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ゴーン被告と「フェアレディZ」の数奇な運命「前からファンだった」

日産自動車の新車「フェアレディZ」を発表するカルロス・ゴーン社長(当時)=2002年7月30日、東京・有明で
日産自動車の新車「フェアレディZ」を発表するカルロス・ゴーン社長(当時)=2002年7月30日、東京・有明で 出典: 朝日新聞

目次

国外逃亡先のレバノンで1月8日、記者会見を開いた日産自動車の前会長カルロス・ゴーン被告は、車ファンにとって忘れられない決断をしていました。「コストカッター」として業績回復を達成した2002年、「フェアレディZ」を復活させたのです。熱狂的な愛好家のファンクラブや、海外にも多くのファンがいる名車。実は、ゴーン被告も、日産の経営に関わる前から「ファンだった」と明かしています。日産の顔となった「フェアレディZ」の数奇な歴史をたどります。

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名前は名作ミュージカルから

1960年に発表された最初のダットサンフェアレディはオープンカーで、まだZは付いていませんでした。

フェアレディ(貴婦人)という名前は、誰もが知っているミュージカル「マイ・フェア・レディ」にちなんでつけられました。

「当時の川又克二社長が、ブロードウェーでロングランを記録していたミュージカルの『マイ・フェア・レディ』にちなんで、華やかなフェアレディのように大勢の人たちから愛されて欲しいと命名したようです」(日産広報)。
2004年7月3日/フェアレディZ(キミの名は)/朝日新聞から

性能は「相当のじゃじゃ馬」で、1963年の第1回日本グランプリのスポーツカーレースB2クラスで、外車勢を相手に優勝を果たしています。Zの付くフェアレディが生まれたのは1969年で、車体を強化するためにオープンから屋根付きに変更されました。

「日産のシンボル」として「Z」がつけられました。海外にも輸出され、多くのファンを生みました。

「Zはアルファベットの最後の文字で、究極と未知の世界に挑む日産のシンボル」(日産広報)ということだ。フェアレディZは、海外にも輸出された。初期の対米輸出用は排気量2400CCのDATSUN240Zというモデルで、いまだにファンが多い。
2004年7月3日/フェアレディZ(キミの名は)/朝日新聞から

1978、1983、1989年とモデルチェンジを重ねましたが、2000年8月に生産中止となります。日産の業績が低迷し、販売車種を絞ったあおりを受けた結果でした。

1969年に発売され、世界で計52万台が売れた初代フェアレディZ。なかでも「Z432」(手前)は高性能モデルで、ベーシックな「Z」の2倍近い価格だった
1969年に発売され、世界で計52万台が売れた初代フェアレディZ。なかでも「Z432」(手前)は高性能モデルで、ベーシックな「Z」の2倍近い価格だった 出典: 朝日新聞

復活決断した絶頂期のゴーン被告

そこで登場したのが、ゴーン被告です。

1999年に日産はルノーの資本参加を受け、ゴーン被告が社長につきます。ゴーン被告の改革で日産は低迷期を脱出、復興の象徴として2002年、フェアレディZを復活させました。

ゴーン被告は「ブランド力の回復に貢献する」と主張して決断。1969年発売の初代から5代目に当たり、丸みをもたせて外観を一新。排気量3.5リットルエンジンを搭載しました。米国でも同時発売されました。

日産の経営に加わる前から「Z」ファンだったというゴーン被告は、発表会見で「日産の再生を具現化したシンボルだ」と述べ、日産にとって課題となっているブランド力の復活に役立つことを期待していました。

日産自動車は30日、スポーツカーのフェアレディZを13年ぶりにフルモデルチェンジして発売した。業績低迷期にいったん生産中止に追い込まれたが、仏ルノーから派遣されたゴーン社長が「ブランド力の回復に貢献する」と主張して復活を決めた。価格は300万~360万円。69年発売の初代から5代目に当たる。丸みをもたせて外観を一新し、排気量3・5リットルエンジンを搭載した。米国でも同時発売し、初年度は全世界で4万2千台を売る計画だ。日産の経営に加わる前から「Z」ファンだったというゴーン社長は、発表会見で「日産の再生を具現化したシンボルだ」と述べ、日産にとって課題となっているブランド力の復活に役立つことを期待した。
2002年7月31日/日産のカオ「フェアレディZ」復活 ブランド力回復かけ13年ぶり/朝日新聞から
記者会見するカルロス・ゴーン日産自動車社長(当時)=2006年3月21日、東京都中央区の同社本社で、郭允撮影
記者会見するカルロス・ゴーン日産自動車社長(当時)=2006年3月21日、東京都中央区の同社本社で、郭允撮影 出典: 朝日新聞

