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#9 ○○の世論
首相が気にする「1月の支持率」 下がるとヤバい数字の意味
毎月のように報道される内閣支持率ですが、歴代政権が気にしてきたのが「1月の支持率」です。過去の世論調査の数字を振り返ると、1月の内閣支持率の下落と政権の命運がリンクしていることが見えてきます。歴代最長の通算在職日数を伸ばし続ける安倍晋三首相ですが、支持率は昨年末に40%を切りました。内閣支持率と政権の歴史を振り返ります。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
報道機関各社が昨年12月に行った世論調査の内閣支持率を見てみましょう。
朝日新聞の世論調査で、安倍政権の支持率が40%を切ったのは森友・加計学園問題で政権が苦境にあった2018年8月以来のことです。
支持率が下がった背景には、昨年11月の臨時国会で指摘された「桜を見る会」をめぐる問題があります。
昨年12月の世論調査では、同会をめぐる首相の説明が十分かどうかについては「十分ではない」の74%が「十分だ」の13%を大きく上回りました。
安倍内閣の支持層でも不満がたまっているようで、「十分ではない」は内閣支持層で61%、自民支持層でも67%に上りました。
ところが、与党内には「年が明けたら雰囲気は変わる」という楽観論もあります。
こうした声には、「根拠」がありました。
毎年1月の支持率は、高い支持率だった政権発足当初をのぞくと、前年の12月に比べて維持もしくは持ち直すことが多かったのです。
第2次安倍内閣が1月の支持率を保ちながら、長期政権を築いてきた裏には、政権に難題が降りかかるたび、野党の追及をかわしながら支持率の低下を抑えてきた手法がありました。
2015年9月の集団的自衛権の行使を一部容認する安全保障関連法の成立後、野党は臨時国会の召集を求めていました。しかし、与党は拒否したまま越年します。
森友・加計学園問題が発覚した2017年には、首相が9月の臨時国会冒頭に衆議院を解散し、総選挙で大勝。そのまま越年すると、支持率は問題発覚前の水準に近づきました。
2019年の「桜を見る会」の問題では、野党は臨時国会の会期を延長して、問題解明のために審議をするよう求めていましたが、与党は拒否して閉会しました。
国会を開かないことで野党の追及をかわせば、年が明けた1月の支持率は持ち直す―。政権与党のそんな思惑が透けて見えます。
一方で、気になるデータもあります。
年末年始を挟んでも支持率が回復しないケースです。
年末年始を挟んだ1月に支持率が持ち直さなかった内閣(第1次安倍内閣、麻生内閣、鳩山内閣、野田内閣)は、1年以内に退陣を余儀なくされているのです。
福田内閣と菅内閣は1月に若干持ち直しているようにも見えますが、不支持が支持を上回っている状況は変わらず、ともに年内に退陣しています。
近年では例外もあります。2001年4月から5年5カ月続いた小泉内閣です。この間、1月の支持率が下がったのは2003年、2005年、2006年の3回でした。
ただ、小泉内閣は2003年と2005年には衆院の解散・総選挙に打って出ることで局面の転換を図り、2006年9月の自民党総裁の任期満了まで政権を保ちました。
これまでのデータを見ていくと、1月の支持率の注目ポイントは二つだと言えそうです。
(1)支持率が上向くのかどうか
(2)支持率が不支持率を上回るのかどうか
そもそも年末年始を挟んでも支持率が上向かなければ、政権の体力が落ちていることになります。
たとえ支持率がある程度持ち直したとしても、支持率が不支持率を下回ったままであれば、その後の政権運営は厳しいものになります。
第2次安倍内閣の昨年12月の支持率は38%、不支持率は42%です。
「桜を見る会」の問題に加え、昨年末には、安倍政権が「成長戦略の柱」と位置づけるカジノを含む統合型リゾート(IR)をめぐり、自民党に所属していた国会議員の汚職事件が起きました。
難題を抱えたまま年が明け、通常国会が始まりました。
各社の1月の支持率の報道を見てみると、「上昇」「横ばい」「下落」が並んでいます。
読売新聞は「支持52%(昨年12月は48%)と上昇」、共同通信も「支持49.3%(同42.7%)と上昇」。
毎日新聞は「支持は41%(昨年11月30日~12月1日は42%)とほぼ横ばい」、産経新聞.FNNも「支持44.6%(昨年12月は43.2%)とほぼ横ばい」。
NHKは「支持44%(同45%)で1ポイント減だった」となっています。
第2次政権下で続いてきた「支持率回復の方程式」は、果たして効果を発揮しているのでしょうか。
朝日新聞を含めた各社の調査結果が出そろうのは、今月の最終週です。
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