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連載

#7 #半田カメラの巨大物巡礼

「コロナ大仏」の壮大すぎる計画 ネット上の「ネタ」に託した希望

不安に寄り添う、古くて新しいアイデア

「コロナ大仏造立」という、風変わりなプロジェクトについて、写真家・半田カメラさんにつづってもらいました
「コロナ大仏造立」という、風変わりなプロジェクトについて、写真家・半田カメラさんにつづってもらいました 出典: 風間天心さん提供

目次

新型コロナウイルスが全国的に蔓延(まんえん)し、各地で感染者が続出した2020年。インターネット上では、疫病退散を願って「大仏を建立しよう」という声が広がりました。実現不可能な「ネタ」として扱われていた、この言葉。いま、形にしようと力を尽くす僧侶がいます。「大きな物」を撮り続けてきた写真家・半田カメラさんに、その壮大な計画に関する取材から考えたことをつづってもらいました。

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読者から突然届いた一通のメール

「コロナ大仏」を知るきっかけとなったのは、この連載の記事でした。完成から24年後に閉鎖され、今年解体されることが決まった「悲劇の巨大観音像」とも呼ばれる、「淡路島世界平和大観音」への思いをつづったものです。

【関連リンク】好景気が生んだ「悲劇の巨大仏」台風で腹に大穴、廃墟に…数奇な運命

公開後しばらくして、読者の一人から、こんなメールが届いたのです。

「現在、私たちは大仏を造るためのプロジェクトを進めています。大仏についてお話をうかがえませんか」

送り主は、札幌市内で活動する僧侶・アーティストの風間天心さんという方でした。新型コロナウイルスの流行下、みんなの心を前向きにするためのシンボルとして、大仏を建立したい。そんな思いから、クラウドファンディングで関連費用を集めているといいます。

プロジェクトのウェブサイトにつづられていた、まじめで熱い思いに心動かされ、私はすぐに風間さんに連絡を取りました。聞けば、コロナウイルスの感染拡大で風間さんも、知人のアーティストたちも経済的に厳しい状況に陥っているとのことでした。

「不安が蔓延する中で、人のマイナス部分を目にすることも増えた」と話す風間さん。多くの人と何かをつくることで、マイナスのパワーをプラス方向に変換したい。そして人の心を救うのが仏教ならば、大仏を造るべきではないか――。

そんな結論に至り、友人のアーティストらとともにプロジェクトを立ち上げたのだと教えてくれました。

「コロナ大仏」の完成イメージ
「コロナ大仏」の完成イメージ 出典: 風間天心さん提供

育児と仕事に疲れたとき、大仏が見せてくれた夢

風間さんのプロジェクトは2段階に分かれています。第1弾はキャンピングカーに仏像を乗せ、全国を法要して回る「勧進キャラバン」のためのクラウドファンディングです。

これは僧侶が旅をしながら、寺や仏像を造るための資金を集める「勧進聖(かんじんひじり)」という仏教の文化にならったもの。各地で法要を行いながら、大仏造立の原資や、これから造る大仏に関する意見を集めます。

そして第2弾として、勧進キャラバンと平行し、再度クラウドファンディングで大仏造立のための支援金を募るという、聞けば聞くほどに壮大な計画でした。

私が風間さんからプロジェクトについて聞いたのは、全国に緊急事態宣言が出されていた今年5月。わが子が通っていた保育園が休園となり、自宅で育児をしながら働く日々を送っていた私は、心身ともに疲弊していました。

いつ終わるとも知れないウイルス禍。現在もまだ終息する気配はありませんが、当時は今以上に先の見えない状況でした。「大仏を造る」という目標は、私にとって「未来を思い描かせてくれる数少ない夢」のように思えたのです。

そんな思いを持った人が多かったのかもしれません。5月24日に募集を開始した第1弾プロジェクトは、目標額の300万円を上回る385万円(支援者336人)を集め、6月27日に終了しました。

そして9月、満を持して「勧進キャラバン」がスタートしたのです。

「勧進キャラバン」では、このトラックで全国の協力者の元を巡る
「勧進キャラバン」では、このトラックで全国の協力者の元を巡る 出典: 風間天心さん提供

仏像に思いを「貼り付ける」人々

キャラバンは「勧進・法要イベント」を行いながら日本各地を回ります。法要イベントは、等身大の仏像を会場まで運び、参加者にウイルスの影響で中止になったイベントのチラシや、ウイルスへの思いを書いた紙を貼り付けてもらう、という内容です。

