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2019年09月30日

もう1人いた!高知の「幕末偉人」 懐かしいお土産に描かれたのは…


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高知にある中岡慎太郎像(左)と坂本龍馬モチーフの「ファンシー絵みやげ」

高知にある中岡慎太郎像(左)と坂本龍馬モチーフの「ファンシー絵みやげ」

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80~90年代に日本中の観光地で売られていた雑貨みやげ「ファンシー絵みやげ」を集める山下メロさん。時代の流れとともに消えていった「文化遺産」を、保護するために全国を飛び回っています。今回の旅の舞台は四国の高知県。坂本龍馬が有名で、さまざまなお土産にイラストで登場しています。坂本龍馬以外にも、有名な人物はいるはずなのにーー。そう思い、探し始めたのは「中岡慎太郎」のお土産でした。

ファンシー絵みやげ紀行

「ファンシー絵みやげ」とは?

「ファンシー絵みやげ」とは、1980年代から1990年代かけて日本中の観光地で売られていた子ども向け雑貨みやげの総称で、ローマ字日本語、二頭身デフォルメのイラストが特徴です。写真を見れば、実家や親戚の家にあったこのお土産にピンと来る人も多いのではないでしょうか。

バブル~平成初期に全国の土産店で販売されていた「ファンシー絵みやげ」たち

バブル~平成初期に全国の土産店で販売されていた「ファンシー絵みやげ」たち

バブル時代をピークに、バブル崩壊とともに段々と姿を消し、今では探してもなかなか見つからない絶滅危惧種となっています。

私は、その生存個体を保護するための「保護活動」を全国で行っているのです。

「坂本龍馬独占地域」高知

高知県(土佐藩)は主に幕末・維新期の志士を中心に、偉人を多く輩出した地域です。そのため観光パンフレットなどでも偉人の肖像とともに、ゆかりのある土地や来歴などが書かれています。

歴史に名を残す偉人は、たびたびファンシー絵みやげにも登場します。特に高知は、お土産業界では「坂本龍馬独占地域」です。モチーフはほぼ坂本龍馬。それ以外を探すのが難しいほどに坂本龍馬が多用されているのです。

坂本龍馬をモチーフにしたファンシー絵みやげ

坂本龍馬をモチーフにしたファンシー絵みやげ

ところが以前、県西部を調査したところ、龍馬と同じく幕末に活躍したジョン万次郎のファンシー絵みやげも多数あることがわかりました。それは、ジョン万次郎の銅像が立つ足摺岬近くの売店です。これによって、地域性のあるオリジナルイラストの商品が他にも存在するのではないかと思いはじめました。

27歳の万次郎の肖像画(複製)。ゴールドラッシュのころの格好らしい。ジョン万次郎資料館に展示されている=2015年

27歳の万次郎の肖像画(複製)。ゴールドラッシュのころの格好らしい。ジョン万次郎資料館に展示されている=2015年

出典: 朝日新聞

ジョン万次郎をモチーフにしたファンシー絵みやげ

ジョン万次郎をモチーフにしたファンシー絵みやげ

そんな中、中岡慎太郎の出身地が現在の北川村で、そこから近い室戸市の室戸岬に銅像が立っているという情報を見つけました。

中岡慎太郎とは、幕末・維新期に活躍した土佐藩の志士で薩長同盟の立役者です。坂本龍馬に境遇や功績が似ており、さらに最終的には坂本龍馬とともに京都・近江屋で暗殺されました。

即死したとされる龍馬に変わって、二日生き延びた中岡慎太郎が様々な証言を残したことが有名ですが、その最後ばかりが有名になったため、歴史小説などでは坂本龍馬の物語の脇役として晩年に登場します。中岡慎太郎が中心となった小説が少なく、功績は知られていないのが現状です。

小説「汗血千里の駒」の挿絵。京都の近江屋で暗殺される龍馬(手前)。奥は中岡慎太郎=高知市立自由民権記念館提供

小説「汗血千里の駒」の挿絵。京都の近江屋で暗殺される龍馬(手前)。奥は中岡慎太郎=高知市立自由民権記念館提供

出典: 朝日新聞

ジョン万次郎のケースと「岬に幕末・維新期の偉人の銅像が立っている」という条件が一致しますので、中岡慎太郎のファンシー絵みやげが存在する可能性を感じはじめていました。