「Zカーの父」の存在

「フェアレディZ」を語る上では欠かせない人物がいます。2015年に亡くなった「米国日産」初代社長の片山豊さんです。

片山さんは、1965年から日産自動車米国法人の初代社長を務め、初代Zの開発構想にも携わり、「フェアレディZ」の生みの親として知られています。

片山さんが手がけた1969年発売の初代Z(S30型)は、手頃な価格とスタイリッシュなデザインで、北米市場で人気が爆発しました。

1969年の発売後は、地道な販売努力で米国市場に定着させ、「Zカーの父」とも呼ばれました。その功績が認められ、日米両国で自動車殿堂入りしています。

【関連リンク】「ミスターZ」片山豊さん死去 初代フェアレディZ、人気の理由とは
初代フェアレディZのわきにたたずむ片山豊さん(手前)と、日産のエンジニア湯川伸次郎さん=2001年9月14日、東京都品川区のNISMOで
初代フェアレディZのわきにたたずむ片山豊さん(手前)と、日産のエンジニア湯川伸次郎さん=2001年9月14日、東京都品川区のNISMOで 出典: 朝日新聞

モデルチェンジ積み重ね

2008年12月には、6年ぶりに全面改良します。世界の自動車市場の急激な縮小という「逆風」のなかでの発売でしたが、志賀俊之・最高執行責任者(COO=当時)は「車の開発には何年もかかる。厳しいときにこそ走る喜びを知って欲しい」と話していました。

日産自動車は1日、69年の発売以来、世界で計170万台を販売してきたスポーツカー「フェアレディZ」を6年ぶりに全面改良し、発売した=写真。1台362万~446万円で、日米欧を中心に120カ国で販売予定。国内で月500台の販売目標を掲げる。世界の自動車市場の急激な縮小という「逆風」のなかでの発売だが、志賀俊之・最高執行責任者(COO)は「車の開発には何年もかかる。厳しいときにこそ走る喜びを知って欲しい」と話した。
2008年12月2日/逆風切って走れ 日産「フェアレディZ」全面改良/朝日新聞から

2015年には、音響システムを改良した「フェアレディZ バージョンST」などを売り出しました。室内の天井に集音マイクを新たに付け、ドライバーに不快に響くエンジンや車体の低周波音を検知。スピーカーからその音を打ち消す制御音を出し、相殺することで車内の静かさを維持する機能をつけました。

日産自動車は、スポーツカー「フェアレディZ バージョンST」などの音響システムを改良して売り出した。室内の天井に集音マイクを新たに付け、ドライバーに不快に響くエンジンや車体の低周波音を検知。スピーカーからその音を打ち消す制御音を出し、相殺することで車内の静かさを維持するという。価格は消費税込みで499万6080円から。
2015年7月28日/車内静かなフェアレディZ 日産自動車/朝日新聞から

2017年7月には、より伸びのある加速感を感じられるよう、一部を改良して売り出しました。走行性能を高めたほか、前後のランプ周辺のデザインを変えて力強い印象を強調。見る角度によって色彩が変わる新色「カーマインレッド」も加えました。

日産自動車は、スポーツカー「フェアレディZ」を一部改良して売り出した。より伸びのある加速感を感じられるよう、走行性能を高めたほか、前後のランプ周辺のデザインを変えて力強い印象を強調。見る角度によって色彩が変わる新色「カーマインレッド」も加えた。消費税込み390万7440円から。
2017年7月8日/力強い「フェアレディZ」 日産自動車/朝日新聞紙面から
「フェアレディZ」の50周年記念モデル=2019年4月17日午前、東京・銀座、上地兼太郎撮影
「フェアレディZ」の50周年記念モデル=2019年4月17日午前、東京・銀座、上地兼太郎撮影 出典: 朝日新聞

熱狂的なファン、公認の家具まで

復活後、改良を重ねている「フェアレディZ」ですが、日産公認の家具まで生まれています。

焼津市内に家具工房「木工のデン」を構える神野克昭さんは、フェアレディZの座り心地再現したダイニングチェア「GTチェアー FAIRLADY Z」を手がけています。

カーマニアの神野さんが「本当に作りたい家具」を追求し、マニア仲間から実車の運転席を借りてデザインの参考にしました。

オーク材で骨組みを作り、シートが全身を包むようなスポーツカーの座り心地を再現。座面の下には強力なゴムバンドと布を網状に貼って実車と同様のクッションにしています。

中央にある実車のシートを5分の4サイズで再現した「GTチェアーFAIRLADY Z」(両端)=静岡県焼津市相川
中央にある実車のシートを5分の4サイズで再現した「GTチェアーFAIRLADY Z」(両端)=静岡県焼津市相川 出典: 朝日新聞
カーマニアの神野さんが「本当に作りたい家具」を追求し、マニア仲間から実車の運転席を借りてデザインの参考にした。オーク材で骨組みを作り、シートが全身を包むようなスポーツカーの座り心地を再現。座面の下には強力なゴムバンドと布を網状に貼って実車と同様のクッションにした。「家具職人が感心し、マニアが納得する家具にしたかった」という。昨年4月に「ハコスカ」のチェアを発売した際は日産本社まで公認を頼みに行った。だが、今回は日産から「50周年になるフェアレディZでも作りましょう」と持ちかけられたという。前作「ハコスカ」のチェアは1脚10万円以上するが、発売から40脚ほど売れた。今年4月に発売した「Z」チェアの価格は12万円(税別)に設定した。
2019年11月12日/フェアレディZの座り心地再現 ダイニングチェア、脚も「Z」 焼津の神野さんデザイン/朝日新聞から

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