連載
#108 ○○の世論
受け皿認定されない立憲 世論調査、自公政権「よくない」層の投票先
総裁選、自民の起死回生装置に?
29日の自民党総裁選で新総裁が選出され、新内閣が誕生すれば、政局の焦点は直後に迫る衆院選に移ります。そこでは、9年近く続いている自民・公明両党による連立政権の是非が問われます。9月11、12日に実施した朝日新聞社の世論調査で自公政権の評価を聞いたところ、「よかった」は5割に届かず、「よくなかった」は4割を占めました。及第か落第かの瀬戸際と言えそうです。受け皿になるはずの立憲への思いとともに、探ってみました。(朝日新聞記者・君島浩)
今回の世論調査で、自民党への支持率は37%(前回8月調査は32%)と上向きに転じました。さらに「仮に今、投票するとしたら」と尋ねた衆院選比例区の投票先としては、自民は43%(同35%)と跳ね上がりました。
菅政権発足直後の昨年9月の調査でこそ48%を記録しましたが、その後は政権がコロナ禍を克服できず、党勢は振るいませんでした。今回の43%は昨年11月の45%に次ぐ水準です。
一方、野党第1党で衆院選では政権奪取をめざす立憲の支持率は5%(同6%)と横ばい。比例区投票先としては11%(同15%)と下落し、昨年9~11月の12%を下回り、菅政権下では最低を記録しました。
今回の調査でも51%と5割を超えた無党派層。選挙の際にはその動向が常に注目されます。
無党派層が今回調査で衆院比例区投票先として選んだのは、自民23%、立憲11%。前回8月調査では自民、立憲ともに16%でしたので、立憲は大きく水をあけられました。
この間、菅内閣支持率は28%→30%と横ばいでした。すると、自民を押し上げ、立憲の埋没を招いた最大の要因は、これまでも自民の起死回生装置として機能した総裁選である、と言えそうです。
ただし、そうした情勢下でも、9年近くに及ぶ自公政権の全体としての評価を聞くと、「よかった」は49%で、「よくなかった」は40%でした。
次に、自公政権「よかった」層、「よくなかった」層、それぞれの比例区投票先に目を向けてみます。この質問は、政党支持率質問では態度が不透明だった無党派層の指向も加味されたものとなります。
「よかった」層では、自民63%、公明8%で、与党が7割を超えます。立憲は4%、共産は1%です。
ところが、「よくなかった」層でも、自民が23%で、立憲の21%をわずかながらとはいえ、上回ります。立憲+共産なら35%となり、自民+公明の25%を超えますが、これは全体の4割の「よくなかった」層に限っているので、自公過半数割れをめざす立憲としては十分とは言えません。
立憲は自公政権に批判的な人の受け皿になりきれていない。それどころか、受け皿として認知すらされていないのでは、という状況に近いとみられます。与野党の政権交代劇より、自民党内の疑似政権交代の方がまし、と内心思っている人がかなりいることをうかがわせます。
自民も、菅首相が退陣の意向を明らかにするまでは、衆院選で議席が激減するのでは、とおびえていました。政界は「一寸先は闇」で、自民の好調が新総裁誕生で弾みがつくのか、何かのきっかけで一転して失速するのか、見通せません。
立憲が政権を奪取する覚悟があるなら、まず、小選挙区制では野党候補者の一本化を果たすべきでしょう。
その上で、新型コロナウイルス対策や経済・社会保障政策など国民生活に密着した課題で、多くの人の共感を得られる具体策を打ち出す必要があります。こうした「王道」を歩めるかどうかが、「万年野党」となるかどうかの岐路になるかもしれません。
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