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IT・科学

選挙報道、午後8時直後の「当確!」アメリカはどうなってるの?

「出口調査の父」と呼ばれた男から生まれた歴史

当選確実のテレビ速報にわき上がる選挙関係者の様子=東京都渋谷区で
当選確実のテレビ速報にわき上がる選挙関係者の様子=東京都渋谷区で 出典: 朝日新聞

目次

10月末の衆院選では、投票が締め切られた午後8時と同時に、テレビ各社で「当確」が打たれました。これは報道機関の出口調査によってわかったものです。投票所の出口で調査員が投票を終えた人に投票した候補者などを聞き取る調査はいまや広く行われています。ただ、出口調査を最初に導入した米国では、調査手法が変わりつつあるようです。(朝日新聞記者・齋藤恭之)

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「出口調査の父」と呼ばれた男

出口調査というと、投票所となった学校などの入り口で、新聞社やテレビ局の腕章をつけた調査員を見かけたことがあるかもしれません。

日本では投票を終えた人に出口調査のお願いをし、投票した候補者名や政党名を、紙の調査票に書き込んでもらったり、タブレットの端末で選んでもらったりするスタイルが一般的です。

初めての出口調査は諸説ありますが、「出口調査の父」と呼ばれるウォーレン・ミトフスキー氏が行った、1967年の米国ケンタッキー州知事選と言われています。

映画会社のマーケティング(市場調査)を担当していたミトフスキー氏は当時、映画を見て出てきた人を映画館の外で待ち構えて調査していた手法から、選挙での出口調査を思いつきました。

当時行われていた選挙前の情勢調査より精度が高いことから、出口調査を実用化したといわれています。

選挙の情勢調査は日本でも行われていますが、投票する人だけでなく、投票しない人も対象に調査するため、実際に投票した人を対象に調査する出口調査とは精度が異なってしまいます。

日本の出口調査に導入された素早く入力できるタブレット型端末
日本の出口調査に導入された素早く入力できるタブレット型端末 出典: 朝日新聞

コストが負担に…「連合」結成

出口調査は、この後、1970年代、80年代と、ABC、CBS、NBCの3大ネットワークをはじめとする、米メディア各社で、個別に行われるようになりました。その後、出口調査を使った当落判定競争がメディア間で激化していきます。その結果、80年代後半になると、各メディアの調査コストが高騰するようになってきました。

1993年、ABC、CBS、NBCとCNNの4社はコスト削減のため、Voter News Service(VNS)と呼ばれる出口調査の「連合」を結成します。後に、FOXニュースとAP通信も加入し、6社合同で出口調査を行うようになりました。

しかし、2000年の米大統領選で、フロリダ州でアル・ゴア氏に間違って当選報道した問題や、02年の中間選挙で、出口調査のシステムにトラブルが起き、データの配信ができなくなった問題などで、VNSは廃止され、03年、6社は新たな「連合」である「National Election Pool」(NEP)を立ち上げました。

2000年の米大統領選でNBCのスタジオに入るアル・ゴア氏=2000年10月、ロイター
2000年の米大統領選でNBCのスタジオに入るアル・ゴア氏=2000年10月、ロイター

待ち構えるだけでなく追いかける

さらに新しい動きが出たのは17年のことです。

FOXニュースとAP通信はNEPから脱退し、調査組織のシカゴ大学NORCと協力して、出口調査のコスト削減や期日前投票に対応するため、従来の対面式の出口調査とは異なる新しい調査方法「AP VOTE CAST」(AVC)を開発します。このAVCは18年の中間選挙から実用化されました。

AVCはインターネット調査、電話調査を組み合わせ、投票日を含む数日間の調査から「投票に行く人」だけを取り出します。

期日前投票で投票した人、選挙当日に投票した人に加えて、これから投票する人のなかで投票する可能性が高い人を電話やネットで探し出す、仮想的な出口調査といえそうです。現場で待ち構えるのではなく、電話やネットを使って探し出す、追いかけるといったらわかりやすいでしょうか。

昨年の米大統領選は、新型コロナウイルスの影響で、期日前投票や郵便投票が増えました。AVCであれば、期日前で投票した人の投票行動も把握でき、対面ではないのでコロナ感染も心配ない――。コスト面でもメリットがあるようです。

米大統領選の投票所には長い列ができ、1時間以上並んだ有権者もいた=2020年11月3日午前8時30分、米ペンシルベニア州ベツレヘム、藤原学思撮影
米大統領選の投票所には長い列ができ、1時間以上並んだ有権者もいた=2020年11月3日午前8時30分、米ペンシルベニア州ベツレヘム、藤原学思撮影 出典: 朝日新聞

対面式にひけをとらない結果に

一方、NEPも対面式の出口調査をしています。新型コロナウイルスの対策が盛り込まれ、調査員はマスクをして、対象者からは6フィート(約1.8m)離れ、対象者が調査票に回答を書く鉛筆は使い捨てとしました。また、除菌液と除菌ウェットティッシュを用意し、対象者が調査の前や後に使えるようにもしています。

AVCと対面式出口調査の結果については、バイデン氏とトランプ氏の調査全体での比率は、公開されていませんが、性別など属性別の比率は公開されています。

性別で見るとAVCでは、男性では、バイデン氏46%対トランプ氏52%で、女性では、バイデン氏55%対トランプ氏44%でした。一方、対面式出口調査では、男性は、バイデン氏45%対トランプ氏53%で、女性では、バイデン氏57%対トランプ氏42%と、両調査とも男性ではトランプ氏支持が強く、女性ではバイデン氏支持が強いという結果でした。

性別だけでなく、年代別など各種属性の集計では、出口調査、AVCともに似たような数字でしたので、AVCの精度は対面式出口調査にひけを取らないと言えるのかもしれません。とはいえ、対面式の出口調査は半世紀以上の歴史がありますので、すぐになくなることはないでしょう。一方、電話+ネットの出口調査は、2018年の中間選挙と2020年の大統領選でしか、まだ運用されていません。今後精度が上がっていけば、コストの面からもメリットは大きい出口調査方法だと思います。

AVCのウェブサイトを見ると、詳細な調査方法が提示されています。情報を開示することで、批判も受け止め、改善していこうとするところが米国らしいと感じました。日本でも今後、米国のように、出口調査は、対面式の調査だけでなく、非対面式の調査もでてくるのかもしれません。

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