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〝溺れた経験がある人〟に聞いた「ヒヤリハット」足がつってピンチに
親が目を離したすきに子どもが…

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親が目を離したすきに子どもが…
毎年700人以上が犠牲となり、あとを絶たない海や川での水難事故。6人に1人が溺れた経験があるとするデータもありますが、どのような状況で溺れてしまうのでしょうか? 日本財団などが進める「海のそなえプロジェクト」の調査で、溺れにいたる〝ヒヤリハット〟が見えてきました。
2024年5月、「海のそなえプロジェクト」が全国の15〜70歳の男女1万1829人を対象に行った調査によると、約6人に1人(17.0%)が溺れた経験があると答えました。そのうち、約半数がプールで25メートル以上泳げる人だったそうです。
そもそも「溺れ」とはどのような状況をさすのでしょうか。
調査で溺れた経験があると回答した人たちは、「大量の水を飲みこむ」「呼吸が乱れてパニックになる」「自力で陸や地上に戻れない」状況を「溺れ」と捉えていました。
医学的には、気道や肺に水などの液体が入り込んで窒息してしまうことは「溺水(できすい)」、溺水によって亡くなることは「溺死(できし)」と分類されます。
しかし、「溺れ」の定義については、行政などの水難事故に関する統計でも定まっていなかったといいます。
そこで海のそなえプロジェクトでは、公的機関が救助に入ったり、命に関わったりするケースを「重度の溺れ」、公的な救助を求めず陸に戻れたケースを「軽度の溺れ」と分類しました。
その上で、「軽度な溺れ」の状況に着目。報道されるような「重度の溺れ」の場合は事故に至るまでの状況が明らかになりますが、水難事故の統計に上がってこない「事故未満の体験」について溺れにつながる〝ヒヤリハット〟を分析したといいます。
ヒヤリハット調査は、2024年8月に「自分もしくは同行者が海で溺れそうになった経験がある」全国の10~60代の男女1002人を対象に行われました。
溺れそうになった状況でもっとも多かったのは「波にまかれた」(36.0%)。次いで「陥没、急深にはまった」(19.0%)、「離岸流に流された」(15.1%)となりました。
溺れた経緯を自由記述で尋ねたところ、「浮き輪」「深い・足がつかない」という言葉が多く見られたといいます。
8歳のときに溺れた経験があるという大阪府の女性(60代)は、「浮き輪をしていたので安心していたが、自分の思う方向へ進むことができず、父親からどんどん離れていって怖かった。それ以降は浮き輪があっても水が怖くなってしまった」と回答。
愛知県の女性(20代)は、「小学校低学年の頃、『浮き輪があるから大丈夫だろう』と、足がつかないほど深い海の方へ行った。 同行者が浮き輪を持ってバランスを保ってくれていたが、突然放し、自身もパニックに陥ってしまったため、溺れかけた」と答えていました。
自身の子ども時代を振り返る回答のほか、保護者のヒヤリハットも寄せられました。
「スマホに夢中になっていたら、子どもが深いところまで行き溺れかけていました」(岐阜県、男性、30代)
「子どもから目を離しているすきに引き潮にもっていかれそうになった」(千葉県、男性、40代)
いずれも子どもは小学生以下でした。調査担当者は「監督者の不注意のうちに、波にさらわれたり、急に足がつかなくなるほど深くなったり、浮き輪やボートが転覆したりするといった危険性がある」と指摘します。
一方、子どもと一緒に遊んでいて溺れそうになった経験を寄せた人もいました。
「波打ち際で子どもと一緒に遊んでいたら高い波が突然きて、私も子どもも飲み込まれて水の中で回転して海の奥に引きずりこまれた」(宮崎県、女性、40代)
大人のヒヤリハット経験では、泳いでいる間に足がつったという回答もありました。
20代の頃に溺れそうになったという愛知県の男性(50代)は、「入る前に準備運動をあまりせず、沖まで出たら足がつって溺れかけた」と回答。
沖縄県の男性(40代)も、「飲酒した上で準備体操もせずに海に入ったとき、急に足がつって動けなくなり、溺れかけた」と20代の頃を振り返っていました。
「海のそなえプロジェクト」では、ヒヤリハット調査で集まった具体例を溺れる前の「危険の予兆」として100パターンに整理し、「これで、おぼれた。『おぼれ100』」としてまとめました。
「おぼれ100」は、溺れ経験者の「事故未満の体験」がイラストで描かれ、溺れに至った状況や溺れないために必要な情報が盛り込まれています。
Instagram(@obore100)などで発信し、引き続き溺れの経験を集めていくそうです。
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