連載
#114 ○○の世論
やっぱり「野党側の問題」だったことが、世論調査でも明らかに
10月の衆院選。野党第1党の立憲民主党は、公示前の議席を13も減らして大敗し、枝野幸男代表が辞任を表明しました。衆院選では初めて共産党などとの「野党共闘」を進め、全体の4分の3の選挙区で候補者を一本化しましたが、有権者の支持は集められませんでした。朝日新聞社が11月6、7日に実施した全国世論調査(電話)で、選挙結果への有権者の受け止めを探ってみました。 (朝日新聞記者・磯田和昭)
今回の衆院選では、自民党が過半数(233)を大きく超える261議席を獲得しました。このことについて、「よかった」と思うか、「よくなかった」と思うか聞いてみました。「よかった」という人が47%で、「よくなかった」と答えた人が34%でした。
自民支持層は「よかった」が84%と結果を歓迎する一方、立憲支持層は「よくなかった」が83%を占めました。
そして無党派層では「よかった」は26%にとどまり、「よくなかった」が40%と多めでした。「その他・答えない」も3割以上いました。
自民が勝利した理由についても聞いてみました。「自民党と公明党の連立政権が評価されたから」だと思うか、「野党に期待できないから」だと思うかの2択で選んでもらうと、「連立政権が評価されたから」は19%しかなく、「野党に期待できないから」が65%と多数でした。
自民支持層でさえ「連立政権が評価されたから」は22%と少なく、立憲支持層も70%が「野党に期待できないから」と答えました。理由については、与党の支持層も、野党の支持層もほぼ同じ受け止めで、「野党側の問題」という見方が大勢でした。
衆院選で、立憲と国民民主、共産、れいわ新選組、社民の野党5党は全289選挙区の75%にあたる217選挙区で候補者を一本化しました。その多くは、共産が独自候補を見送ることで実現しました。
この217の選挙区で、一本化候補が当選したのは、野党系無所属を含めて62人(29%)でした。
与党との「一騎打ち」が増えたことで、立憲は、選挙区での議席を公示前の48から57に増やしました。
来年の夏の参院選でも、こうした野党による候補者の一本化を進めるべきか。今回の世論調査で尋ねると、「進めるべきだ」は27%と少なく、「そうは思わない」と否定的な意見が51%に達しました。
立憲支持層では「進めるべきだ」が47%と全体よりは高いものの、「そうは思わない」も37%とかなりの割合を占めています。衆院選での一本化の効果が限定的だったことが影響しているかもしれません。
組織力に勝る与党を相手に、野党候補が勝つには無党派層の支持が欠かせませんが、無党派層でも、野党による候補者の一本化を「進めるべきだ」は21%しかいませんでした。
共産は、今回の衆院選で立憲が政権をとった場合、「限定的な閣外からの協力」をすることで一致しました。両党が政権の枠組みを示したのは、まがりなりにもこれが初めてです。
共産は党の綱領で、将来的な自衛隊の解消や日米安保条約の廃棄を掲げています。「現実的な安全保障や外交政策を推進する」としている立憲と相いれないはずですが、選挙協力にあたって目をつむった格好になりました。
そこが自民党にとっては格好の攻撃材料になりました。甘利明幹事長(当時)は衆院解散当日の10月14日、「自由民主主義のもとに運営される政権と、共産主義が入る政権との政権選択だ」と、ぶち上げました。立憲の支持団体である連合の芳野友子会長も選挙後の記者会見で、「立憲が共産との共闘を進めたことで、組合員の票が行き場を失ってしまった」と指摘しました。
今回の世論調査では「立憲と共産は外交や安全保障などについて主張が異なります」と指摘したうえで、「参院選で立憲と共産が主張の異なるまま、選挙協力することは問題だと思うか」を聞いてみました。
すると、「問題だ」が54%と半数を超え、「そうは思わない」は31%でした。
共産支持層では「そうは思わない」の方が多かったのですが、立憲支持層では58%が「問題だ」と答えました。無党派層も「問題だ」が45%で、「そうは思わない」の31%を上回りました。
調査結果からは、基本政策の違いを残したまま、選挙で協力することへの有権者の厳しいまなざしが浮かんできます。枝野氏の後任を選ぶ代表選では、共産との共闘路線を引き継ぐのか、それとも修正するかが大きな焦点となりそうです。
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