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話題

若者、どこに投票すれば? 自民、孤独対策で官房長官に直電

性教育には強い偏見 鈴木貴子さんに聞く

自民党の衆議院議員の鈴木貴子さん
自民党の衆議院議員の鈴木貴子さん

目次

衆議院議員選挙を控え、主要6政党の若者政策を進める国会議員にインタビューするシリーズ。話を聞いたのは、自由民主党、衆議院議員の鈴木貴子(すずき・たかこ)さんです。孤独・孤立対策の議論をリードし、内閣官房に孤独・孤立対策担当室が設置されるなど、具体的な成果に結びつけてきました。自民党の若手議員として、衆院選を前にいまどんな若者政策を考えているのか、YouTubeたかまつななチャンネルで聞きました。

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全世代共通の課題、孤独対策に取り組んできた

――鈴木さんは孤独対策をリードされてきたと聞きました。関心を持たれたのはなぜですか。

以前から意見交換をさせてもらっていたNPO法人あなたのいばしょの大空幸星くんという学生から去年の10月か11月に連絡をいただいたのがきっかけです。「このままだと来年出る自殺統計がとんでもない数字になるから速やかに孤独対策に着手すべきだ」とデータをもとに語っていただいて。私もコロナ禍で経済対策などに力を入れようと思っていましたが、そもそもの問題の核を突き付けられたような気がしてすぐに動き出しました。

その日のうちに官房長官に電話をして、1週間後ぐらいに面会させていただいて共有しました。それと同時に私は自民党の青年局で学生部長という立場で役員の一人なので、青年局としてもこの問題に取り組もうということで仲間づくりをスタートしました。


――その日のうちに電話って、自民党の中ですぐに官房長官って会えるものなんですか。

会おうとしたら会えるんじゃないですかね。私の場合は特に加藤勝信官房長官が同じ派閥ということもあってダメ元な勢いですぐ電話しちゃうんですよ。孤独の問題はこれから生まれてくる命も含めて国民全体に関わるものなので突き動かされるものがありました。


――その後、対策室や大臣まで設置されました。短期間で進みましたが、今後はどうしていきたいと考えていますか。

人間の抱える孤独感は自殺や虐待、家族の不和など、社会が抱えているあらゆる課題に共通しています。孤独を感じたときに必要な支援や人につながる社会にしたい。いま予算を計上しているんですけど、まずは全体の実態調査をしたいです。

例えば日本だとこの世代が特に孤独を感じているとか、夏休みが明けて子どもの自殺が増えてしまうように時期の問題もあると思います。そういう属性や傾向が分かれば、そのタイミングでアプローチをしたい。エビデンスに基づいて政策の効果を検証可能なかたちで進めていくことが重要だと思っています。

鈴木貴子さんにインタビューするたかまつななさん
鈴木貴子さんにインタビューするたかまつななさん

現役で子育てをしている自民党議員が少ない

――続いて、若者政策についてお聞きしたいです。どの政党も子どもや若者を大事にすると言っていますが、自民党の若者政策において、他党と違うポイントがあれば教えてください。

実行性だと思います。政権与党として、掲げてきたことを着実に推進する力があります。裏を返すと、自民党内でまとまらないとその推進力はペースダウンしてしまうので、自民党の役割、責任は非常に重いし、日々緊張感とともに動かないといけないと感じています。


――ジェンダー政策や教育、被選挙権年齢の引き下げなど、外から見ていると対立がなさそうなのにどうしてこんなに進まないのかと思います。党内で若者政策の優先順位を高くしてほしいと感じるのですがいかがですか?

若者政策を細かく見ていくと、方向性に大きな違いはたぶんないんですよね。私自身がショックだったのは、いわゆるこども庁の議論で子ども・子育て政策の一元化という議論に参加してパッと周りを見たときに現役で子育てしている議員がいませんでした。30代が少なくてけっこう先輩の議員ばかりでした。

10年前、20年前に子育てしてきましたという人と、今この令和3年に子育てをしている人の声では課題や向き合っていることが違うじゃないですか。今の声を届けなければならないのに、そのへんが乏しいなと。


――それはショックです。どうしてなんですか?

