字のみのカレンダーにはほとんど元号が併記されているそうです。
中戸さんは、「ひと口にカレンダーと言っても、かわいい、きれい、便利など、様々な価値があります。文字だけのカレンダーは便利が売りです。アナログ媒体ですが、あって当たり前のもの。価値向上のため、引き続き研究していきます」
※この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。
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