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「大音量でツェッペリンを聴く」会 老人福祉施設が開いたワケ
〝クッソとがった〟イベント
地域の老人福祉センターが企画したある催しが、「クッソとがってる」と、ツイッターで予想外の注目を集めました。「ほかにはない企画を」と考えた施設の所長に、その狙いを聞きました。
話題になったのは、横浜市にある「老人福祉センター横浜市戸塚柏桜(はくおう)荘」の8月の催しです。
地域の広報には、こうあります。
「No Music No Life――レッド・ツェッペリンを聴く」
「大音量でツェッペリンを堪能しましょう」
この画像がツイッターで拡散すると、「クッソとがってる催し好き」「私も年取ったらジャニーズを爆音で流したい」「我々世代ならビジュアル系、ボカロ、アニソンかな」「年取るのも悪くない」などと幅広い年代から、称賛の声が集まりました。
施設の金沢浩二所長に、狙いを聞きました。
「〝遊び〟ですよね。どこもやっていない、新しいものがやりたくて」
そもそも「老人福祉センター」とは何でしょう。「老人福祉法」にはこうあります。
《地域の老人に対して、相談に応ずるとともに、健康の増進、教養の向上、及びレクリエーションのための便宜を総合的に供与し、もって老人に健康で明るい生活を営ませることを目的とする》
この法律に基づいて横浜市が設置し、指定管理者には市内で特別養護老人ホームなどを運営する社会福祉法人朋光会が選ばれました。
60歳以上であれば、誰でも利用できる施設です。
一方で、金沢所長によると、施設の利用者の大半は70歳以上。「60歳は〝老人〟って感じではないですよね。みなさん、若くて、ばりばり働きながら、余暇を楽しんでいます。こういう施設は敬遠されがちのようです」
ただ、若いうちから、老人福祉センターという場所を知ってもらえたらという願いがありました。「『自分にはまだ関係ない』と思ってほしくないんです。体が動くうちに接点を作って、社会とのつながりが途切れないようにしてもらえたら」
目をつけたのは施設の「大広間」。もともとはカラオケに利用していましたが、コロナ禍でできなくなっていました。しかし音響設備は、エンジニアも入れてメンテナンスした良いものが入っていました。
「どこにもない、とがったイベントを」
「No Music No Life」と銘打って、7月の初回は「エルビス・プレスリーを聴く」。60代のスタッフの声も聞いて決めました。「もろ世代だ」
月~金で働いている人がまだ多い世代なので、イベントの開催は土日のツーデイズにして、盛況でした。
「No Music No Life」。2回目の「レッド・ツェッペリン」は8月6日、7日の開催でした。
両日ともほぼ〝満員〟の、計40人ほどが集まりました。
足を運んだのは60代ばかりで、「九分九厘、初めて利用する人でした。狙い通りでした」。
ツイッターでは「セットリストは?」「〝天国への階段〟かもしれない」など予想が飛び交いました。「それもいいですね~」とにごしていた金沢所長。
当日明らかになったセットリストは、8月6日という開催日に合わせ、レッド・ツェッペリンが1971年に初来日し、広島で行った「愛と平和チャリティーコンサート」と同じ内容でした。
1回80分のライブ。
参加者は、エアギターをしたり、頭を振ったりしながら、ノリノリで大音響のレッド・ツェッペリンを楽しんだそうです。
「こういうのを望んでいた」
「若かった頃に聴いていたのは、ロックと流行歌。(施設で流れているイメージの)童謡は聴いたことがないんだよね(苦笑)」
参加者からは、そんな声が聞かれたそうです。
9月の「No Music No Life」は、「矢沢永吉を聴く」。
3日、4日のツーデイズです。
横浜市内在住の60歳以上は誰でも入れます。参加費は無料。年齢と住所が確認できるものをお持ちください。事前に電話でお申し込みください。
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