新型コロナウイルス感染拡大を防ぐため、自宅で過ごす時間が長くなった人が増えています。かくいう私も4月はほぼ毎日在宅勤務で、仕事と私生活の切り替えがうまくできずに悩んでいますが、仕事と私生活のオン・オフを切り替える手段の一つに、飲み物があります。ハーブティーやお茶の販売を手がける会社に取材すると、気持ちの切り替えに飲み物の力を借りている人が少なくないことがわかりました。
ハーブティー「想像以上に伸びている」
「外出自粛によるストレスの緩和に用いている傾向があります」
ハーブティーやアロマを取り扱うハーブ専門店「enherb(エンハーブ)」を全国に35店舗展開する、株式会社コネクトの弥富洋子社長はそう話します。
エンハーブの実店舗は、店舗を構える百貨店や商業施設などが新型コロナの影響で休館するなどしているため、4月下旬までにすべての店が一時閉店しています。そのため、インターネット通販での数字を元に現状を説明してもらいました。
エンハーブのハーブティーは、その目的ごとに、「ストレス、リラックス」「免疫サポート」「美容、女性バランス」「ダイエット」の4つに分けられます。3月は、いずれのカテゴリーも、コロナウイルスの影響が出る前の1月との比較で150%前後伸びています。
弥富さんは、「実店舗の利用者が通販に流れている影響はある」としつつ、「想像以上に伸びている」と驚きます。

気分転換のため飲む人も
特に伸びが大きかったのは、「免疫サポート」のカテゴリーで、1月比で259%となっています。
風邪対策などでよく飲まれる「エキナセア」入りのブレンドティーが人気だそう。「新型コロナ対策として免疫力を高めたいというニーズがあるのだと思う」(弥富さん)。
また、ネット通販でのハーブティー全体の消費が増えていることについては、「自分を落ち着かせたり、気分転換のために飲むようになった方もいらっしゃると思います」。
また、時間的な余裕ができたことがハーブティー需要につながった可能性も指摘します。「(在宅勤務で)通勤がなくなり、時間的余裕が生まれ、『じゃあお茶でもいれようか』という余裕ができるようになったのかもしれません」

時間的余裕ができ「一手間」
時間的な余裕が、新たな需要につながっているとの指摘は、紅茶業界にも現れているようです。
日東紅茶などを取り扱う三井農林によると、ティーバッグ、パウダー、リーフティーに分けられる製品のうち、ポットや茶こしなどを使って飲むリーフティーの需要が3月になって伸びているといいます。同社マーケティングを担当する阿部慎介さんによると、「普段はティーバッグやパウダー製品などの簡便なものが売れ筋ですが、市場規模がそんなに大きくないリーフティーの3月の伸びが大きい」といいます(以下、売り上げデータの出典はインテージSRI)。

それに連動してホームページ上でのアクセス数が伸びたのが「紅茶のおいしいいれ方 ロイヤルミルクティー」のページ。前年同期比で164.1%の伸びをみせました。
阿部さんは「普段行っているカフェに行きづらくなっている人が、外で飲むようなしっかりした味わいのあるミルクティーを飲みたいという需要が出ているのではないか」と分析します。
また、「家にいると一手間かけたくなるという気持ちも後押ししている部分があるのでは」と付け加えます。

生活のメリハリ→「特徴ある商品」伸びる
また、「生活のメリハリをはっきりさせるための飲み物」の売り上げも伸びました。
「しょうが紅茶」は前年比124.7%、「アールグレイ」は前年比135.5%、カフェインレスのアールグレイは前年比159.2%でした(いずれもティーバッグ製品)。スタンダードな日東紅茶の商品、「デイリークラブ」の売り上げは、ほぼ横ばいだったそうです。
「スタンダードな『ながら飲み』として飲むものではなく、生活のめりはりをはっきりさせるための『特徴のある商品』が伸びている傾向があります」

「切り替えたい」気持ちに「時間的余裕」があわさって
コネクト社の弥富社長は「大変な状況にある人たちがいる中ではありますが、ストレスを抱えながら日々過ごしている人たちが、新しい生活スタイルに変わっていくきっかけになるのかもしれません」と語っていましたし、三井農林の阿部さんも、「こんなときだからこそ、やることなすことに意味や楽しみをもたせることができればいいのかもしれない」と話し、最近はまっているという「紅茶豚」(豚肉を普段通り調理する前に紅茶につけることで柔らかくなったり臭みがなくなる)をオススメしてくれました(紅茶豚を紹介するページはこちら)。
「オン・オフを切り替えたい」というニーズと「時間的余裕が生まれた」という状況がかけ合わさって生まれた、新たな需要を実感しました。