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ジョージア臨時代理大使に見つかった!フジパン製ハチャプリの運命

シルクロードを越え実現した、異文化の融合

黒海沿岸の国・ジョージアの郷土食「ハチャプリ」を再現した惣菜パン。この商品について、同国の臨時代理大使が投稿した好意的なツイートが、話題となっています
黒海沿岸の国・ジョージアの郷土食「ハチャプリ」を再現した惣菜パン。この商品について、同国の臨時代理大使が投稿した好意的なツイートが、話題となっています 出典: フジパン提供

目次

黒海沿岸の南コーカサス地方に位置する国、ジョージア。現地の代表的な郷土食「ハチャプリ」をめぐるツイートが注目を集めています。きっかけは日本の製パンメーカーが、この料理を再現した商品を売り出したこと。ツイッター上に出回った関連画像が、同国のティムラズ・レジャバ駐日臨時代理大使(32・@TeimurazLezhava)の目に留まり、拡散されたのです。「先祖に伝えたい。ハチャプリは日本にたどりつき、販売されているのだと」。意外な形で深まった両国のつながり。その一部始終について取材しました。(withnews編集部・神戸郁人)

「チーズが入ったパン」まさかの変化

ハチャプリとは、チーズが入ったパンのこと。ジョージア語では「ხაჭაპური(ხაჭა・khacha=チーズ、პური・puri=パン)」とつづります。宴会で振る舞われるほか、ピクニックへ行くときサンドイッチ代わりに持参するなど、地元の人々にとって「国民食」とも言うべき存在です。

ジョージアで人気の郷土食「ハチャプリ」。チーズ入りのパンで、写真はパイ生地を使ったもの
ジョージアで人気の郷土食「ハチャプリ」。チーズ入りのパンで、写真はパイ生地を使ったもの 出典: 神戸郁人撮影

4月22日、この食べ物の名を冠した惣菜パンの写真が、ツイッター上に投稿されました。製パン大手のフジパン(名古屋市)が手掛けた「ハチャプリ~たまご~」です。

柔らかいパンの上に、マヨネーズ入りの卵サラダや、チーズが載った一品。ジョージアで一般的なハチャプリは、おやきのような形だったり、パイ生地に包まれたりしており、ずいぶん見た目が違います。

フジパンが販売している、ハチャプリを再現した惣菜パン
フジパンが販売している、ハチャプリを再現した惣菜パン 出典: フジパン提供
これに反応したのがレジャバさんです。同日夕方、画像を掲載したツイートを引用し、ユーモアたっぷりに、こうつぶやきました
これはハチャプリなのか、それともハチャプリのふりをしたハチャフリなのか、それとも単にそれぶっているハチャブリなのか。(中略)


実際に探しに出て真相に迫ります。興味大です。
ティムラズ・レジャバ駐日臨時代理大使のツイッター(@TeimurazLezhava)
ジョージアの民族衣装「チョハ」を身につけポーズをとる、同国のティムラズ・レジャバ駐日臨時代理大使
ジョージアの民族衣装「チョハ」を身につけポーズをとる、同国のティムラズ・レジャバ駐日臨時代理大使 出典: 在日ジョージア大使館提供

「感動与えてくれて、ただただ感謝」

レジャバさんは約3時間後、自ら調達したとみられる、惣菜パンの画像をツイートしました。

長机の上に並ぶ、お皿に載った3個のパン。傍らには、「ハチャプリ」の記載があるパッケージ、日本とジョージアの国旗が。そして、次のような言葉を添えています。

ジョージアの先祖に伝えたいです。ハチャプリは日本にたどり着き、このような発展した形で販売されているのだと。

このような感動を与えてくれたフジパンにただただ感謝申し上げます。(後略)
ティムラズ・レジャバ駐日臨時代理大使のツイッター(@TeimurazLezhava)

更に、赤地に白抜き文字で書かれた「フジパン」のロゴが、両国旗と同じ配色であることにも触れるのです。

「シルクロードを通じ、ハチャプリは極東にたどり着いた。壮大なロマンだ」「母国の文化への誇り、異国の文化への経緯にあふれている」。コメント欄には静かな感動が広がりました。30日時点で「いいね」は1万を超え、リツイートも5300回に上っています。

