連載
#136 ○○の世論
本土の人は「沖縄のことを理解していると思うか」世論調査の結果は…
「沖縄で見たり、触れたりしてほしいもの」に年代差も
6月23日は「沖縄慰霊の日」。沖縄では、太平洋戦争の末期に県民を巻き込んだ壮絶な地上戦があり、この日、司令官らが自決したことで、組織的戦闘が終わったとされています。日本復帰50年にあわせて今春、朝日新聞が地元紙の沖縄タイムス、琉球朝日放送と合同で調査票を郵送して調べた県民世論調査で、沖縄戦の体験継承について聞いたところ、記者には少し意外な結果が出ました。(朝日新聞記者・磯田和昭)
沖縄戦では、県民の4人に1人が犠牲になったとされています。米軍統治など、戦後沖縄の苦難の歴史をかたどった出発点といえるかもしれません。
調査では、「かつての沖縄戦の体験が、きちんと引き継がれていると思いますか。そうは思いませんか」と聞いてみました。全体では「引き継がれている」42%、「そうは思わない」52%と、継承できていないという見方がやや多い結果でした。
記者にとって意外だったのは、この回答割合を年代別に見た結果です。
若い世代ほど「引き継がれている」と答えた割合が多いのです。18~29歳では63%で、「そうは思わない」という33%を大きく上回りました。40代で回答がほぼ拮抗。50代から上の世代では、「そうは思わない」が多数で、継承がうまくいっていないという見方をする人の方が多くなっています。
なぜなのか。地元の関係者に聞いてみると、近年、教育現場などで沖縄戦の継承に力を入れていることの反映ではないかと、いうのです。
沖縄戦のときに10歳だとしても、すでに87歳。親から子へ、子から孫へと家族や親族で引き継いでいくことにも、おのずと限界があるはず。若い世代が教育で学んでいたことが数字に表れ、なるほどと、思った次第です。
沖縄に来る人に「見たり、触れたりしてほしいもの」を4択で聞いてみました。「文化や食べ物」が35%と一番多く、次いで「自然」が25%。
一方、「米軍基地」21%、「戦争の跡」15%と、沖縄の苦難の歴史や現状を知ってほしいという気持ちもにじみます。
年代で特徴があり、40代より若い世代では、「文化や食べ物」が40%あまりと目立ちます。一方、60代、70歳以上では、それぞれ「米軍基地」を挙げた人が3割前後います。
実際、記者(60歳)が初めて沖縄を訪れた際にも、年が少し上の知人に、米軍普天間飛行場を見渡せる高台に連れていってもらった覚えがあります。
調査では、本土の人たちが「沖縄のことを理解している」と思うか、聞いてみました。
「理解している」という回答はわずか14%で、「そうは思わない」が80%に達しました。
調査方法が異なるため単純な比較はできませんが、復帰40年にあたる2012年の県民調査(電話)では「理解している」22%、「そうは思わない」63%と回答がもっと接近していました。理解されていないという思いは今回、突出しています。
これに関連して、SNSなどネットで、沖縄に関する誤った情報が多いと感じるか質問してみました。「多いと感じる」が49%と半数を占め、「そうは感じない」(36%)より多い結果でした。
本土側が沖縄のことを理解しているとは思わないと答えた人でみると、そのうち55%がネットに誤情報が多いと感じています。
沖縄では近年、首長選挙などの際に本土発とみられるフェイクニュースが目立ち、沖縄と本土の相互理解の妨げになっている一端が調査結果から浮かびました。
今回の県民世論調査は、昨年11月から質問設計に入りました。電話調査に比べ、数多くの質問ができる郵送調査は、世論を多角的にすくえるという意味で、やりがいがあります。
40問あまりの質問に集約するまでには、地元紙の沖縄タイムス、琉球朝日放送と毎週のように協議を続けるなどエネルギーが必要でした。
ですが、東京に住んでいて、コロナ禍の中、好きな沖縄にもしばらく足を運んでいない記者にとって、やはり聞いてみないと分からない意識というのが、あるものです。
沖縄と本土の相互理解の材料が少しでも提供できたのか、どうか……。自問自答を続けます。
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