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淡路島に「実物大ゴジラ」がやってきた パソナが目指す地方創生の姿

「パソナグル​​ープ」が運営する「ニジゲンノモリ」。ひときわ目を引く『ゴジラ』
「パソナグル​​ープ」が運営する「ニジゲンノモリ」。ひときわ目を引く『ゴジラ』

目次

瀬戸内海最大の島、兵庫県淡路島で変化が起きています。2020年に総合人材サービス会社「パソナグル​​ープ」が東京から本社を移す計画を発表し、島の資源を生かした地域活性化に取り組みはじめたのです。その一つがアニメパーク「ニジゲンノモリ」。『ゴジラ』や『ドラゴンクエスト』などアニメや漫画の二次元コンテンツを体感できます。島の人たちは、「パソナの活動」をどのように受け止めているのでしょうか。淡路島で生まれ高校まで生活したライターの吉野舞が、街の様子をリポートします。

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全長120mの実物大ゴジラに丸のみされる

東京ドーム約28個分の敷地面積の兵庫県立淡路島公園内に、『ゴジラ』『ドラコンクエスト』『NARUTO(ナルト)』など、アニメや漫画の二次元コンテンツを体感できるエンターテインメントアニメパーク「ニジゲンノモリ」がオープンしたのは、2017年7月のこと。

公園内に入った瞬間、雄大の自然の中に全長120mのゴジラや『ドラゴンクエスト』のスライムくんがいきなり目に入ってきます。

でも、ここは淡路島。散歩中であろう作業着姿のおじさんの横に等身大サイズのゴジラが口を大きく開き、固まっている様子がなんともカオスです。

ビビットな青色が目を引くスライムくん。ちなみに、『ドラゴンクエストシリーズ』ゲームデザイナーの堀井雄二さんは淡路島洲本市出身。堀井さんは、2018年に洲本市名誉市民号を授与されています
ビビットな青色が目を引くスライムくん。ちなみに、『ドラゴンクエストシリーズ』ゲームデザイナーの堀井雄二さんは淡路島洲本市出身。堀井さんは、2018年に洲本市名誉市民号を授与されています

淡路島でしか体感でないゴジラワールドとは一体どのようなものなのでしょうか。「国立ゴジラ淡路島研究センター」と名付けられた建物に入っていくと、東宝制作によるオリジナル映像が流れました。

ここでは、ゴジラが淡路島に上陸した経緯や施設内にあるジップラインとシューティングによる「ゴジラ迎撃作戦」について説明してくれます。

台風の襲った夜、高波とともゴジラが島内に姿を現しました。そこで政府が襲撃に備えるためゴジラを『ニジゲンノモリ』まで誘導し、口にミサイルを撃ち込んだことでゴジラがそのまま活動を停止している状態で島にいるのです。

いつ動き出すのか分からないゴジラのため、来場者がゴジラを監視するといった形でアトラクションに参加します。「停止中のゴジラ」とはまさに映画『シンゴジラ』のラストの世界観と同じです。

映像を見た後、ジップラインでゴジラの体内に突入する任務が与えられます。ハーネスを装着し、等身大のゴジラの口から体内に入って行くのです。施設のスタッフに背中を押され、全長150mあるジップラインで、ゴジラの口の中に吸い込まれていきました。ただ、一瞬の出来事すぎて、人生で初めて食べられる側にまわった気分を思う存分に味わえませんでした。

ジップラインが終わると、「対ゴジラ細胞シューティング」でゴジラから飛散した「ゴジラ細胞」を狙うシューティングゲームがありました。細胞からの攻撃も回避しつつ高得点を狙って行きます。

淡路島出身の筆者は小さい頃は近所にゲームセンターもなく、遊びと言えば、虫を捕まえたり、木の実を使っておままごとしたりするばかり……。こんなアクションゲームを島で出来ることに時代の変化を感じます。

