障害のある子も、外国ルーツの子も
これまでの学校の授業になじめなかった子、小中学校で学習から遠ざかっていた子、障害のある子や外国にルーツのある子など、様々な立場の生徒たちがいます。みんなこの学校を選んで来てくれて、励まし合って学んでいます。
西成高校は大阪府内に8校ある「エンパワメントスクール」のうちの1校に指定されています。ここでは小学校の授業から学び直すのが特徴。勉強がわからなくて学校から足が遠のいていた子も、わかるから楽しくなる。多くの子がここに来るまでに不登校を経験していますが、遅刻も激減し、学校に来てくれるようになった子もいます。
もちろん、不登校の生徒もいます。学校にも家にもいづらいという子たちの居場所になればと思い、12年から学校内でカフェを始めました。「となりカフェ」といって校舎の2階にあります。ここは基本的に教師は立ち入り禁止。学校外の組織が運営しているので、生徒たちは先生に言えないことや家庭で悩んでいることなどを、比較的年齢の近いスタッフに話せているようです。カフェでご飯を炊く日もあって、「おにぎりカフェ」として自分たちでおにぎりを握ってもらう日もあります。
「となりカフェ」。生徒はここで飲み物をリクエストしたりお菓子を手にとり、部屋の中で思い思いの時間を過ごす
社会の二面性に敏感な子どもたち
学校に行かなくて良い。そのメッセージは、命を守るためには大事だと僕も思います。学校は命をかけてまで行く場所ではない。同調圧力の中で学校に行かなければならないというプレッシャーにつぶされてしまう必要は全くありません。学校に行くのがつらくて自分を傷つけたり、生きることに幕を引こうとしたりする子には、そうまでして学校に行かなくていいよ、って僕も言いたい。
でも学校で子どもと向き合ってきた僕としては、「本当に学校は必要ないの?」という思いもあります。いじめにあっている。授業がわからない。学校の人間関係が苦しい。だから学校に行きたくない。そんな学校が原因のしんどさは、僕ら教師が学校を変えて救わなくちゃいけない。でもそうじゃないけど、なんだかわからないけど学校がしんどいって言う子のしんどい理由は、学校なのかな。そんな子たちが「学校に行かなくていいよ」と言われると混乱するんじゃないかな。
しんどい理由は学校?=写真はイメージです
出典:pixta
子どもは社会の二面性に敏感です。そんな今の社会の価値観を大人が変えようとしないまま、「学校に行かなくていいよ」と言われたら、子どもたちはどちらが本当なんだろうって戸惑わないだろうか。だって今の社会は「学校に行かなくて良いよ」って言う大人が作った社会じゃないんだから。
社会の人生設計がしんどいんじゃないだろうか
僕もまだ答えを探しているところです。でも一つ思うのは、なんだかわからないけど学校がしんどいという子は、「学校」がしんどいというよりも、成長モデルに圧迫され、社会のゆがみの中で上手にできないことがしんどいんじゃないかな。学校ではなく、今の社会での人生設計がしんどいんじゃないだろうか。
だったら、変わるべきは社会ですよね。「学校に行かなくて良い」と言うなら、行かなくても子どもが人生の展望を描ける社会を作らなくてはいけない。社会のシステムが変わるように、僕ら大人がそれぞれの場所で動かなくちゃいけない。
「となりカフェ」の様子=facebook「高校生居場所カフェプロジェクト」より
僕たちが育てようとしている力は
学力って何だろう。僕は常にそれを考えています。点数で表せる学力もありますが、点数が全てではない。学習に向かう力、学びたいと思う気持ち。更に言うと、困ったことに出合ったとき、すぐに人に尋ねるのではなくまず自分で調べようとする力。それが社会に出る上で重要な力で、僕たちが大事に育てようとしている力です。
子どもが将来を描けなくてしんどいと思う社会は、大人が作ってきた社会です。僕一人の力じゃ世の中は変わらない。でも、僕は僕の学校の教育方針なら変えられる。どの大人にも、自分が変えられるものがあるはずです。大人、一緒に動きましょう。
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