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連載

#55 夜廻り猫

夕食前の説教電話…ミスをなすりつける上司 夜廻り猫が描く在宅勤務

夜廻り猫が描く在宅勤務
夜廻り猫が描く在宅勤務

目次

「課長がそうおっしゃったので……はい 僕のミスです。すみません」。やっと仕事が終わり、夕飯のラーメンをつくって食べようとしたら、上司からの電話が1時間も続いて――。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「在宅勤務」を描きました。

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「あんな人間にはなりたくない 自覚していたい」

在宅勤務の業務がようやく一息ついて、作りたてのラーメンを食べようとした男性。そこに上司からの電話がかかってきます。
「それは課長がおっしゃったので……はい 僕のミスです、すみません」

電話が終わった頃には、ラーメンは冷え切っていました。
夜の街を回っていた猫の遠藤平蔵は、男性に声をかけます。
「おまいさん、泣いておるな?心で」

男性は「課長の電話、1時間!元はあいつのミスなのに。上にへつらい下をいじめ、自分をいいやつだと思ってる」と不満を口にします。

「ああいう人間にはなりたくない…自分が悪人なら悪人だと自覚していたい」

そこで、子猫の重郎がラーメンをおいしそうに見つめていることに気づいた男性は、「あ、食う?」と声をかけました。

おいしそうにラーメンを食べる猫たち。遠藤は「この方が大変な思いをして働いて得たラーメンだ……」としみじみと語ります。
男性は顔を赤らめ、「それほどじゃ……フツーだよ、フツー」とつぶやくのでした。

自分の働きの評価、気分転換も「ひとり」

作者の深谷さんは、コロナ禍で多くの人が苦しむなか、在宅勤務の人も増え、「『1人で、組織の一員として仕事する』ことになった立場の人は大変ではないでしょうか」と心配します。

自分の働きを評価するのも、気分転換するのもひとり。なかなか厳しい働き方だと指摘します。
深谷さんは「人としてずっと役に立つ『自律力』がつくのではないでしょうか。頑張ったり休んだり自信をつけたりしながら、いい塩梅でやっていけますように」と願っています。

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。もう1匹の子猫は「帽子猫」です。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞、単行本7巻(講談社)が2020年12月23日に発売。2021年2月4日から24日まで、京王百貨店・新宿店7階の丸善で「夜廻り猫原画展」 が開催された。

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