ゲームが終わると、「ゴジラミュージアム」に移動。こちらのミュージアムは東宝の全面協力のもと、歴代のゴジラの資料や模型を間近で見ることができます。

ここでしか見ることができないバンダイグループ、ホビージャパン全面協力のフィギュアジオラマや歴代の映画ポスターの中にはハリウッド版もあり、ゴジラが日本中だけではなく、世界中で愛されてきたことが分かります。

『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年公開)の巨大ジオラマ
『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』(2003年公開)の巨大ジオラマ

「ニジゲンノモリ」には、ここでしか食べられない限定フードもあります。注文したのは1番人気の「モスラホワイトカレー」。モスラをあがめる南海の秘境、インファント島をイメージしたココナツ味のホワイトカレーです。

ビビットなモスラの青い目は植物性の着色料を使った大根の甘酢漬けで、羽はトルティーヤで作られています。

味は正直言って…(平凡?)なのですが、途中モスラの形から虫を連想し、まるで虫を食べているかのような気持ちになります。

『ドラゴンクエスト』アトラクションに隣接されていフードコーナにも限定メニューがあります。

せっかくなので黒いカレー「はぐれメタルのスパイシーカレー」を注文。メダルをイメージしているためか、カレーの一面に銀箔(ぎんぱく)がふりかけられており、キラキラ光っている様子を見ていると、まるでスライムくんが本当に生きているかのように感じます。

場所が県立公園の中なので、チケット料金は少し高いなという印象を受けましたが、ゴジラの知識がなくても、ひとりでも楽しめる施設になっていました。

コースターには淡路島名物の玉ねぎにちなんだ、オリジナルキャラクター「玉ねぎスライム」くん
コースターには淡路島名物の玉ねぎにちなんだ、オリジナルキャラクター「玉ねぎスライム」くん

どうしてゴジラが淡路島に?

ここで、そもそも「どうして淡路島にゴジラの関連施設が出来たの?」と疑問に思う人も多いはず。「ニジゲンノモリ」ができた経緯について、パソナグループ広報部に話を聞いてみました。

そもそも、パソナが淡路島の地方創生に関わりはじめたのは2008年のこと。独立就農を支援する農場「パソナチャレンジファーム」を立ち上げ、農業に挑戦する若者を誘致したのが理由でした。これがきっかけとなり、雇用創出事業を兵庫県から受託し、淡路島での地方創生を手がけていきます。

社内で「どうすれば淡路島が世界中に知れ渡るのか?」というテーマで話し合った時、淡路島という土地名を売り出すのではなく、外国人がクールととらえるアニメや漫画などの日本が世界に誇るコンテンツを前に持って行く方が世界中の人に分かってもらえると考えたそうです。

「例えば、日本人の中でもディズニーランドは知っているけど、世界最大のディズニーランドがあるフロリダ州がどんな場所にあるかまでは知らない人も多いですよね。だけど、ディズニーに行けるのなら、ファンはどこでも訪れるはず。現にフロリダはディズニーランドが出来たおかげで世界中の人から認知され、年間観光客も一気に増えたんです」

日本人の感覚だと、「わざわざゴジラを見るために淡路島に行くの?」っていう気持ちになるかもしれません。でも、海外からは「等身大のゴジラが見られる!」という売りは強いはず。場所の認知度は後からついてくると考え、純日本国産のコンテンツを扱い、ITを使った体験型で淡路島公園の自然を楽しめるという「ニジゲンノモリ」のコンセプトが決まっていったそうです。

兵庫県立淡路島公園内には、パソナグループが運営する施設が合計7個あります
兵庫県立淡路島公園内には、パソナグループが運営する施設が合計7個あります

そして、2017年に「ニジゲンノモリ」がオープン。

初めから日本人が制作したアニメや漫画のみを取り扱うことを方針にし、『ナイトウォーク火の鳥』という兵庫県宝塚市出身の漫画家・手塚治虫氏の漫画『火の鳥』の世界観をテーマとした散策型アトラクションや、『クレヨンしんちゃん』のテーマパークをつくりました。

その後、『NARUTO(ナルト)』、『ゴジラ』、『ドラゴンクエスト』のテーマパークが増えて、今に至ります。

テーマパークは全て兵庫県立公園の中にあるため、県の協力も必要不可欠でした。ちょうど2017年「都市公園法」が改正し、行政が運営している公園に民間企業が公園の管理全体を行えるようになりました。

