連載
#21 ○○の世論
小池知事、がくんと落ちた改革への期待「支持の理由」に起きた変化
東京都の小池百合子知事が、2020年夏に1期目の任期を終えます。前回2016年の知事選、翌2017年夏の都議選で、「百合子グリーン」の旋風を巻き起こし、古巣・自民党との戦いを圧勝で制した小池さん。都民はいま、どんな思いで小池知事を見ているのか。聞いてみました。(朝日新聞記者・石本登志男)
まず小池知事の支持率の推移をみてみます。
4年前の2016年夏、自民党の衆院議員だった小池さんは、自民党の推薦が得られないまま知事選への出馬を強行。「都政の大改革」を訴え、自民推薦候補らを破りました。
2017年夏の都議選では、「都民ファーストの会」を立ち上げて、都議会第1党の座を自民党から奪います。その勢いを駆って、2017年秋の衆院選で「希望の党」を立ち上げましたが、こちらは惨敗でした。
支持率の推移からは、都議選や衆院選を経て、熱狂が冷めていく様子がみえます。就任1年目は74%の高い支持だったのが、1期目の折り返しとなる2018年7月調査では49%まで落ち込みました。直近の2020年3月の調査では50%でした。
これまでの都知事の支持率は、石原慎太郎さんの就任3年後で78%(2002年4月調査)、猪瀬直樹さんの就任半年後で52%(2013年6月調査)でした。単純には比較できませんが、小池知事の50%は、高水準とは言えないようです。
支持の理由にも変化がみえます。
2017年4月の最初の調査では「改革の姿勢や手法」を挙げた人が45%で最多でした。一方、2020年3月の調査では「これまでの知事よりもよい」の39%が最も多く、「改革」は27%に減りました。支持層の中でも、小池知事への改革への期待度は下がり、消極的支持が増えていることがうかがえます。
また、支持率を男女別にみると、最初は男女で差がなかったのが、2017年都議選の前から女性の方が高い傾向が続きます。「ガラスの天井」に挑む姿が、女性から一定の支持を受けているのかもしれません。
2020年3月の都民調査では、小池知事の2期目の「続投」を望むかどうかも聞きました。
続投を望む声は、45%。「交代派」よりは多いものの、過半数には達しない。微妙な数字です。支持政党別にみると、自民支持層でも、無党派層でも、大きな違いは見られませんでした。国政の野党では、立憲支持層は、続投派が多いのに対し、共産支持層では交代派の方が多いという対照的な結果になりました。
都議会で自民党は小池知事と対立を続け、今夏の知事選で対立候補の擁立を模索してきました。都民はどうみているでしょうか。
結果は、真っ二つに割れました。自民支持層に限っても、「立てるべきだ」が49%。こちらも微妙な数字です。これでは、自民党が対立候補の擁立を断念せざるを得ないのもうなずけます。
知事の最も評価する点を4択で聞くと、「発信力」が49%と最も多く、続いて「特にない」の32%。「改革」は10%、「政策」は6%にとどまりました。
~「東京を変えてくれる」という当初の熱狂はしぼんでしまったが、アピール力への期待は残っていて、今すぐ交代してほしいというほどではない~
世論調査から浮かんでくる、都民の小池知事への今の思いは、そんなところかもしれません。
そして今後の対応で注目される、新型コロナウイルス対策についても聞きました。
調査したのは3月21、22日。小池知事が緊急の記者会見を開いて「感染爆発の重大局面」と訴える前ですが、知事の支持層を含め、都民の評価は総じて「辛口」でした。この感染症への対応は、小池知事の今後の支持の行方を左右する重大な要素となりそうです。
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