しかし、いくらバブル経済の時代とは言えども、それなりに名の知れた人物でなくては、わざわざイラストを描き下ろしてまで商品化されません。坂本龍馬やジョン万次郎と比べると少し知名度の劣る中岡慎太郎が、果たしてファンシー絵みやげになっているのでしょうか。

観光ガイドブックで下調べ

まず、どういうルートで高知県を調査をするか考えるために、観光ガイドブックや地図を見てみましたが、中岡慎太郎の銅像がある室戸岬の近くには施設がほとんどありません。岬から離れたところに観光施設がいくつかあるようですが、お土産店のターゲットである観光客がどこを目指すのか、どこでお土産品を購入するのかが見えてこないのです。

加えて交通事情も問題です。高知市から室戸岬へはかなり手前で鉄道がなくなり、そこから長い距離をバスで移動しなくてはなりません。そのため、調査に行くにもかなり覚悟が必要です。


とはいえ、アクセスが悪くても、あまり知られていなくても、現地を実際に目で見て調査するというスタンスですので「ファンシー絵みやげが無さそうだから行かない」という発想はありません。それでも、うまく計画を立てないと行き帰りで1日つぶれるどころか、2日かかることさえあります。

ガイドブックを前に、リスクを負ってまで今調査すべきか非常に悩んでいましたが、そこにである文字が目に入ってきました。

「室戸ドルフィンセンター」。

この名称には非常に見覚えがありました。なぜなら、室戸ドルフィンセンターのセンター長の松島さんという方と知り合いだからです。これは相談するしかないと思い、すぐにメッセージを送りました。

 

山下メロ

松島さんご無沙汰しています。高知に来ておりまして、室戸岬が気になっているのですが、どこか昔から雑貨を売っているような土産店はありますでしょうか

 

松島さん

岬には観光協会がやっている小さい売店しかありませんよ。あとは道の駅。室戸ドルフィンセンターにも売店はありますけど、どこも新しいものと食品しか売っていませんね

さすが松島さん、私の「欲しいもの」がわかっているため、話が早いです。

 

山下メロ

そうでしたか。しかし存在の有無をこの目で確かめたいので、売店があるのであれば調査にうかがいます

 

松島さん

では、是非室戸へいらしてください

スケジュールの関係上、室戸岬を調査できるのは午前中のみ、それから高知空港まで大移動して飛行機で東京へ帰るということに。勝負は3時間ほどですが、調査個所も少ないので大丈夫でしょう。

いざ室戸へ

土産店や売店の営業時間は、Webサイトなどで確認できないことも多く、実際に営業時間が定まっていないお店もあります。経験的に、開店時間が朝の8時から9時くらいという店が多いので、時間のロスを減らすために、そのくらいには現地に行くようにしています。今回のように午前中しか時間がない場合などは特に重要です。

前日室戸市に宿泊した私は、お仕事に行かれる前の松島さんに無理を言いまして、早朝から一緒に調査を始めました。向かったのはもちろん、中岡慎太郎の銅像が立っている室戸岬の最先端です。

中岡慎太郎像

中岡慎太郎像

9時過ぎに銅像周辺へ到着しました。銅像のすぐ前に観光案内所がありますが、まだ営業していません。ドアの前には9時開店と書いてあるのに、開いてないのです。

定休日ではないのは明らかなので、何らかの事情で遅刻しているのかもしれません。とにかく中岡慎太郎像の近くにある売店はここしかなく、開店まで待つしかありません。

周辺をうろうろしても、一向に開く気配がない観光案内所。だんだん不安になってきました。近くのカフェで朝食をとり、9時50分ごろに観光案内所へ戻ると、なんと先ほどなかった自転車が停まっていて、扉が少し開いているではありませんか。

そこから覗くと、まだ開店準備をされているようでしたが、とりあえず調査ができそうでホッとしました。はやる気持ちを抑えて、「おはようございます!もう中見ても大丈夫でしょうか?」と声をかけて、店内を見させていただくことに。

観光案内所で販売されていたウッドフレーム

観光案内所で販売されていたウッドフレーム

観光案内所で販売されているラインナップは新しい商品ばかりでした。そして、室戸岬にある売店はやはりここしかないということも分かりました。しかし、観光案内所の方は若い方で「昔、中岡慎太郎のファンシー絵みやげが売られていた」「昔も今も作られていなかった」といった、過去の事は知らないとのことでした。

