連載
#105 ○○の世論
「選挙の顔」どれだけ重視しますか? 世論調査でわかった現実
無党派層の一票を左右する党首の存在
菅義偉首相が再選不出馬を表明した自民党総裁選が17日に始まります。新しい総裁は、間近に迫る衆院選で野党党首と政権を争う「選挙の顔」になります。では、有権者は衆院選で党首が誰なのかをどの程度重視するのでしょうか。朝日新聞が行った世論調査を分析しました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
「衆院選で投票する政党や候補者を決める時、党首が誰なのかをどの程度重視しますか」。2009年6月~7月と今年3月~4月に行った全国郵送世論調査では、4択で同じ質問をしました。
09年と今年をくらべると、全体では、「大いに」「ある程度」を合わせた「重視する」は09年68%→21年70%、「あまり」「まったく」を合わせた「重視しない」も09年31%→21年28%とほぼ変わりませんでした。
年代別の傾向に大きな変化はなく、「重視する」がもっとも多かったのは09年80%、21年76%の70歳以上でした。
ただ、支持政党別にみると、変化がみられました。
与野党第1党の支持層をくらべると、09年では、「重視する」は自民支持層72%、民主支持層77%でしたが、21年では、「重視する」は自民支持層76%、立憲支持層80%と、ともに増えました。
「重視する」がとくに増えたのは、特定の支持政党を持たない無党派層です。「重視する」は09年56%→21年64%と増えたのに対し、「重視しない」は09年41%→21年34%に減りました。
09年と今年を比べると、与野党第1党の支持層が党首をより重視するようになっただけではなく、無党派層でも党首を重視して一票を投じる割合が大きく増えています。
民主党(当時)が自民党から政権を奪った衆院選直前に行った09年調査のころよりも、「選挙の顔」が一票をより左右するようになったと言えそうです。
今年の調査では、首相交代のあり方について、「自民党の中から首相が選ばれ続ける方がよいと思いますか。それとも、衆院選による政権交代で首相が代わる方がよいと思いますか」と聞いたところ、全体では「衆院選による政権交代で首相が代わる方がよい」50%に対し、「自民党の中から首相が選ばれ続ける方がよい」35%でした。
ところが、無党派層では「衆院選による政権交代で首相が代わる方がよい」62%に達し、「自民党の中から首相が選ばれ続ける方がよい」17%を大きく上回りました。
菅義偉内閣が2020年9月に発足してから朝日新聞が行った全国電話世論調査では、無党派層は20年9月45%→21年8月55%に膨らみ、自民党をしのぐ最大勢力となっています。
自民党総裁選では、論争の中身とともに、支持層だけではなく無党派層にも支持される党首を選べるかどうかが衆院選の行方を左右しそうです。
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