連載
匿名希望さんからの取材リクエスト
小説家の結来月ひろはさんの学生時代を知りたいです。
#177 #withyou ~きみとともに~
「ボカロ小説」結来月ひろはさんが明かす「普通じゃない」学校生活
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小説家の結来月ひろはさんの学生時代を知りたいです。
#177 #withyou ~きみとともに~
押見さんの記事を読み、ぜひ小説家の「結来月ひろはさん」の取材もしてほしいと思い、リクエストを送りました。結来月さんはノベライズの中で、いじめや学校生活の影の部分を繊細に執筆されていて、あとがきに「どう書くか悩んだ」と書かれていて、とても真摯にそうした場面をネタとしてではなく向き合って書いてくれたのだと感動しました。この人がどんな思いで書いたのか、学生時代に何を考えていたのかを、ぜひ知りたいですし、押見さんと似ているのかなと勝手ながら思いました。売れている人や有名な人ではないのですが、真摯に向き合われている人に報われてほしいです。よろしくお願いします。 匿名希望
ボーカロイド曲の世界観をベースとした小説、所謂「ボカロ小説」を手がける結来月(ゆくづき)ひろはさんは、楽曲制作者・かいりきベアによるオリジナル楽曲「イナイイナイ依存症」と「マネマネサイコトロピック」を小説化しました。いずれも舞台は学校。いじめの描写だったり、登場人物が「本当の自分とは?」と悩んだりする心情が繊細に描かれています。実は結来月さん、いじめられた過去があります。支えてくれたのは祖父母の一言、そしてライトノベルでした。「普通」に悩んだ学生時代から、自分を肯定できるようになった現在までを聞きました。
結来月さんは京都出身で、小中高校と、地元の学校に通いました。アトピーによる肌荒れがあり、幼い頃から「容姿についていじめられることがあった」と打ち明けます。
高校時代は、クラス全体の雰囲気が良くなく、「罵詈雑言が飛び交う中で過ごしてきた」と話します。雰囲気になじめず、教室の片隅で一人本を読んでしのぐ日々。「いかに今日を乗り切るか」という気持ちで過ごしていました。
でも、結来月さんには、家に帰ると味方がいました。同居していた祖父母です。
その日あった、良かったことも悪かったことも、すべて話していたといいます。「祖父母は、いじめられていることを『情けない』なんて言わなかった。『あなたは間違っていない』と言ってくれたんです」
その一言に「救われた」と話す結来月さん。もう一つの支えはライトノベルでした。
「ライトノベルと初めて出会ったのは小学6年生のときです」。平安時代を舞台にした「なんて素敵にジャパネスク」が、立ち寄った書店の目立つ場所にあり、思わず手に取りました。
元々読書は好きでしたが、「ラノベは挿絵が漫画で、びっくりしたし感動した」と話します。「本って、子ども向けと大人向けと分かれてしまっているように感じていましたが、『真ん中』に初めて出会った」。
その頃から本、特にライトノベルへの関心が深まっていきました。
「いま思うと、『普通の学生生活』は諦めていたけど、本を読むことと書くことだけは諦めなかったんですよね」
そして結来月さんは大学に進学。大好きな文学を学ぶため、文学部を選びました。「いろんな場所から人が来て、周りの環境が変わりました」と話しますが、一方で新たな苦しみと向き合うことにもなったといいます。
「みんな、高校まで『普通』の学校生活を送ってきていました。その話を聞くと、私には高校生活での友達もいなかったし、話したい思い出もない。自分の学校生活が『普通』じゃなかったんだと実感してしまったんです」
転機になったのは小説を書くようになってからです。
2017年に電子書籍でリリースされた「イナイイナイ依存症」では、ある生徒が教室に来るか来ないかで、その生徒以外が盛り上がる場面があります。
それは、実際、結来月さんが学生時代にインフルエンザで学校を休み、再登校したときに自分が経験した空気感でもありました。「久しぶりに教室に入ると、『不登校になったかと思った』と言われたんです。そのときの暗くなった気持ちが小説に生かせた」
「小説は小説なので、自己投影とは違う。自己投影になってはいけない」と思う一方で、読者から「キャラクターの気持ちが理解できる」と感想が来た時に「あの経験は無駄じゃなかったんだ、と漠然と思うことができたんですよね」
結来月さんの担当編集者・PHP研究所の小野くるみさんによると、結来月さんの作品の主な読者は中高生だと言います。お小遣いで買ってくれるような子も多いといい、出版社に届く感想には「描写に共感した」というものが多いといいます。
30代前半の結来月さんですが、自分を少しずつ肯定できるようになったのは最近のことだといいます。
「最近になってようやく、あのときよく頑張ったな、自分なりになんとかしようとしていたんだ、と思えるようになったんです」
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