北は北海道から、南は山口まで、全国32の都道府県で行われ、既に計47回を数えます(12月1日時点)。主な会場はお寺ですが、商店街などで実施することも。このうち10月に東京都内で行われたイベントに、私も足を運びました。

法要が始まると、参加者は仏像に思いを書いた紙を貼り付けていきます。一人ひとり真剣な表情で願いを書き入れ、貼り付け、手を合わせる姿が印象的でした。

「元の生活に戻りたい」という切実な願いもあれば、お子さんが描いた可愛らしいイラストといった微笑ましいものまで内容は様々。柔和なお顔の仏様は紙に覆われ、まるまると大きくなっていて、その大きさの分だけ、たくさんの人の思いが託されているのが伝わりました。

初めて風間さんに直接会って話を聞くと、この仏像は今後建立される大仏の内部に納められる「胎内仏」となるのだそうです。

大仏に支援者の名が刻まれることがありますが、自分が願いを書いた紙の貼られた仏像が安置される方が、より直接的と感じます。これから造られる大仏にも親近感がわくと思いました。

等身大の仏像に、チラシを貼り付けるマスク姿の女性
等身大の仏像に、チラシを貼り付けるマスク姿の女性 出典: 風間天心さん提供

大仏を「自然に還す」という考え方

ところで、「コロナ大仏」はどんなものになるのでしょうか。風間さんいわく、実際には大仏の「型」を造る計画だといいます。

型は組み立て式で、自由に移動させることが可能です。そのため北海道なら雪、砂丘のある鳥取なら砂と、地元由来の素材を空洞部分に入れ込めます。つまり、その土地ならではの大仏を生み出すことができるのです。

そして、いずれは型自体をどこかに安置し、大仏を「内部から拝める」ようにするのだそうです。これはまさに、私たちが自分自身の内面と向き合わざるを得なくなった、ウイルス禍の現状と符合するのではないでしょうか。

コロナ大仏には、もう一つ特徴があります。大仏の外枠部分に、動物や虫が巣を作れる環境を用意し、小さな山のようにするというのです。最終的には草木が生い茂り、生き物が遊ぶ場所となります。これには「自然との共生」という意味が込められているそうです。

私が以前取材した「淡路島世界平和大観音」は、管理する人がいなくなった結果、廃墟(はいきょ)と化してしまいました。風間さんたちの考え方は、コロナ大仏がそうした悲劇的結末を迎えるのではないか、という不安を打ち消すものでもあります。

大仏を愛する私にとっては、とても理想的な計画に思えました。

「コロナ大仏」は凸型の「枠」の形をとる予定で、外側は自然と一体化するような構造だという
「コロナ大仏」は凸型の「枠」の形をとる予定で、外側は自然と一体化するような構造だという 出典: 風間天心さん提供

「ネタ」が現実的な希望となる日

日に日にスケール感を大きくしている、大仏造立プロジェクト。果たしてどこまで実現できるのでしょうか。

目標の達成を目指し、日本各地を回る勧進・法要イベントは、これからも続いていきます。直近では大晦日に関西で、リモート参加可能な年越しイベントを計画中とのことです。

この取り組みに興味を持たれた方は「大仏を造る」という大きな夢の一端に関わってみてはいかがでしょうか。人と直接的に関わることが難しいウイルス禍においても、多くの人と達成感を共有することができるはずです。

東日本大震災をはじめとする数々の自然災害、そして新型コロナウイルスの感染拡大。こうした困難が起こるたび、ネット上では「大仏を建立しよう」という言葉がささやかれてきました。

これは古代の人々が、災害時に大仏を造ったことにならったものですが、現代においては、ある種の「ネタ」のように使われている節もあります。しかし、風間さんたちは実際にプロジェクトを立ち上げ、前に進めています。

壮大すぎる計画に思えるかもしれません。でも支援者の数が多ければ、成功につながる可能性は高まります。

大仏造立のための第2弾クラウドファンディングは、11月6日に始まり、現在も継続中です。インターネットが普及した現代ならではの、新しい手法で造られた大仏が見られる日を、楽しみにしています。

【関連リンク】「コロナ大仏」建立に予想以上の賛同者 追い込まれた僧侶の思い

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【関連リンク】コロナ大仏造立プロジェクト・公式ホームページ
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