連載
#95 ○○の世論
「都民ファーストの会」投票したのはどんな人? 小池ファンの存在感
菅内閣には冷ややか、中堅世代の女性層
7月4日に投開票された東京都議選。自民党は第1党に返り咲いたものの、公明党と合わせて過半数という目標には届きませんでした。一方、小池百合子知事が特別顧問を務める地域政党「都民ファーストの会」は議席を減らしましたが、自民に追いすがり、第2党に踏みとどまりました。4年前の小池フィーバーから一転。熱狂なき今回の選挙戦で、都民ファに投票した人はどんな人たちなのか。朝日新聞社の出口調査から探ってみました。(朝日新聞記者・君島浩)
都議選の結果は次の通りでした。
都民ファは議席を告示前の45から31に減らし、第1党の座を自民に明け渡しました。自民は25から33に増やしましたが、8年前に獲得した59には遠く及ばず、過去2番目に少ない議席にとどまりました。
出口調査での主な政党の支持率を2017年の都議選の時と比較してみます。
都民ファの支持率は、4年前と比べると半分に減り、12%。自民の28%の4割程度です。
その都民ファが、自民に迫る得票を得ました。なぜでしょうか。
都民ファの候補に投票した、と答えた人の支持政党の内訳をみてみます。
都民ファの候補者に投票した人のうち、都民ファ支持層はちょうど50%でした。無党派層が25%と4人に1人を占めます。自民支持層も15%いました。
自民候補に投票した人の78%が自民支持層を占めたのとは、色合いをことにします。自民候補に投票した人のうち無党派層は14%と、都民ファより少なめでした。公明候補に投票した人も、自民候補に投票した人と同様、無党派層の割合は15%と低めでした。
都民ファは、無党派層、そして自民支持層の一部も取り込んだことで、支持率半減の中で健闘できた、と言えそうです。
また、投票者に占める支持政党の分布は、都民ファが維新と似た傾向があることも分かります。
維新候補に投票した人の中で、維新支持層は51%。続いて無党派層の24%、自民支持層が17%でした。共産、立憲に投票した人は無党派層がやはり4分の1を占めたものの、自民支持層は1割未満と取り込めていません。
出口調査では、小池知事と菅内閣の支持率も聞きました。
回答者全体では、小池知事の支持率は67%、菅内閣の支持率は41%でした。都民ファに投票した人ではどうでしょうか。
都民ファ候補に投票した人の小池知事の支持率は90%と、全体よりかなり高めです。そもそも小池知事が立ち上げた党ですから、当然とも言えるでしょう。
一方、菅内閣の支持率は37%と全体よりやや低め。「小池知事は大好きだけど、菅首相はちょっと……」という気分がうかがえます。ただ、菅内閣の支持率は共産や立憲候補に投票した人と比べると高く、維新に投票した人に近いと言えます。
性年代別の傾向も、投票先の政党別にみてみます。
年代別にみると、都民ファに投票した人は、比較的若い世代の比率が高いのが特徴です。50代以下が占める割合は61%。維新の74%よりは低いものの、自民の56%、立憲の57%より高めでした。
男女別では、都民ファに投票した人は、公明、共産と同様、女性が多めでした。自民、維新では、男性が多めなのとは対照的です。
さらに、都民ファに投票した女性の年代別構成をみると、30~40代が占める割合が34%で、自民の25%と比べると、かなり高めでした。逆に70歳以上は22%で、自民の34%より低めでした。
出口調査からは、都民ファに投票した人たちは、無党派層に自民色がにじむ一方、菅内閣には冷ややかで、中堅世代の女性層が厚い、というイメージが浮かびます。実際に都民ファの候補に投票した人の総数は100万人を超えており、秋の衆院選では、与野党とも自陣営に引きつけたいところです。
都議選では、過労を理由に入院していた小池知事が選挙戦最終日になって都民ファ候補の激励に現れました。このサプライズが、有権者の投票動向をどの程度左右したかは分かりませんが、都民ファに投票した人たちは小池ファンが圧倒的多数を占めるだけに、弾みを付けたという想像もできます。
衆院選では国政課題をめぐる論戦が最大の焦点になるのはもちろんですが、「主役不在」も取りざたされる中、小池知事が影の主役となるのか、何らかの形で躍り出るのか、も目が離せません。
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