「サロンパス味」「飲むサロンパス」などとして話題になることがある、海外で人気の飲み物・ルートビア。サロンパスとルートビアの関係についてのツイートが、Twitterで注目されました。それぞれのメーカーを取材すると、両者の共通点や拡散された情報の誤りも判明しました。(朝日新聞デジタル機動報道部・朽木誠一郎)
7月上旬、“ルートビアを飲んだ久光製薬の研究員が「肩こりや捻挫にも効くのでは」とサロンパスを開発した”という趣旨のツイートが投稿され、驚きとともに拡散されました。
ルートビアは海外で親しまれている飲料で、国内では沖縄などでも飲まれ、他の地域でも一部のスーパーなどが販売しています。“ビア”とありますが、ノンアルコールの炭酸飲料です。
独特の匂いが特徴で、その匂いから「サロンパス味」「飲むサロンパス」としてネットで話題になることもあります。ツイートはこうした事情を前提にしたものでしたが、本当にルートビアがきっかけでサロンパスが開発されたのでしょうか。
サロンパスを製造・販売する久光製薬を取材しました。同社広報担当者は「当社が把握している情報では、そのような事実はございません」とします。
久光製薬によれば、サロンパスが発売されたのは1934年。もうすぐ90周年を迎えるロングセラーです。サロンパスという名前は、主成分であるサリチル酸メチルと貼り膏薬(塗り薬を基材に塗り皮膚に貼って使う薬)を意味するプラスターをヒントにつけられたそうです。
「サロンパス開発のきっかけがルートビア」という情報は誤りでしたが、サロンパスとルートビアには共通点もあります。それが前述したサロンパスの主成分・サリチル酸メチルです。
鎮痛・消炎作用のあるサリチル酸メチルは、自然界にも存在します。カバノキ、ウィンターグリーンなどの植物に含まれており、こうした植物が、ルートビアの原料になることがあるのです。
国内で主に流通するのが、世界的飲食チェーンA&Wブランドのルートビア。そのルートビアをレストランなどで提供する現地法人A&W沖縄によれば、同ブランドの創業者の一人が、1919年にアメリカで、病気の友人のためにいくつもの薬草や根のエッセンスを調合したドリンクを作ったのが、展開の始まり。
それが好評で、のちに街角のジューススタンドで売られるようになったと言います。当時のアメリカは禁酒法下の時代で、ノンアルコールのルートビアの需要があった、という背景もあるそうです。
ただし、A&Wブランドのルートビアには少なくとも現在、カバノキやウィンターグリーンといった原料は使われていないとのこと。そこにサロンパスの成分が含まれているとは言えないようです。
「サロンパス味」「飲むサロンパス」と言われることについては「複数のハーブを含んでいるため、それが“スースーする感じ”につながっているのでは」ということでした。
なお海外のルートビアにはその土地ならではの特徴があり、中には今もカバノキやウィンターグリーンが使われているものもあります。
サロンパスについて拡散された情報は誤りで、ルートビアを「サロンパス味」「飲むサロンパス」と呼ぶこと自体も、実際にはサロンパスの成分を含んでいるとは限らない、ということがわかりました。有名な家庭薬と世界の変わった飲み物にまつわるおもしろいエピソードではありますが、情報の取り扱いには注意が必要です。