MENU CLOSE

話題

「運転見合わせ」って通じる?「やさしい日本語」車内放送始めました

常磐線快速電車(品川~取手)間

分かりやすい車内放送ってなんでしょう(写真はイメージです)
分かりやすい車内放送ってなんでしょう(写真はイメージです) 出典: Getty Images

目次

事故や悪天候で突然止まる電車。「ただいま、運転を見合わせています」。この車内放送に、誰でも分かりやすい「やさしい日本語」を導入する、と宣言した電車が話題です。

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」

「運転を見合わせています」がどう変わる?

「やさしい日本語」の車内放送を開始します

こんな駅のポスターが、SNSで話題になりました。

ポスターが掲示されていたのは、常磐線快速電車(品川~取手)間の駅です。

輸送障害発生時に「やさしい日本語」を活用した放送を試験的に取り入れてまいります
「やさしい日本語」とは、難しい言葉を言い換えるなど、相手に配慮したわかりやすい日本語です

そして、「やさしい日本語への言い換え」の例として、二つの文言が並びました。

通常の放送「強風のため、運転を見合わせています

やさしい日本語の放送「風が強いので、電車が止まっています

確かに、やさしい日本語の方がシンプルに、状況が伝わる気がします。

「強風」や「見合わせる」という日常会話ではあまり使わない言葉を言い換えるようです。

常磐快速線の「やさしい日本語」放送の周知ポスター
常磐快速線の「やさしい日本語」放送の周知ポスター

「英語よりも」伝わるのは

「やさしい日本語」を導入したJR東日本東京支社の我孫子運輸区に問い合わせました。

回答してくれたのは車掌の伊藤暉(ひかり)さんです。

車内放送を始めたのは、7月のこと。「やさしい日本語」の車内放送を発案したのは、常磐(快速)線を担当している乗務員だったそうです。

「輸送障害が発生したときに、1人でも多くのお客様に、正確で分かりやすい情報を提供したいと、取り組みました」

常磐線の車両=2021年3月8日
常磐線の車両=2021年3月8日 出典: 朝日新聞社


「やさしい日本語」が生まれたのは、外国人も多く被災した1995年の阪神・淡路大震災でした。緊急時に日本語や英語だけでは十分に情報が伝わりにくい人がいることが分かり、簡潔に情報を伝えることの必要性が認識されるようになりました。


伝えるには、中国語や韓国語など多言語に訳すことも考えられますが、日本で暮らす外国人の国籍は多様化していて、対応できない言語の方が多くなってしまいます。常磐(快速)線の利用者に多いのはアジア系の方々だそうです。

そこでJR側は実際に外国人留学生に話を聞いてみたといいます。

「留学生にインタビューすると、『日本語が少しわかる』人であれば、『英語よりも簡単な日本語の方が伝わる』ということがわかりました」

さっそく車内放送の「文案」を作りました。

参考にしたのは、2020年に発表された「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(出入国在留管理庁・文化庁作成)と、「やさにちチェッカー」(「やさしい日本語」科研グループ)など。

文案を留学生にも見てもらい、より分かりやすい表現を探っていったと言います。

「安全の確認が取れましたため」の意味

留学生たちの意見を踏まえて作った「言い換え」は、ほかにこんなものがあるそうです。

【ホーム上の非常停止ボタンが扱われた時】

通常の放送「お客さまにお知らせいたします。只今、○○駅にて駅の非常ボタンが押されているため、現在安全の確認を行っています。安全の確認が取れるまで今しばらくお待ちください。」「お待たせいたしました。安全の確認が取れましたため、まもなく運転を再開します。」

~~~~

やさしい日本語「急に止まって申し訳ございません。お客さまにお知らせします」
「誰かが駅の SOS ボタンを押したので、止まっています。ストップしています」
「電車の外は危ないです。電車から出ないでください」
「まもなく電車が動きます」


やさしい日本語では、シンプルに、何をすべきか(してはいけないか)が伝わりやすくなっているようです。「安全の確認が取れましたため」というのも、聞き慣れていてスルーしていましたが、よくよく考えれば、「安全だから動く」んだから、あえて入れる必要がないのかもしれません。

「外国人向け」だけではない意味

車掌さんは、対応できるのでしょうか?

「やさしい日本語」の放送は、事前に我孫子運輸区の車掌が録音しているそうです。遅れや運転見合わせなどの「輸送障害」が発生したときに、その録音が放送されます。

車掌からも「お客さまのサービス向上につながる取り組み」とポジティブな意見が多いそうです。

やさしい日本語というと、「外国人向け」の日本語のように思われがちですが、端的に分かりやすく情報を伝えるのは、誰にとっても大切なことです。

「お客様の反響を見て、今後は他の路線への展開も検討します。放送内容もお客様のご意見を踏まえて修正していきたいと思います」

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます