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連載

#16 ネットのよこみち

芸能人の“すっぴん公開”に異変 YouTubeに参入、進むエンタメ化

指原莉乃メイク動画、驚異の730万再生

メイク動画が730万再生された指原莉乃
メイク動画が730万再生された指原莉乃

目次

新型コロナというきっかけもあって、芸能人がYou Tubeチャンネルを持つのも当たり前になった。視聴者にとっての楽しみは、なんといっても“素”の姿を覗けることだろう。2000年代はじめ、披露するだけでニュースになった第一次“すっぴん公開”黄金時代。そこから、“すっぴん疑惑”論争を経て、美肌加工が当たり前になった今、第二次“すっぴん公開”黄金期が訪れつつある。“すっぴん公開”の歴史から、素の姿のコンテンツ力について考える。(吉河未布)

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730万再生の“メイク公開”動画

今年2月27日(※太平洋標準時、以下同)、1本の動画が“すっぴん公開”業界をにぎわせた。指原莉乃の「すっぴんからゴリゴリメイクします」。公開から5日間で再生数380万回と大反響となり、1ヶ月ほどで約730万再生を稼いだのだ。

4月10日にお笑いトリオ・3時のヒロインのゆめっちが公開したすっぴんからのメイク動画は、公開約1ヶ月半で再生250万回を超えている。

 どちらもメインは「メイクの過程」であって、すっぴん公開そのものではない。しかし完全なすっぴんからスタートさせているからこそ、そのビフォーアフターが際立つのは確かだ。芸能人の“素”を垣間見ることができる“すっぴん公開”の歴史を振り返ると、そのコンテンツ力の進化がうかがえる。先駆けとなるSNSツールは、ブログだ。2003年11月には、中川翔子が「ヤプログ!」内に開設したばかりのブログにて、すっぴんだという画像を掲載している。さらに「アメーバブログ」が2004年9月にサービスインするや、ヤプログ!からブログを移した中川をはじめ、2006年10月に佐藤江梨子が「すっぴんで失礼」という写真を掲載するなど、じわじわとブログにすっぴんを掲載する例が出現し始める。

一方で、芸能人ブログを多く抱えるようになったサイバーエージェントは、2006年に「アメーバニュース」をスタート。芸能人がアメーバブログで更新した内容のなかから、反響があるトピックスを記事化するようになる。

すっぴん披露をネットニュースにする“走り”であり、当時は「すっぴん」という日常的かつ素朴なネタと、それを記事にした時の「披露」「公開」「称賛」などというお硬いワードのギャップも面白おかしく捉えられたものだ。だって、それまではすっぴんが「ニュース」になるなんてこと、なかったのだから。


第一次“すっぴん公開”黄金時代

その後、J-castで2008年10月からスタートした「芸能人ブログウォッチ」では、同年同月、藤原紀香が当時のブログですっぴんを公開したことが早速取り上げられている。2009年には、紗栄子がスイートポテトを頬張るすっぴんの自分をブログに公開するなど、芸能人の“何気ない日常のふとしたすっぴん”を写した写真は加速度的に溢れてゆく。

すっぴん公開とSNSから記事を作る手法は相性が良かった。この頃からさまざまな媒体が立ち上がり、所謂「ネットニュース」が量産されるようになると、媒体にはSNSをパトロールする人員が配置され、芸能人がすっぴんを公開すれば、驚くほどあっという間に記事化されるようになった。

芸能人はすっぴんを公開することで、「すっぴんでもキレイ」と称賛される。ビジュアル以外の文脈でも「“素”を隠さない姿勢が飾らない人柄を表していて素敵」と、いずれにせよファンに喜んでもらえる。芸能人にしてみれば“サービスショット”であるすっぴんは重宝され、“すっぴん公開”というだけでPVを稼いだ。

それがネットニュースに取り上げられれば、元々読者ではない層からもそのブログにアクセスが集まることになり、PVをより稼ぐ仕組みができあがる。小森純が2011年6月16日に「すっぴんですが。。。」として素顔を公開したところ、メイクばっちりの顔との違いも相まって、翌日にはなんと250万近いアクセスがあったことはもはや伝説だ。第一次“すっぴん公開”黄金時代である。

女優の藤原紀香=2017年4月27日、東京都千代田区、関田航撮影
女優の藤原紀香=2017年4月27日、東京都千代田区、関田航撮影
出典: 朝日新聞

「どこまでが“すっぴん”なのか問題」

すっぴん公開が話題になる流れは、テレビ局も目をつけた。

元々「寝起きドッキリ」がテレビ番組の定番コンテンツであるように、芸能人の“素”の姿はテレビにとっても根強い人気ネタ。TBS系バラエティー番組『サタネプ☆ベストテン』は、「プロが選ぶ!すっぴんが見てみたい女性芸能人ベストテン!!」(2011年11月12日)、「すっぴんが見てみたい女性芸能人第2弾SP!」(2012年1月14日)と、まるまるすっぴんだけで番組を2回も作ったほどだ。

