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人財(じんざい)、志事(しごと)「五輪話法」に通じる造語の危うさ
過酷な現実をまひさせる〝都合のいい解釈〟
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過酷な現実をまひさせる〝都合のいい解釈〟
帰省はコロナ禍収束の希望の光――。首都圏の4都県知事による「夏休み・お盆期間中の帰省は控えて」との訴えに対し、痛烈な皮肉を込めた文章がSNSで拡散されました。「五輪」を「帰省」に置き換えることで、政治家の「楽観論」と、市民の危機意識との落差を炙り出したのです。経営者や政治家ら権力のある人たちは、社会情勢を〝都合よく解釈〟するため、様々な言葉を使ってきました。その一つが「人財(人材)」「志事(仕事)」など、世の中にあふれる謎の造語です。私たちの目を、向き合うべき困難からそらさせる、言葉の魔力について考えます。(withnews編集部・神戸郁人)
筆者はこれまで、街中で見かける、起源不明な造語に注意を払ってきました。とりわけ興味深く感じられたのが、元の単語の一部をもじることで、前向きさを演出する類いの語彙(ごい)です。
それらを、自主的に能力や資質を高める営み「自己啓発」にちなみ、「啓発ことば」と命名。成り立ちや、世間に浸透した過程などについて、調査してきました。
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