連載
#66 ○○の世論
東京五輪、本当にしたい? 〝二の足〟踏む世論、納得する条件は…
世代別に現れた〝やる気〟の差
新型コロナウイルスの感染拡大によって、2021年の夏に開催が延期された東京五輪・パラリンピック。朝日新聞社が2020年に行った全国電話世論調査を分析すると、コロナ禍に揺れる五輪の世論がみえてきました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
東京五輪・パラリンピックの開催は2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大にともなって1年延期され、2021年7月の開幕が予定されています。朝日新聞社は2020年の7月、10月、12月に行った全国電話世論調査で、東京五輪・パラリンピックについて同じ質問をしました。「来年(2021年)の夏に開催する」「再び延期する」「中止する」の選択肢から、1つだけ選んでもらいました。
2020年7月から12月にかけて、「来年(2021年)の夏に開催する」が33%→41%→30%とトーンダウンする一方、「再び延期する」32%→26%→33%、「中止する」29%→28%→32%がともにじわりと増えたのがわかります。
この変化には、新型コロナの感染状況と調査時期が関係していそうです。
7月は夏の「第2波」が始まったころの調査、10月は政府の観光支援策「Go To トラベル」の利用が本格化しはじめた時期の調査、12月は冬の「第3波」のなか「Go To トラベル」の一時停止が決まった直後の調査、といった違いがあります。
こうした状況が東京五輪・パラリンピックの予定通りの開催に二の足を踏むような世論につながったのかもしれません。
ただ、年代別に分析すると、全体とは違う五輪への思いが垣間見えてきます。
一連の調査からは、「来年(2021年)の夏に開催する」が高止まりしている40代、「再び延期する」に一番支持が集まっている18~29歳、「中止する」が毎回高まっている70歳以上、といった年代別の温度差がみられました。70歳以上の「来年(2021年)の夏に開催する」は12月調査で、もっとも低い24%でした。
内閣支持率の急落に直面する菅内閣は、東京五輪・パラリンピックの開催を「政権浮揚策」に位置づけています。ただ、新型コロナの感染が広がるなか、東京五輪・パラリンピックを開催すれば、世論の反発を呼ぶ可能性もあります。
というのも、新型コロナに対する政府対応を「評価する」か、「評価しない」かが、五輪の世論とも密接に関係しているからです。五輪のことを聞いた同じ調査では、新型コロナの政府対応への評価を聞いています。
新型コロナの政府対応を「評価する」と答えた人ほど、東京五輪・パラリンピックを「来年(2021年)の夏に開催する」と回答する人の割合が高く、「評価しない」と答えた人ほど、「来年(2021年)の夏に開催する」と回答する人の割合が低いことが読み取れます。
とはいえ、「評価する」と答えた人でも、「来年(2021年)の夏に開催する」が10月51%→12月42%に減り、「再び延期する」が10月27%→12月32%、「中止する」が10月18%→12月23%とじわりと増えています。
菅首相にとっては、東京五輪・パラリンピックの開催への支持を集めるうえでも、新型コロナの感染拡大を抑えることが最優先課題といえそうです。
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