MENU CLOSE

連載

#33 #父親のモヤモヤ

「パパはッ、圧倒的に役に立たない」赤ちゃん視点で描くイクメン漫画

「現時点においてパパはッ、圧倒的に役に立たない」。まだ赤ちゃんの我が子から、父親が叱咤激励される漫画「イクメンとは。」

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典: コミチ

目次

「現時点においてパパはッ、圧倒的に役に立たない」。まだ赤ちゃんの我が子から、父親が叱咤激励される漫画「イクメンとは。」。ラストには、性別にとらわれない「イクメン」の新しい解釈が描かれます。作者は、2人の子の父であるいぬパパさん(40)です。育児する中で、妻子に抱いてきた無力感を、ストーリーに落とし込みました。「自分にとって言い切れるのは『役に立たない』ということくらい」という、いぬパパさん。「メン」を「メンバー」に置き換えてみる「イクメン」を投げかけます。
【PR】盲ろう者向け学習機器を開発。畑違いの挑戦に取り組んだ技術者の願い
#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」

夜、すやすやと眠る赤ちゃんを前に、正座をしている夫婦。緊張のまなざしで、わが子を見つめています。

すると突然、部屋の中に赤ちゃんの幻影が現れ一言、「明日のオーダーを発表する」。翌日の育児や家事の分担が、赤ちゃんからの「指令」として言い渡されます。

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

母親が授乳やオムツ替え、お風呂、寝かしつけを任された一方、父親は「朝のゴミ出し、以上!」。

「おれ、もっとできますッ…!」と抗議する父親を制止し、赤ちゃんは「現時点においてパパはッ、圧倒的に役に立たない」と言い切ります。

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

無力感に打ちひしがれる父親……振り返れば、仕事の忙しさで育児も妻に任せっきりでした。そんな父親に、赤ちゃんは野球に例えて語り掛けます。

「しかし悲観することはない ただ忘れないで欲しい ファンやオーナーではなく、同じグラウンドに立っているチームメイトだということをッ!」

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

マウンドに立つのは、追い詰められた表情の母親。「一人じゃないぞおーッ! 気負うなーっ」。飛び込んできたのは、外野で声を張る父親の姿。肩の力が抜けた母親は「そっち飛んでったら頼んだぞっ!」と言って投球するのでした。

漫画では「育児するメンバー」を略して、「イクメン」であると締めくくられています。

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

起きている娘に会えるのは、夜泣きのときだけ

「妻のように家事や育児ができないという、無力感はすごく持っていました」

作者のいぬパパさんは、中学生の娘と小学生の息子の父親です。漫画には、自身の経験も盛り込まれていました。

娘が生まれた頃、いぬパパさんは20代半ば。仕事の要領がつかめないなか、業務も忙しく、「切り上げて帰るタイミングもわからなかった」と振り返ります。家事や育児を担っていたのは、妻でした。

「仕事から帰ってきた時、娘は朝と同じ姿勢で寝ているんですよね。平日に起きている姿を見られるのは、夜泣きのときくらい。それで妻があやしている時も、自分は何をしたらいいのかわからなくて、むしろ妻をイライラさせてしまうこともありました」

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

平日はほとんど家事はできませんでしたが、休日には食事を作って皿洗いするなど、できることを続けてきたといういぬパパさん。

しかし、当時専業主婦だった妻と比べると、家事や育児に使える時間は多くありません。どうしても妻から指示を受ける構図になり、応えようとするも、妻のようにはうまくできない、という繰り返しになっていました。

妻との育児へのスタンスの違いに戸惑うことも。求められるように完璧にこなせないことで、さらに無力感もつのります。

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

「役に立たない」を言い切った

そんな生活を過ごして、わかってきたことがあります。「偉そうなことは言えないのですが」と前置きをしつつも、「できないなりに、妻のモチベーションを下げないということが大切かなとは思っていて……」。

「すべて出来るのであれば完璧ですが、物理的・時間的にはできないことはどうしてもあります。だから妻がやることには、気持ちよくやってもらえるようにしたいんです」

妻に対して文句は言わない、怒られたことはしないのはもちろんのこと、できることはなくても、一緒にいるということを意識したといいます。少しずつ、妻がイライラするポイントを減らしていきました。あえて「自分はサポートなのだ」と認識し、無力感に折り合いをつけることで、前向きに考えられたといいます。

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

そんな経験が、漫画にも表れています。自分は「役に立たない」と言い切り、「それでもアナタがいる意味があるハズ」とつなげます。

「誰かに対して『役に立たない』と言いたい訳じゃなくて、自分にとって言い切れるのは『役に立たない』ということくらいです。そこから、ポジティブに考えていけたらいいなと思って描きました」

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

チームのスタイルはさまざま

「妻に比べたら、自分が出来ているのは『手伝い』でしかない」といういぬパパさん。「子育てする女性には『イクメン』のような呼び方はしないですし、ことさらにアピールすることでもないと思うんです。子育てには、母も父も同じ立場でないといけないというのが、目指す未来の姿なのだと思いました」

いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」
いぬパパさんの漫画「イクメンとは。」 出典:コミチ

そんな思いから、「イクメン」を「育児するメンバー」と言い換える作品を描きました。一方で、漫画に盛り切れない思いもあったといいます。作品では夫婦のケースでしたが、いぬパパさんは「いろんなチームの形がある」と話します。

「ひとり親だったり、祖父や祖母がチームメイトだったりする場合もあります。主力選手がひっぱるスタイルもあれば、きっと弱い選手が連携するチームもありますよね。これがベストというものはなくて、それぞれがメンバーであると思えることが重要なのだと思っています」

      ◇

いぬパパさんはマンガのSNSを運営するコミチやTwitterなどで漫画を発信しています。
いぬパパさんのTwitter:@inupapa1979

父親のモヤモヤ、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。母親を子育ての主体とみなす「母性神話」というキーワードでも、モヤモヤや体験を募ります。こうした「母性神話」は根強く残っていますが、「出産と母乳での授乳以外は父親もできる」といった考え方も、少しずつ広まってきました。みなさんはどう思いますか?

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。

みんなの「#父親のモヤモヤ」を見る

連載 #父親のモヤモヤ

その他の連載コンテンツ その他の連載コンテンツ

全連載一覧から探す。 全連載一覧から探す。

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます