連載
#38 ○○の世論
東京五輪、「来年も無理そう…」世論調査に現れた「都民の本音」
3カ月でガラリと変わったムード
コロナ禍の影響で来夏に延期された東京五輪・パラリンピックの開催の是非が、東京都知事選の大きな争点になっています。投開票日を前に、朝日新聞社が6月下旬に東京都民を対象に実施した世論調査(電話)で都民の意見を聞くと、「来年も無理なのでは……」という都民の思いが垣間見える結果になりました。(朝日新聞記者・君島浩)
都知事選では、五輪・パラの中止や、4年後への再延期を訴える候補もいます。その争点に合わせて、「東京オリンピック・パラリンピックをどのようにするのがよいか」を3択で聞きました。
都民の意見は分かれました。政府や都がめざす来夏開催に賛同する人は4割に届きませんでした。開催地として、期待も大きいと思っていたのですが、「中止」が3割を超えたのは意外でした。
今年3月の都民調査でも、選択肢は違いますが、同じ質問をしています。
3月調査の実施時期は、五輪・パラの来年夏への延期が決定する直前でした。状況が変わっているとはいえ、この3カ月で中止ムードが広まっている様子はわかります。
6月下旬の調査の結果を詳しくみてみます。
男女別にみると、男性は「来夏に開催」34%、「再延期」25%、「中止」36%と、「中止」がやや多めでした。一方、女性は「来夏に開催」37%、「再延期」31%、「中止」26%で、「再延期」がやや多い傾向が見られました。
職業別では、主婦層の42%が「来夏に開催」と答えましたが、自営業者層では「来夏に開催」は30%にとどまりました。
年代別でも若年層と高齢層では温度差がありました。
若年層は、「来夏に開催」を期待する声が比較的多く、中堅層は意見がみごとに分かれました。高齢層では「再延期」が2割と少ない一方で、「中止」が4割近くになりました。
支持政党別にみると、安倍政権を支える自民支持層では「来夏に開催」が48%と5割に迫るのに対し、無党派層は「来夏に開催」が32%、「再延期」が31%、「中止」が32%と並びました。立憲民主支持層や共産支持層は「中止」が半数程度を占めます。
23区を東部、中部、西部に分け、多摩・島しょ部と合わせて計4つの地域に分類し、傾向に違いがあるか、分析してみました。
23区中部は、「来夏に開催」が4割を超えました。メインスタジアムや競技会場、選手村などが集中する地域なだけに、期待が大きいのかもしれません。ただ、「中止」も4割近くになっています。
水泳の競技会場などがある湾岸エリアを含む23区東部も「来夏に開催」が4割を占めました。こちらは「中止」は4人に1人と、少なめでした。
一方、23区西部では「来夏に開催」は3割で、「再延期」「中止」とほぼ同数でした。中部や東部に比べると、冷めているといえそうです。
新型コロナの世界的な収束は見通せません。5日に選ばれる新知事にとって、最大の課題の一つが、東京五輪・パラリンピックになるのは間違いないでしょう。都民の意見が割れているだけに、どう理解と協力を得ながら、かじを取っていくのか。手腕と力量が問われます。
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