連載
#69 ○○の世論
自宅にテレワークの場所ありますか? 世論調査でわかった〝温度差〟
在宅勤務したいけど「ほぼ出勤」の現実……
再びの緊急事態宣言で、テレワークの推進が呼びかけられています。会社に行かずに自宅で仕事をこなす。コロナ下で広がった働き方は、どう受け止められているのか。ネット調査で経験者1千人に聞いてみました。(朝日新聞記者・渡辺康人)
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テレワークの評価を3択で聞くと、「メリットの方が大きい」38%が、「デメリットの方が大きい」23%を上回り、特に女性から高評価でした。
一方、「自宅にテレワークに集中できる場所はありますか」と聞くと、「ある」66%に対し、「ない」は34%。集中できる場所が「ない」人に限ると、テレワークは「メリットの方が大きい」は27%にとどまり、「デメリットの方が大きい」34%の方が多い結果になりました。
地域別にみると、首都圏の1都3県で「メリット」が50%と突出していました。通勤時の「密」を避けるために推奨されたテレワークですが、特に、首都圏では「痛勤」を避けられるメリットが特に、大きかったのかもしれません。
メリットの中身についても聞いてみましたが、「通勤時間が不要になり、心に余裕ができた」が「あてはまる」人は62%に達しました。やはり東京では72%とさらに高い結果となりました。
ほかのメリットとしては「自分のペースで仕事が進めやすくなった」59%、「仕事上の人間関係のわずらわしさが減った」55%などが目立ちました。「家族との仲がよくなった」は全体では35%でしたが、子どもがいる人に限ると、42%と高めでした。
テレワークは、コロナ下でやむなく始めた緊急避難なのでしょうか。コロナ後も、働き方として「あり」なのでしょうか。調査時点(昨年12月)で実際にしている頻度と、コロナ後の希望とを並べてみます。
調査した昨年12月の時点で「ほぼ出勤」という人がほぼ半数いて、ピーク時の15%よりだいぶ増えています。一方、コロナ後も「ほぼ出勤」でいい、という人は26%。残る4人に3人は、頻度の差はありますが、テレワークを続けたい、という希望を持っていることがわかります。
では、テレワークは定着するのでしょうか。調査結果は、悲観的なものでした。
「定着する」との答えは、半数足らずでした。続けたいと思う割合よりはだいぶ少なめです。昨年12月時点で、テレワークの頻度は、ピーク時より減っています。
調査時で「ほぼ出勤」の人に限ると、75%は自分の職場で「定着しない」と答えていますので、テレワーク体制を縮小するか、やめていく企業が少なくない現実が反映されたのかもしれません。
働き手にとってのテレワークのデメリットも聞いてみました。
「オン・オフのメリハリがつけにくい」が64%、「仕事を頼んだり相談したりしにくくなった」が54%という結果でした。今回の調査では回答者の一部にインタビューもしたのですが、都内のシステム関連会社で働く男性(57)は「プログラムは家でも書けるが、人との交渉ごとは先輩の背中から学ばざるをえず、若手の成長が心配だ」と話していました。
また、「仕事ぶりがきちんと評価されるか心配だ」は47%、「押印や書類提出のためだけに出社したことがある」も34%いました。
都内の不動産会社に勤める女性(47)は、「仕事は会社でするもの」という意識が会社の上層部に多いのが問題だ、と指摘していました。「部長が毎日出社して、在宅勤務の部下を『今日も在宅かぁ……』とぐちっている。そんな様子を見ている社員も、上の評価を気にして出社しているのがアリアリです」
テレワーク普及に、まず必要なのは、管理職の意識改革なのかもしれません。
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