連載
#4 記者が見た帰還
「防護服なしでこんなに人が…」久々の点灯に町民が漏らした言葉
「イルミが終わると、1月はダルマ市」
東京電力福島第一原発の事故から11年。いまでも全町民が避難を続ける福島県双葉町では今年1月から、帰還をめざす住民らが自宅に泊まれる「準備宿泊」が始まりました。原発事故後、初めてともった駅前のイルミネーション。「防護服なし」のイベントに立ち会った記者が町民の思いを取材しました。
「原子力明るい未来のエネルギー」考案者の一家に密着…記者が感じた「奇跡」
東京電力福島第一原発が立地する福島県双葉町で、今夏の帰還に向けた「準備宿泊」が行われています。大沼勇治さんは1月下旬、東日本大震災後に生まれた息子たちと地元に戻り、約11年ぶりに自宅に泊まりました。原発被災地に足しげく通い、取材してきた記者(31)が大沼さんの3カ月に密着しました。【記事はこちら】
誰も住まない町に、一斉に青い光が点灯した。昨年12月10日午後5時13分、JR双葉駅の東口に、震災前の街並みが復活した。
町の人たちによると、イルミネーションは1990年ごろに始まり、毎年12月には駅前の街路樹などを彩っていた。
クリスマス前にはミニ四駆大会やクリスマスケーキづくりのイベントを開き、子どもたちでにぎわった。多い年は1日5千人が訪れたが、補助金を出す町の財政が厳しくなり、震災の数年前を最後に終わっていた。
今回は「震災前の姿を復活させ、町民が足を運ぶきっかけをつくろう」と、双葉町のまちづくり会社「ふたばプロジェクト」が復活させた。
駅前の広場には、避難中の町民らが作ったペーパーランタンも並んだ。町の「復興のシンボル」である「双葉ダルマ」が描かれ、「復興祈願」「がんばれ!!ふたばまち」といったメッセージも書かれていた。
「双葉のイルミが好きだった」という大沼勇治さん(46)も、避難先の茨城県古河市から車で駆けつけていた。ランタンをじっと見つめた大沼さんは熱っぽく語り始めた。
「イルミが終わると、1月はダルマ市があって。家の前に出店がいっぱい並んでいて、(自分が)小学生のころは毎年、三角くじのおじさんが来て『勇治、大きくなったなあ』と言って、おもちゃをくれるんです。そういうのを思い出しますね」
「ほかの町民の方が家を残すとか、帰還するって聞かないんで、自分の家を残すことが時々不安になるんです。でも、こうやって、ここに防護服なしで、こんなに人が来て点灯式をやった事実は大きい。この光だけで終わらせないで、自分たちが生きた光を、町にともせたらと思います」
そう言い終えた大沼さんの目は、潤んでいるように見えた。
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東京電力福島第一原発が立地する福島県双葉町で、今夏の帰還に向けた「準備宿泊」が行われています。大沼勇治さんは1月下旬、東日本大震災後に生まれた息子たちと地元に戻り、約11年ぶりに自宅に泊まりました。原発被災地に足しげく通い、取材してきた記者(31)が大沼さんの3カ月に密着しました。【記事はこちら】
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