ネットの話題
香川愛生女流四段、ゲーム好き・コスプレ…オンラインでも存在感
対局も普及活動も「妥協しない」
藤井聡太五冠の活躍で盛り上がる将棋界ですが、アマチュアの愛好家が通う道場は新型コロナウイルスの影響を大きく受けました。対面での対局ができない中、ファンが集まっているのがオンラインです。YouTubeチャンネルの登録者数が18万人を超え、ゲームやコスプレが趣味という女流棋士の香川愛生女流四段は、オンラインでの活動にも力を注いできました。奨励会を退会した後、女流棋士の道を選び、今、ネットで注目を浴びる香川女流四段。羽生善治九段の七冠以来のブームといわれる現在の将棋界をどう見ているのか。本音に迫りました。
――コロナ禍でリアルな場での交流は難しい時期が続きました。香川先生の活動には、どんな影響がありましたか?
オンラインサロンを始めた当初(2020年1月)は、各地にある道場に通ってもらいつつ、さらに楽しみを広げる場として、オンラインのコミュニティを考えていました。
ところがコロナ禍によって、将棋ファンが道場に行けなくなり、サロンが道場としての機能も果たしていくことになりました。
リアルイベントがなくなり、一気に将棋ファンとのつながりを断絶されたことは、プロの私たちにとっても、すごく寂しく、つらいことでした。その分、オンラインサロンはかけがえのない場所になったと思います。
――サロンの活動について教えてください。
参加者のみなさまと、どういった場を目指していこうか、日々考えてつくっています。私を支えていただいているサロンの方には私の将棋への姿勢をより理解してほしいと思い、自戦についても、より深く、細かい考えまでお伝えするようにしています。
「観る将」と呼ばれる方が増えて、サロンでも「観る」ファンの方が多いかと思っていたのですが、「将棋が強くなりたい」「アマ初段を目指したい」という人が思っていた以上にいて、将棋大会や将棋部の活動を始めました。活動に応じて級位の認定証も発行しています。
認定証や大会での成績は、それまでの積み重ねが感じられるものです。大会ができたことでアマ三段以上の高段者の方々にも楽しんでいただいていると思います。
自分がこれまで将棋界の中で与えてもらってきた機会を、今度は自分が提供する立場になれたらいいなという思いは、根っこのところにありますね。
――香川先生が普及に強い思い入れを持つようになったのは、なぜですか。
私は18歳で奨励会を退会した後、将棋を続けるのか、将棋から離れるのかを考えた時期がありました。
素晴らしい棋士の先生方がたくさんいたので、将棋界に自分という存在がいなくてもいいのではないかとも思いましたが、将棋に与えてもらったものへの恩返しをしなければと、女流棋士に復帰するときには自分ができる最善のことをやっていこうと決意しました。
自分の世代で何ができるだろうと考えていったとき、新しい技術を取り入れて、将棋の魅力を伝えていく役割を担っていくべきなのかなということは感じています。YouTubeやSNSでの発信を始めたのも、その一つです。
私はたまたまゲームやアニメに興味があって、好きなジャンルでは面白いものを受け取り続ける立場です。
将棋は確かに面白いのですが、新しい伝え方に取り組んでいくことは大事で、私が好きなコンテンツに出会ったときに感じるような高揚感を持ってもらえるといいな、と。
将棋界が積み重ねてきたことは大切にしていった上で、新しい関係性やファンを獲得していきたい。簡単なことではないんですけど、自分はそれが楽しいですし、使命感を持ってやっています。
――今後の目標を教えてください。
女流棋士として、結果を出していきながら、将棋界、さらに社会にも貢献していきたいし、何か役割が持てるといいなと思っています。
私は、株式会社AKALIという将棋とゲームの普及を主眼に置いている会社を経営しているのですが、それも役割のひとつだと思っています。長年ご一緒している共同経営者の蛭田健司さんにサロンの運営統括もお願いしているのですが、あらゆる面で助けてくださっています。
今あるものに満足はしたくない性格なんですよね。サロンも今よりもっとよくなるに違いない、と考えてしまう。将棋も、考えても考えても、最善をつくしきれない。妥協せずに最善をつくしたいという気持ちは、強いと思います。
タイトルも普及活動も、プロとしてどちらも大事にしていくべきだということは、師匠や先輩方が背中で教えてくださいました。対局に全力でありながら、みなさまのお力も借りて、自分にできる普及活動を全力でやっていきたいと思います。
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