そこで、パソナは兵庫県が公募した「兵庫県立淡路島公園における民間事業の企画提案」に「淡路マンガ・アニメアイランド構想」を提案。それが採択され、建設費をパソナ側が出す形で「ニジゲンノモリ」をスタートさせました。

開設前の公園の入場者数は年間約30万人でしたが、開設後の2018年は約59万人と70%増加し、2017年の開業から2019年9月末までの合計来場者数は230万人になりました。

現在はコロナ禍のため、海外からの訪問客は見込めませんが、明石海峡大橋を渡ってすぐの立地を生かし、神戸や大阪などからの入場者数は増えています。特に学生や若い女性のグループがアニメのキャラクターと写真撮影をしている姿をよく見かけます。

私が小さい頃、よく家族で公園に野鳥を見に来ていたのですが、公園に入る際は300円ほどの入場料を払っていました。しかし現在、パソナグループが県に土地の利用料を支払うことになり、県は一定の収入を得ることができたため、入場者の駐車料金や入場料金は無料になったのです。

アトラクションで遊ばなくても、雄大な自然の中の大きな公園を誰でも利用することができるため、公園としての価値も上がり、入場者数も増えました。

『NARUTO』のテーマパークには、キャラクターの顔が彫られている巨大な岩も
『NARUTO』のテーマパークには、キャラクターの顔が彫られている巨大な岩も

住民はどう思っている?

街の人は「ここ25年で淡路島は大きく変化した」と話します。その大きなタイミングが、阪神・淡路大震災とパソナの二つです。

1995年の淡路島北部沖の明石海峡を震源としたマグニチュード7.3の震災で、淡路市地域は島の中で特に大きな被害を受けました。建物倒壊など修復後、街の様子は変わりました。それから20年、今、パソナグループの開発で再度街が変化しているのです。

施設近隣に住む地元住民は、「ニジゲンノモリ」が出来たことについてどのように感じているのでしょうか。10年前から公園近くに住み続け、社会福祉関係で働く女性は街の変化についてこう話します。

「一番変わったのは明石海峡大橋から見える街の景色ですね。神戸方面から明石海峡大橋を使って島に帰る時に、以前は漁船の船海灯だけが光を放っていたけど、今は施設関連で付いている円盤が一面ブワーッと光っていて、帰る度に本当にここは淡路島なのかなって思います」

公園内では冬限定でゴジラがライトアップされていました
公園内では冬限定でゴジラがライトアップされていました 出典:  

「ニジゲンノモリ」が出来て、地元住民の中で特に問題視されているのが、生活道路が開発で観光地化された結果、「道路交通の渋滞が日常的」になっていることです。

「ニジゲンノモリ」ができたことで周辺の開発も進みました。同じくパソナグループが運営しているハローキティのレストラン「HELLO KITTY SMILE(ハローキティスマイル)」などができたため、瀬戸内海に沈む夕日が有名な淡路市県道31号線沿いは、「淡路島ゴールデンルート」と呼ばれはじめ、新たな観光周辺スポットとなっています。


その結果、一気に観光客が増え、海沿いに家がある人々は仕事帰りで家に着くまで以前の2倍はかかっている人もいるようです。

また、野鳥の観察スポットだった大きな池に「ニジゲンノモリ」のアトラクションの水上ジップラインができたことで、環境への影響を心配する声も出ています。そのため、「ニジゲンノモリ」は野鳥保護のため、2021年は12月から1月末までの期間は近くのアトラクションを休園をしています。

淡路島が盛り上がるのはうれしいけど、昔から暮らしている住民の暮らしも尊重してほしい。「ニジゲンノモリ」からは、地方創生の意義と難しさも浮かび上がってきます。

島で青春時代を過ごした一人としては、故郷は離れていても自分の心の支えでもあります。再開発の中で、新しい変化とチャレンジと街の人々が隔絶せず、共に生きていく故郷であってほしいと願っています。

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