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#206 #withyou ~きみとともに~

「1%でも可能性を残して」高校生の願い…特別な文化祭ができるまで

悔しいとき、どうしようもないとき、同じ思いをしている人がいると思います。

桐朋祭で掲げる横断幕の準備をする生徒たち=8月上旬
桐朋祭で掲げる横断幕の準備をする生徒たち=8月上旬

目次

新型コロナウイルスの影響は、学校の文化祭にも及んでいます。自分や周りの健康を守らなければならないのはわかっているけれど、学校生活でのかけがえのないイベントも大事にしたい。そんな気持ちに揺れる高校生がいます。「大人たちには1%でも可能性を残しておいてほしい」。受け入れがたい現実を前に、どんなことを考え、行動したのでしょうか? 文化祭にかける高校生の姿を追いました。

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6月の文化祭開催が延期に

話を聞いたのは、東京都国立市の桐朋高校で文化祭実行委員長を務める小杉優太さん(2年)です。
桐朋高校では例年、6月の週末3日間にわたり、来場者約1万人が訪れる文化祭「桐朋祭」を開催しています。ところが今年は新型コロナウイルスで学校が休校になったことで準備が間に合わず、6月の開催はできませんでした。生徒と教員とで話し合った結果、9月に開催を延期し、来場者を制限しつつオンラインを生かした形での開催を模索しています。

過去の実行委員会の先輩たちが桐朋祭のために努力している姿を見て、「自分もこんな風になりたい」と実行委員長になることを決めた小杉さん。「元々突っ走るタイプではあった」という小杉さんですが、「全部自分でやるのではなく周りといっしょにやってみては」という先生からの助言も受け、周囲の声にも気を配りながら、昨年9月、準備をスタートさせました。

実行委員長の小杉優太さん
実行委員長の小杉優太さん

全ての準備が「仮定」のしんどさ

準備開始直後は、テーマ決めから始まり、過去の文化祭の良かった点と改善点の洗い出し、展示やバンド、模擬店など参加団体の募集から始めました。

ところが年明け、「中国で新型のウイルスが流行しているらしいね」という話が実行委員会の中でも話題になりました。「その時点ではまだ軽い感じで話しただけ」と、この先、現在のような状況になることまではもちろん予想できていませんでした。

しかし、2月末になり状況は一変。全国の学校に休校が要請されました。
「いつもなら春休みに一気に準備を進めますが、一斉休校が決まったあたりから、雲行きが怪しいと感じ始めていました」と振り返ります。

休校中は毎日のようにオンラインでミーティングを重ねていましたが、小杉さんは「何も決まらない中なので『どうしよう』『本当にできるの?』と不安を伝え合うだけでした」。

4月になっても休校は継続。生徒と先生たちとの話し合いを経て「延期」が決定しました。
「4、5月が一番しんどかったです。先が読めない中で、何を話すにしても仮定の話でした」

「スキー部のかき氷」ができない

ただ、桐朋祭の目玉の一つである、飲食の模擬店については、この時点ですでに難しいという話に。「飲食の模擬店ができないのは、ダメージが大きかった」と小杉さんは振り返ります。桐朋祭の模擬店は、部活や有志団体ごとに出店しますが、「スキー部のかき氷とか、模擬店を出すことが伝統になっている団体も。『先輩たちがやってきたものができる』と楽しみにしていた人たちも多かった」

小杉さんたち実行委員会はそんな生徒たちの悔しさを知っているからこそ、WHOの報告書なども引用しながら「かき氷だけでもやらせてもらえないか」など、いくつも企画書を書き上げ教員側に提出するということもありました。それを受けた学校側も検討はしましたが、最終的には「マスクを外して食べ歩くことにつながる」という判断をせざるを得ませんでした。

顧問の近藤龍教諭からこの頃伝えられたのは、「できないことを増やした『劣化版』の桐朋祭ではなく、この時代だからこそできることをやろう」ということでした。

「模擬店を出せないダメージは大きかった」と小杉さん=写真はイメージです
「模擬店を出せないダメージは大きかった」と小杉さん=写真はイメージです 出典:pixta

「やる気」のギャップに苦しんだ

学校が再開した6月。実行委員会では、この頃から、授業が始まる前の時間を使って定期的に集まり、どんな桐朋祭にしていくかを頻繁に話し合うようになりました。

6月の最初の方では、実行委員会の中でもまだ、「こんな形でやる必要があるのか」などの意見もありましたが、オンライン開催の案なども出始め、「『もう一回準備していこう』と気持ちが切り替わっていきました」。

