連載
#16 特別じゃない日
笑顔が少なく無口だった父 節分に見せた意外な一面、娘は思い出した
「特別じゃない日」をテーマにした単行本が発売された漫画家・稲空穂さん。ツイッターで発表して注目を集めた漫画「願いごと」に込めた思いを聞きました。
節分の日、離れて暮らす高齢の父母のもとにやってきた娘。
「節分のたびにいちいち実家でやらんでもいいだろう」
父はしぶしぶといった感じで落花生を手に取ります。
その姿を見た娘は、子どものころを思い出します。
笑顔が少なく、無口だった若いころの父。
節分の時は「おにはーそと!」と大きな声で、一緒に豆まきをしてくれてびっくりしたなぁ。
父のまねをして大きな声を出しながら豆をまくと、めったに笑わない父が笑顔になりました。
「ほらお父さん! おっきな声で!」
「俺はいいよ」
「だめよぉ! 一年の健康がかかってんだから!」
年をとった父と娘は、縁側に座ってそんなやりとりを交わすのでした。
こちらのお話は単行本「特別じゃない日」の1巻発売後、ツイッターにて「特別じゃない日の幸せ体験談」として読者の皆様から募集したエピソードの中のひとつです。
ご投稿いただいたのは、かのやん様のお父様との節分のエピソードです。
落花生を使用する地域があるということをエピソードを拝見して初めて知り、とてもびっくりしました(私の住んでいる地域では大豆だったので)。
実家では犬を飼っているため、人間の豆まきが終わった後にドッグフードをまくイベントがありました。
掃除機のようにドッグフードを口の中に吸い上げていく飼い犬の姿を見て、家族みんなで大笑いしたのはいい思い出です。
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〈稲空穂=いな・そらほ〉 静岡県出身・在住の漫画家。会社員を経て2017年に「おとぎ話バトルロワイヤル」(KADOKAWA)でデビューし、「特別じゃない日」で日常をテーマにした作品に挑戦中。老夫婦や女子高校生、主婦、バイトの青年……それぞれの小さな幸せがつながっていく物語を描いていて、実業之日本社から第1集が書籍化され、7月に第2集「特別じゃない日 猫とご近所さん」が発売された。Twitterアカウントは@ina_nanana
withnewsでは原則隔週水曜日に、稲さんの漫画とともに作品に込めたメッセージについてのコラムを配信しています。
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