大事なのは、見た目の違いじゃない

レジェバさんはジョージアの首都・トビリシ出身。幼少期から日本、アメリカを行き来しました。早稲田大を卒業後、2018年に母国の外務省に入省し、昨年7月から駐日代理大使を務めています。

レジェバさんにとってハチャプリは思い出深い料理です。家庭ではジョージア中部・イメルリ地方原産のチーズを、ふんだんに使ったものを口にしていたとか。日本では入手できない種類のため、カッテージチーズなどで作る方法を編み出し、自身のYouTubeチャンネルで紹介しています。

一方、今回話題になった惣菜パンについては、もともと全く知らなかったそうです。画像を目にし、外見が母国のものと異なると気付いたものの、「そのことは大事ではない」と考えたといいます。

「ハチャプリは地域ごとに独自の進化を遂げました。たとえば黒海沿いのアチャルリ地方では、チーズで満たした船型のパンに生卵を載せ食べます。色々な形や食べ方が楽しめ、エンターテイメント性が高いメニューと言えるでしょう」

「惣菜パンは、いわば『フジパン風』ハチャプリ。店頭に並べるのに最適なスタイルという点で、日本の風土と合っているように思います。そして何より重要なのは、ジョージアの文化に着目してくれたことなのです」

アチャルリ地方のハチャプリ。船のような形をしたパンの中をチーズで満たし、生卵やバターを溶かして食べる
アチャルリ地方のハチャプリ。船のような形をしたパンの中をチーズで満たし、生卵やバターを溶かして食べる 出典: 神戸郁人撮影

ジョージア料理は日本人の舌に合う

フジパンによると、惣菜パンは今年4月から、関東エリア限定で販売されています。社員の一人が、ベーカリーで出会ったハチャプリに目を付け商品化しました。価格は121円(税込み)。アチャルリ地方のものを参考にしつつ、機械で大量生産できるよう、生卵ではなく卵サラダを採用しています。

レジェバさんは、ツイッター上で商品の情報を得た後、同社に取り扱い店舗について照会。東京の大使館近くにあるスーパーで買い求めました。古里の味が、遠い異境にまで伝わっているーー。その事実に胸を打たれ、一連のつぶやきを投稿したそうです。

アジアとヨーロッパに挟まれたジョージアは、様々な文明の影響を受けてきました。「ヒンカリ」と呼ばれる、大きな小籠包(しょうろんぽう)のような料理や、植物の芽の漬物「ジョンジョリ」といった、多様な食文化が花開いた地でもあります。

小籠包のような見た目が特徴の「ヒンカリ」。もちもちとした皮は、肉まんにも似ている。すぼまった先端部分をフォークで刺し、中の肉汁をすすりつつ食べるのが一般的
小籠包のような見た目が特徴の「ヒンカリ」。もちもちとした皮は、肉まんにも似ている。すぼまった先端部分をフォークで刺し、中の肉汁をすすりつつ食べるのが一般的 出典: 神戸郁人撮影

最近では牛丼チェーンの松屋が、鶏肉やニンニクを使った郷土食「シュクメルリ」を提供し、好評となりました。レジェバさんは、こうした状況から「地元の味覚についてもっと伝えたい」と意気込んでいます。

「ジョージア料理は、日本人の舌に合っていると言われます。その奥深さを、多くの人々に知ってもらい、新しい形に進化させて欲しい。これから、頑張っていきたいですね」

約10年前、まだ「グルジア」と呼ばれていた同国を、私も観光で訪れました*註。現地の食堂で、ウォッカをあおりつつ食べたハチャプリのおいしさは、今も忘れられません。豊かなジョージア文化が、日本でも存分に味わえるようになる日を、心待ちにしています。

*註:旧ソ連に属したジョージアは、2008年にロシアと軍事衝突。ロシア語由来の国名である「グルジア」への反感が強まり、各国に呼称変更を要望、日本も15年4月に対応した。(参照・「グルジア」改め「ジョージア」に 国名表記を変更=2015年4月15日付 朝日新聞)
ジョージアの首都・トビリシの街並み
ジョージアの首都・トビリシの街並み 出典: 神戸郁人撮影
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