そして、実行委員会以外の生徒たちに対しても、今年の文化祭は形を変えて9月に開催することを発表。「例年通りとはいかないが、桐朋祭は9月に開催する」と伝えました。

しかし、返ってきた反応はここでも「例年通りのものでなければやりたくない」という声が大多数。
「男子校だし、女子が来るのを楽しみにしている生徒もいます」と小杉さん。入場を制限することについても反発はありました。

小杉さんは、「実行委員会の場合は、桐朋祭さえできればモチベーションがあがりますが、それ以外の生徒にとっては、やりたかったことが完全に吹っ飛んでしまっている子もいます」と、実行委員会以外の生徒たちの気持ちがついてこず、「前を向き始めている実行委員会と、そうでない生徒たちとのギャップがあった」という6月を振り返ります。

その一方で、「励みになった」というのが、ステージ発表などを予定し、休校中も自宅で練習していたバンドからの「やれるだけのことはやりたい」という声。「6月の最初は熱量が100分の5だったとしたら、いまは50くらいにまではなっています」と、学校全体での盛り上がりを期待しています。

悔しい、どうしようも無いとき、できることは

生徒間のモチベーションの差を埋めるために、実行委員会としては、開催への進捗を共有することを大切にしています。
文化祭の説明会の開催予定を知らせたり、ホームページの開設を報告したりする広報紙を、6月以降は毎週発行。中にはプリント1枚には収まりきらないほどの、小杉さんから桐朋祭への熱い思いがこもったメッセージを掲載したときもありました。

近藤教諭は「こういう状況下だから、生徒たち自暴自棄になって『もうやめた』って言っても全く不思議ではありませんでした」と、小杉さんたちの挑戦する姿に驚きを感じているそう。「学校としては、生徒たちの成長のために行事をするわけですが、その目的はすでに果たせていると思います」

現在は、ごく限られた来場者と生徒とがオフラインで文化祭を楽しむための工夫を検討しつつ、オンラインでの化学実験発表や、バンドなどのステージ企画をライブ配信することなどを企画しています。

一方で、全国をみると、文化祭の全面的な中止が決まっている学校もあります。
小杉さんは「悔しいとき、どうしようもないとき、同じ思いをしている人がいると思います。その人とその気持ちを共有してほしいと思うし、かたちとしてどうなるかはわからないけど、できることを常に考え続けて、芯を持ってやれれば、結果として良い方向につながるのではないかと思う」と話します。

桐朋祭の準備を進める生徒たち=8月
桐朋祭の準備を進める生徒たち=8月

申し訳なさの一方で心強さも

例年通りの学校行事開催が難しい状況が続く中、行事を楽しみにしていた子どもたち自身はどんな思いを抱えているのかが知りたくて、話を聞かせてもらいました。
このような状況でも、出来ることを探している高校生の姿にたくましさを感じる一方で、大人たちに手伝えるとしたらなにができるのかが気になり、小杉さんに聞いてみました。

すると、「可能性を残しておいてもらいたい」と一言。
「1%でも2%でもいいので、可能性を残して欲しい。0でさえなければ、そこからいくらでも広げられます。100にはならないかもしれないけど、大きくできます」

子どもたちの力に頼らざるを得ないことを申し訳なく思う一方で、「任せてよ」と言われているような心強さも感じました。

一方、桐朋高校では、宿泊行事の中止が決まり、運動行事に関しても内容を検討しています。楽しみにしていた行事の中止について、「受け入れないといけないし、(先生たちが)言っていることもわかる。だけど、やっぱり、なんでこの年なんだろうって感情がずっとある」と小杉さん。
近藤教諭は「生徒たちからモヤモヤした気持ちが消えるものではないと思うけど、その気持ちを共有することが大事だと思います。どうしても受け入れられない気持ちをどうにか拾っていきたいなと思っています」と話してくれました。

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