あと、同世代の30代の議員は圧倒的に男性が多いですが、子どもはいても子育てに関わっているかというとそうじゃないかもしれない。テーマに親和性を感じないのかもしれないですね。自民党だけでなく社会全体もまだまだそうだと思います。

子育てや家事は女性に任せている方がまだ多いと思うので、自民党の議員が変われば社会が変わるぐらいの意識で取り組んでいかないといけないなと。

自民党本部
自民党本部 出典: 朝日新聞

ジェンダー政策はなぜ進まないのか

――自民党は2016年の18歳選挙権の導入のときから、青年局が中心になって若者政策を進めてきたと評価する声が多かった一方で、選択的夫婦別姓とか同性婚とか性教育とか、ジェンダー政策が乏しいという声も多く聞かれました。どうしたら若者世代が望む声は届きますか?

今おっしゃった全てのテーマに私はいろいろな形で携わらせてもらっています。自民党の場合は、推進なのか慎重なのかを、はっきり出してお互いに議論するんです。だから逆にいうとパキッと公約に書けない。議論は深めなければならないとか、推進はしなければならないというニュアンスしか書けないわけです。

一方で野党だと、自民党との対比で出口ありきでそれをやりますってかっちり書くじゃないですか。そうなると、実は推進派ではない人たちは党内の議論でも声を出さないわけですね。野党はどこまで本音の議論を党内でできているのか。これはけっこう問題です。


――性教育とかは、進めない理由が全くないと思うんですけど。なぜ進まないんですか?

いわゆる寝た子を起こすなとか、逆に性的な興味が刺激されてしまって性に奔放になるんじゃないかと。でもそれは科学的な裏付けがないです。だから私はそういう意見に対してデータで返していきます。

大阪や秋田や沖縄を見てください。性教育を独自にスタートしたところでは中絶率も下がってます。初めてのセックスの年齢、初体験年齢もリテラシーが高まった結果、上がっていますというように。私は今まで過去の議事録とかいろいろなものを調べましたが、議員の発言を見ると、データで打ち返していくということがないんですよ。私はそこがブレイクスルーの肝だと思っています。

今後自民党の中で議論する場をつくって、お互いに科学的知見に基づいて議論をしましょうというプラットフォームを作ることが必要だと思います。

1972年にあった「パパ・ママのための子どもの性教育展」の会場入り口
1972年にあった「パパ・ママのための子どもの性教育展」の会場入り口 出典: 朝日新聞

今後やりたいのは包括的性教育

――自民党は情報公開とか説明責任みたいなところで、国民から不信感をもたれていると思うんですけど、若手議員の中ではどういう空気感なんでしょうか?

若手にかかわらず情報に関してはしっかり共有する。自民党議員に疑惑がある場合には、一義的には本人の説明責任だと思いますけど、国民が不信を抱いている事実に対して、自民党は組織として向きあうことが必要だと思います。


――どうすれば今の世代よりも将来の世代に政策の優先順位が向くと思いますか。

議員も含めて若い世代がひたすら声を上げるしかないと思います。例えば自民党の役員人事で、いきなり若手を政調会長など党四役に当てる必要はないと思いますが、政調会長などのポストに必ず補佐役みたいなのを付けて必ず若手から登用するとか。そのとき決定権を持っている人にどれだけ意見具申ができるかがすごく重要だと思います。


――今後、鈴木さんが若者政策でやりたいテーマはありますか。

包括的性教育です。子どもたちの自尊心や自己肯定感が、先進国の中で日本は圧倒的に低いのですが、それを高める上でも包括的性教育が肝だと思っています。今年度から文部科学省で「生命の安全教育」というものが新しく予算化されました。水着、もしくは下着で隠されているところは自分のプライベートパートだよということを年齢に応じて教えていきましょうという教育で、マニュアルやガイドラインも含めて新しくできました。

私は、ずっとその意義を唱えてきたので、教えるチャンスが生まれたことはすごくいいことなんですけど、性暴力、性加害をしない、させない、見過ごさないということでスタートしているんですよ。そこが間違っていると思います。私は子どもたちに、セクシャリティーを性犯罪や性暴力などのリスクの面から教えるんじゃなくて、肯定的なものとして教えていきたいです。

