連載
#202 #withyou ~きみとともに~
コロナで文化祭どうなるの? 自力で全国調査した高校生の訴え
「思いを否定せず寄り添って」
新型コロナウイルスの影響を受け、文化祭や体育祭などの学校行事が中止になるケースが相次いでいます。そんな中、オンラインなど実施可能な文化祭の形を探るため、全国62校の高校の方針を調査をした高校生がいます。「結果的に文化祭が中止になっても、挑戦すれば残るものがある」。そして、先生に対しては「一緒に歩んでほしい」と訴えます。高校生の言葉から「今だからできること」について考えます。
調査を行ったのは、東京都多摩地域の高校の生徒会役員らで作る多摩生徒会協議会です。議長の章子昱(しょう・こいく)さんが主体となり、全国62校の高校の文化祭開催予定状況について調べました。調査結果によると、オンライン化に向けて動いている高校はおよそ4割。桐朋高校生徒会長でもある章さんは、「生徒会には学校との交渉材料にしてほしいし、『中止はどうしようもない』と考えている子には、開催できる可能性があることを知ってほしい」と話します。
章さんが文化祭の開催状況について調査しようとしたきっかけは5月。
12月までに実施予定の、学年を超えて集まって行う行事の中止または延期を求める、東京都の「新型コロナウイルス感染症対策と 学校運営に関するガイドライン【都立学校】」でした。
「文化祭や体育祭の開催が無理だと判断する学校が出る可能性がある」と感じた章さん。
実際、章さんが通う桐朋高校の文化祭実行委員会からも「なんとかやりたいけど、オンラインでやるにしても前例がないよね」という声は聞いていました。
「文化祭は、外部の人に生徒が活動を発信するために大切だし、文化部は特に全力をかけています」
章さん自身も化学部で、これまでの文化祭でも「実験ショー」を担当。来場者に、化学の楽しさを伝えるパフォーマンスを披露してきました。
「(3年生の文化祭は引退後なので)2年生が集大成のようなものです。それが中止になると考えたら悔しかった」
生徒個人としても、もし文化祭が中止になるとしたら「絶望する」と感じていた章さん。
他校の生徒会は、生徒の思いを受けて、これから文化祭の開催可否について教員と交渉することになると考えました。
「教員と交渉する上で、他校の判断を知ることは大事」と、交渉に必要なデータを集めることを決めました。
6月、章さんは、これまでに培ってきた全国の生徒会とのつながりを生かして、文化祭の開催予定などを、インターネットのアンケートフォームを使って個人的に調査。ただ、全国規模での調査をするため、途中から多摩生徒会協議会としての調査に規模を拡大しました。
調査では、開催する場合にはオンラインを導入するのかや、入場制限はあるのかなども調査しました。
重視したのはスピード感です。
「文化祭は例年、秋に開催される学校も多い。生徒会が教員と交渉するために生かせるデータを集めるにはスピードを重視したい」と、調査は6月中に終了させ、結果は7月3日に公表しました。
回答は、全国の62校の生徒会から集めることができました。
結果を受け、章さんは「オンライン化する学校は思ったより多かったです。ただ、個別に聞く限りでは公立高校のオンライン化は厳しい状況でした」。
調査では、詳細な開催方法についても自由記述で回答を募りました。すると、「ステージの出し物はYouTubeライブで配信」や「クラスごとの動画作成」などが検討されていることもわかりました。それらを見た他校の生徒会から「自分の学校でも採り入れられるかもしれない」と連絡が来ることもありました。
章さんは「生徒の成長を目指すのが学校の役割だと思う。今回のような事態で未知の壁に挑戦するのは、成長を生むきっかけです。挑戦した上で失敗したり、文化祭が中止になったとしても、残るものは必ずあるはずです」と、学校には文化祭開催のため試行錯誤する生徒の思いを大事にしてほしいと訴えています。
先生たちに求めたいのは「一緒に歩むこと」。
「先生たちも、たくさんの生徒に対応しなくてはいけなくて、大変だと思います。でも、生徒たちはいまできることを必死でやっています。その思いを否定せず寄り添ってくれる先生が増えるといいなと思います」
今回の調査は文化祭に限ったものでしたが、中止の可能性がある学校行事には、他にも体育祭や修学旅行などがあります。
章さんは、コロナ禍における学校行事全般のあり方として、「新しいものを求めにいくべき」と提言します。
「体育祭や修学旅行は、人が集まることになるので、この状況での中止は仕方ないところはあります」とした上で、「それらを(従来通りもしくはかたちを変えて)できるようにしよう、という動きも大事だけど、『いまだからこそできること』もあると思うんです」
これまでの学校行事である文化祭や体育祭、修学旅行以外に、この状況だからこそできる新たなイベントを考える動きを生み出したいと考えています。
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