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#57 夜廻り猫

「おまえは駄目、無理」親に言われ続けて…夜廻り猫が描く子育て

夜廻り猫が描く「子育て」
夜廻り猫が描く「子育て」

目次

お前にはいつも恥をかかされて――。厳格な父に子どもの頃から言われてきた言葉を振り返り、男性は「ああいうことは言わない方がいいよね。その通りになっちゃうから」とつぶやきます。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「子育て」を描きました。

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「その通りになっちゃう 言わない方がいい」

きょうも夜の街を回ろうとしていた猫の遠藤平蔵。連れている2匹の子猫が周りで楽しそうに遊んでいます。
「道に飛び出しては駄目だ」「あっそんなもの食うんじゃない」

通りかかった男性は「子育てかぁ」と言いながら、ほほえましくその様子を見つめます。

「子どもはかわいいかい?」と聞かれた遠藤は、「こういう時は悪魔ですが……はい」と笑います。

男性の父親は、子どもの頃から男性に向かって厳しい言葉をかけてきたといいます。
「お前にはいつも恥をかかされて」「お前は駄目」「お前には無理」

「ああいうのは言わない方がいいよね、その通りになっちゃうから。親ってさ、子どもに信頼されちゃってんだよ」

男性はそうつぶやくと、「かわいがってやってよ」と立ち去ろうとします。
思わず遠藤が「おまい様は 大丈夫ですか」と問いかけると、男性は「うん ちょっと時間がかかったけどね 今は楽しく暮らしてるよ」と顔をほころばせます。
笑顔で去っていく男性を、遠藤たちはホッとしたような気持ちで見つめるのでした。

「根本的な自信」を傷つけない大切さ

作者の深谷さんは「たいていの人は、叱られたり注意されたりをたくさん経験して大人になりますよね」と話します。

「叱られるのは普通のことですが、それを受け入れられない大人もいます。私自身もそうです」とした上で、「自分の現状に否定的な評価をして、よりよく変わることは、余裕があってこそできることです」と指摘します。

その余裕とは、自分の中にある根本的な自信――。
「間違えても苦境に陥っても、『きっと自分はなんとかできる』という根本的自信を持ちたいですし、誰かのそれを、たとえ自分の子どもであっても傷つけることなく付き合いたいと思います」

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。もう1匹の子猫は「帽子猫」です。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞、単行本7巻(講談社)が2020年12月23日に発売された。

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