ひとりも取りこぼさずに支援や制度につなげたい

――めちゃくちゃ共感します。衆院選も近いですが、どうしたら若者が投票に行くか、それに対して党としてどう貢献できるかというところをお伺いしたいです。

発信の仕方についてはすごく反省すべきだと思います。官僚による霞が関的文書は見てもすごく難しくて、自分に関わりがあることなのか分からないというのはすごくあると思います。

今ちょうど、孤独・孤立対策の関係で18歳以下の皆さんを対象に特設ホームページを作らせてもらっていて、チャットボットを使って質問に答えてもらうと相談窓口を紹介してもらえるというものです。今度、それの大人版を作ろうとしています。男性ですか、どこにお住まいですか、お金で困っていらっしゃいますか、食べ物ですかとか、そういう質問に答えていくと、使える制度にいざなわれるみたいな。

何らかの支援や情報を求めて来てくださった方をひとりも取りこぼさずに、必要な制度、必要な支援、必要な人にちゃんとつなげることを全省庁挙げて取り組みたいです。国民に対してのペーパーは、義務教育終了過程の日本語で完結明瞭に書くことを各役所には求めています。


――そうすれば投票率も上がりますか?

政治を身近に感じてもらったり、使える制度をちゃんと自分のものに落とし込んでもらえたりすれば、間違いなく投票率の向上につながると思います。逆につなげていくために見直しはしていきたいと思います。


――最後に、選挙で若者は自民党に入れたほうがいいでしょうか。入れるべきならその理由を教えてください。

もちろんです。それは私がいるからです、と言えるぐらい鈴木貴子も頑張りたいです。ぜひとも公約を比べてほしい。その先には自民党という選択肢が間違いなくあります。あとは事務所の雰囲気は、その政治家の姿を反映していたりするので、選挙のときだけではなく普段を見るのも大事じゃないかなと思います。

若い人のみならず全ての人に言いたいのは、選挙は別に党と党の争いではないはずなんです。候補者と候補者の個人的な戦いというか、いがみ合いじゃなくて、最高で最大の街づくりの舞台なんです。だから、いろんな候補者の話を聞いていただいて、自分が思う街の未来とか、国政であれば国の未来も含めて、自分はどんな社会がいいか、どんな社会で暮らしていきたいか、子どもたちとどうしていきたいかみたいな、そういった感覚で比べていただきたいと思います。

意外と力を入れていた若者政策――取材を終えて

自民党は、やはり実行力が違う。問題だと思ったことがあれば、すぐに官房長官に電話して具体的な政策につながる。だからこそ、その1議席をただ議員であることに満足せず、課題を吸い上げ、実現に向けて動いてくれる議員に託したいと思った。

子育てやジェンダーの問題よりも、外交や憲法、安全保障が優先されるという国会議員の中にある考えに、鈴木さん自身も悩んだという。今まで、声をあげにくかったのは、そういった自民党の古い体質をあらわしていると感じた。総裁選の際も、高市さんが安全保障に力をいれる一方、子育てやジェンダーなどに向く野田さんの重点政策は不利に働いているようにも見える場面もあった。様々な事情が絡んでいるとはいえ、これが今の自民党の現実なのかもしれない。

実は、自民党内では、公開されていないだけで、相当自由な議論をしている。決まってからは反対はしないというのが自民党のスタイルなので、議論の過程が見えにくい問題はあるが、発言が全くできないわけではない。同時に、鈴木さんが「科学的知見に基づいた議論」を強調したように、自由な議論にも課題はある。アップデートされていない知識、誰かのレガシー、特定団体との利害関係に縛られていては、建設的な議論は期待できない。

意外に見えるかもしれないが、この数年間、自民党は若者向けの政策に取り組み続けている。9月入学や大学入試改革など的外れなものもあったが、後期高齢者の医療負担を増加させるなど、将来のために現役世代の負担を軽減させる決断もしている。自分たちの支持層に嫌われるような政策も避けず取り組んできた。

情報公開への姿勢や、ジェンダー政策など、信頼できない面もたくさんあるが、鈴木さんのような若手議員が声をあげて、古い自民党をアップデートしてもらいたい。

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