しかし、“すっぴん公開”の盛り上がりとともに、「本当にすっぴんなのか」疑惑も浮上。

「ファンデーションを塗っているのではないか」「この眉毛は描いているだろ。やりなおし」「マツエクやカラコンを着けているものは“すっぴん”と言えるのか」等々、議論を呼ぶことになり、実際、前述『サタネプ☆ベストテン』の「~第2弾SP」回では、出演者が“どこまでをすっぴんと呼んでいいのか”という議論が白熱した。

そんななか、2012年9月7日のブログで、「芸能人のすっぴん公開はどこまで“真実”なのか問題」に言及したのが若槻千夏だ。若槻は、「若槻さんは芸能人のスッピン公開ブームをどう思いますか?」という読者からの問いに対し、

〈スッピンですと言いながら
少しだけファンデ塗ってたあの夏。すみません。
たぶんみんなそうです。〉

 

と、「すっぴん」を謳っていた自身の写真が、軽くファンデーションを塗っていたものであったことをあっさり告白したのだ。

スマホはまだまだ普及していない時代。ガラケーカメラの画質の粗さから、決して被写体以上に映ることのなかった頃の話である。

若槻千夏=2006年9月
若槻千夏=2006年9月
出典: 朝日新聞

スマホが普及、「美肌加工」が当たり前に

そうこうしているうちに、スマホが一気に普及。カメラの性能も爆発的に上がってゆく。さらにTwitterやInstagramなど、他のSNSの浸透と並行するように、中国、韓国発で“美肌補正機能”のついた加工アプリが続々と登場した。

2013年、中国企業「Meitu」から元祖自撮り加工アプリ『BeautyPlus』がリリース。手軽にすっぴんを補正できる機能は人気を呼び、今や世界で22億DLされているという大人気アプリだ。さらに2014年には、「LINE」が自撮りアプリ『B612』をリリース。2015年、ネイバーの子会社「キャンプモバイル」が『SNOW』をリリースすると、動物に“変身”したり、顔交換ができたりする機能は当時革新的で、爆発的な人気をよんだ。

こうなってくると、美肌加工は「当たり前」。撮影するのも見ている方も、美しいに越したことはない、くらいの勢いで、「どこまでがすっぴんなのか」など、大した議論でもなくなってくる。

「盛」ってナンボ、「インスタ映え」への意識が強くなっていくと、今度は、そんな「盛る」や「映え」の反動なのか、“ナチュラルさ”がカギになった。2018年にはナチュラルに盛れる『Ulike』と『SODA』がリリースされ、幅広い世代に支持を得始める。また、スマホがバージョンアップするごとにカメラの性能はさらに上がり、なんでもない写真でも美しく撮影できるようになった。コテコテに飾り付けることはしないけど、ちょっとキレイに映りたいという欲求が、どんどん叶えられてゆく。

「LINE」の自撮りアプリ『B612』
「LINE」の自撮りアプリ『B612』

第二次“すっぴん公開”黄金時代

そして2020年、コロナによる芸能人YouTuberフィーバーがやって来た。「リアル」が好まれるYouTubeの世界。リアルなすっぴんを見せることが、好感度アップにつながるようになった。ナチュラルといえど美肌加工に慣れた目に、ガチすっぴんは、一周回って新鮮だったのかもしれない。そして出す側(芸能人側)も、すっぴんといえど「やや盛って」出すようなことはしない。肌が美しくなくても、生活感あふれていても、“そのまま”放出する。

 同年8月、仲里依紗は動画『仲里依紗の休日24時間密着して観察してみたよ』で、寝起きのすっぴんから始まり、生活臭あふれる姿をさらけ出す。同12月には、柏木由紀が動画『クマ、ニキビ、シミ、毛穴を隠すベースメイク術!』で、吹き出物もシミもそのまま見えるすっぴんを公開し、その潔さとリアルな肌事情に〈親近感わいた〉と好感度が爆上がりした。

 You Tube時代は、もしかしたら第二次“すっぴん公開”黄金期。第一次と異なるのは、「公開した」というだけではコンテンツが成り立たないところだ。そこからメイクして別人級になる、すっぴんのままダラダラした生活を送っているさまもさらけ出す。芸能人のすっぴん公開は、エンターテインメントとして進化し続けている。

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