体重115kgという高度肥満の状態から、40kgのダイエットに成功した記者。「さらなる体型変化を」と目論んでいたタイミングで起きたのが、頼りにしていたスポーツジムの営業休止でした。
stay home 期間が続き「コロナ太り」に悩む声も多く聞かれる中、先の40kgダイエットの教訓を活かして食事管理とトレーニングによるボディメイクを継続。なんとかさらに4kgの減量をすることができました。
スポーツジムにはまだ休業要請がかかる中、どのように健康を維持するべきか。これまでの専門家取材と自身の経験からまとめます。(朝日新聞デジタル編集部・朽木誠一郎)
まずは進捗から報告します。緊急事態宣言後、ほとんどのジムが閉鎖され、途方に暮れたのが4月8日。記者の体重は75.7kg、体脂肪率は15.7%でした。体脂肪率33%だった115kg時代から見た目には大きな変化がありますが、服を脱げば下腹がぽっこりしている状態。5月末までに体重を切りよく70kg台にして、これを解消することを目標にしました。
そして緊急事態宣言下、最終日となった5月25日、日々の増減を繰り返しながらも脂肪量は落ち、体重は71.7kg、体脂肪率は12.3%に。筋肉量を維持したままダイエットができたようです。実際、陸上競技に打ち込んでいた学生時代ぶりに、これまで脂肪に埋もれていた腹筋のラインが見えてきました。
家トレでも「コロナ太り」を防ぎ、ボディメイクをすることは十分に可能。都道府県によって、特に記者が住む東京ではもう少しスポーツジムに営業の自粛要請が続く予定の中、これは自信のつく検証結果でもありました。では、具体的にどのような指針でボディメイクを進めたのか、以下に紹介します。
とはいえ、取り組んだことはいたってシンプル。「食事をセーブしながらジョギングと筋トレをする」という、それだけです。ただし、そのために1カ月あたり2.5kgの脂肪を減らすための消費/摂取のエネルギー計算と、それを継続することがイヤにならないための工夫をしています。
肥満症の治療のために参照される『肥満症診療ガイドライン2016』には、「食事療法を必須とし、運動療法を併用すると効果が高まる」と記載されています。なぜかというと「食事の方が圧倒的にパワーがある」から。これは北里大学北里研究所病院の内分泌・代謝内科部長で糖尿病センター長の山田悟医師を取材したときの言葉です。
「私たちは1週間に20回くらい食事をするわけですよね。一方、一般的な社会人であれば、運動はがんばっても週1〜2回に留まるのではないでしょうか。頻度からしても、食事を改善する優先度が高いことは明らかです」(山田医師)
基本的に、体重は摂取エネルギーと消費エネルギーのバランスにより決まるものです。しばらく外出自粛をしていたのですから、身体活動量が下がることは避けられません。消費が減れば、摂取もある程度、減らさない限り、太るのは当然でもあります。
何をどのくらい食べるか、どう食べるかは、『カロリーママ』などのダイエットアプリにより設定しました。目標体重になるにはどれくらい食事をセーブするべきか、さらにメニューを選ぶとその日に摂取したエネルギーがわかるので、非常に便利です。私の場合は2000kcalちょっとが目安でした。
さて、消費エネルギーに直結するトレーニングですが、内容はジョギングと自重トレーニングにしました。順天堂大学医学部代謝内分泌内科学講座教授の綿田裕孝医師への取材によれば、「運動療法において、メニューの主体になるのはエネルギー消費量を高めやすい有酸素運動」です。
加えて、「レジスタンス運動、いわゆる“筋トレ”は筋肉量を増やすことによって基礎代謝を増やすため、トータルのエネルギー消費量を増やす」(綿田医師)……とのことなので、ジョギングを主体にしつつ、筋トレも併せておこなうことにします。
筋トレをするにあたっては、NHK『みんなで!筋肉体操』の指導者・谷本道哉さんを取材したときの「自重トレでも本格派の筋肉を存分に追い込むことは可能」というメッセージを心の頼りに、器具を使わない自重トレーニングに取り組みます。具体的には腕立て伏せ、腹筋、スクワットです。
「個人差が大きいこと、ケガのリスクはあるが、運動については『やればやせる』と言うことはできる」(綿田医師)もの。そこでケガに注意しながら、ジョギングは週5日1回30分〜120分の範囲で、筋トレは補助的に3日に1回のペースでおこなうことに。
運動にあたっては、Garminなどのアクティビティ・トラッカーを装着し、1回の消費エネルギーを測定するようにしました。ダイエットをする上では、食事も運動も「食べていないつもり」「動いたつもり」になるのがもっとも怖いことです。それを客観的に、定量化できるアプリやガジェットは非常に便利です。
2.5kgの脂肪を減らすために消費するべきエネルギーをあらためて計算してみます。消費したいエネルギーは、含まれる水分を除き、理論的には1万8千kcalほどになります。これを30日で達成するには、1万8千kcalを30で割るので、「1万8千÷30=600」となります。
この600kcalが、普段より多く求められる1日の消費エネルギーの量になります。消費エネルギー(使う分)から摂取エネルギー(入る分)を引き算したものが1日あたり600kcalずつ多くなればいいということ。記者個人の基礎代謝量や身体活動量を加味して辿り着いたのが、週5日のジョギング(+筋トレ)と1日2000kcalちょっとの食事制限。つまり、普段の「5分4」の食事量で平日は運動を続けるという結論です。
実際にこの方針に沿って取り組んでみると、筋肉量を維持したまま2カ月弱で約4kgの減量と、かなり理論値に近い結果になりました。一方で、この「方針に沿って取り組んでみる」というのが、実際のダイエットでは何よりも難しいことは、経験者ならみんな知っていることでしょう。
それをするために、記者が心がけていたのが、SNSへの投稿です。東京大学院医学系研究科准教授で健康格差対策を専門にする近藤尚己医師は「SNS上のソーシャルインフルエンスも、現実世界の人間関係同様、健康に大きな影響を与える」とします。
「例えば『ダイエットします』と宣言することで力を得るコミットメント効果という心理学的効果があります。また、ダイエットする様子を投稿して“いいね!”をもらうことをモチベーションにするうちに『どうすればより“いいね!”がもらえるかな』とさらに努力するようになるのは“ゲーミフィケーション(ゲーム化)”の一種で、ナッジとしても有効です」(近藤医師)
ナッジとは「健康になることを後押しする」要因。ダイエットのように、自分の意志だけでは上手くいかないことがあるチャレンジに必要なものです。他にもLINEで友人たちとその日の食事内容やトレーニング内容を報告し合うグループを作るなど、ダイエットをハック(攻略)する方法を駆使して臨みました。
こうして記者は stay home 期間でも「コロナ太り」することなく、なんとか体型を理想に近づけることができました。でも、やっぱり、「スポーツジムに行きたい」という想いは募ります。ジムであればより効率的にトレーニングができるし、一人で黙々とするトレーニングはそれ自体もストレスになるからです。
緊急事態宣言が全国で解除される一方、都道府県によってはスポーツジムへの営業休止要請が続くところも残ります。堂々とジムに行ける日が早く来ることを願いつつ、しばらくはこのように家トレでしのぐしかないのも現実。できるだけポジティブに、また決して無理をしないように、健康管理をしていきたいものです。
トレーニングを継続したいけれど、どうすればいいのかわからなかった方、外出自粛で太った方がいれば、このような記録が少しでも役に立てばうれしいです。