観光案内所で昔のものが見つかることは稀ですので、この結果は予想していました。しかし、時間をかけて営業開始を待っても、情報すら得られないというのは残念でした。これでは中岡慎太郎のファンシー絵みやげにはたどり着けないのではないか。

あきらめムードがただよう…

保護活動を手伝ってもらったときに心苦しいのは結果が出ないことです。いくら「無いという情報も重要なので、調査結果を持ち帰ることがおみやげ……」と言ったところで、一番はファンシー絵みやげが見つかることです。せっかくご協力いただいている松島さんにお見せできればとは思うものの、店自体がここしかないのです。

ここで松島さんが「売店はないけど、近くに知り合いがやっている岬観光ホテルという宿泊施設があるので行ってみますか?」と提案してくださり、行くことにしました。

結果からいうと、そのホテルにもファンシー絵みやげはありませんでした。しかし、ある提案を頂いたのです。「ここらへんで一番古くからやっている室戸荘さんに話を聞いてみたらどうか」。実は朝、中岡慎太郎像に向かう途中でその民宿は見かけていました。民宿に売店があることは稀有ですが、時間もないためすぐに中岡慎太郎像のほうへ戻りました。

民宿へ向かう

民宿へ向かう

室戸荘に行くと、女性の方がフロントにいらっしゃいましたので事情を話そうとしましたが、すぐに私の気持ちはうわの空になってしまいました。

 

山下メロ

こういったキーホルダーのようなものを探しているのですが

 

お店の方

うちはもう雑貨のお土産置いてないんです

 

山下メロ

そうですよね。昔ほど売れなくなりましたよね

そう言いながら、私の気持ちは、ある一点に集中していました。それはあるものを見てしまったからです。

フロントの奥が気になる、その理由は…

フロントの奥が気になる、その理由は…

 

山下メロ

あの……すみません、たとえばその鍵に付いているキーホルダーのようなものです

 

お店の方

え……これですか

部屋数の多い宿泊施設のフロントには、ルームキーを差し込んだり、掛けたりする場所があるものです。おみやげキーホルダーの売れ残りを鍵に付けている宿泊施設に泊まったことが何度かあったので、私は経験則からついルームキーが掛かっているところを凝視してしまいました。

 

山下メロ

それ……それです……見せてもらえませんか?

 

お店の方

いいですよ

色んなキーホルダーが使われていましたが、1つずつ見ていくとファンシー絵みやげの龍馬や土佐犬のものが見つかりました。それだけでも嬉しい収穫ですが、肝心の中岡慎太郎がありません。

民宿のフロントで見つかった「なめたらいかんぜよ!!」と書かれた坂本龍馬モチーフのキーホルダー。上には客室の鍵がついている。

民宿のフロントで見つかった「なめたらいかんぜよ!!」と書かれた坂本龍馬モチーフのキーホルダー。上には客室の鍵がついている。

ちなみに、龍馬や土佐犬のイラストは高知県全域で広く使われていて、室戸岬ならではのものではありません。他にも貝細工品など、海辺であれば日本全国で使われているものばかりでした。しかし、その中でひとつだけ「室戸岬」と書かれているキーホルダーが見つかりました。

「室戸岬」のキーホルダー(画像の一部を加工しています)

「室戸岬」のキーホルダー(画像の一部を加工しています)

リアルに風景が描かれており、ファンシー絵みやげとは少し違いましたが、ちゃんと「室戸」のお土産が生産されていたことが分かります。

ルームキーをすべて見終えて、「やはり中岡慎太郎のファンシー絵みやげは無かったんですかね~」などとお話していましたが、どうも気になって先ほどのキーホルダーを裏返してみると……。

中岡慎太郎モチーフのキーホルダー

中岡慎太郎モチーフのキーホルダー

なんと、裏には中岡慎太郎のデフォルメイラストがありました! 「室戸岬」の字と渋い絵で油断していましたが、遂に私は中岡慎太郎のファンシー絵みやげを見つけたのです。この民宿はルームキーに、ファンシー絵みやげが売られていた時代をそのまま残してくれていました。

その後、この民宿の元売店のコーナーで中岡慎太郎の木製の「タオルかけ」も見つかり、2種類の「中岡慎太郎ファンシー絵みやげ」を保護することができました。

中岡慎太郎像とともに

中岡慎太郎像とともに

あまり外見的な特徴がなく、少しマイナーな中岡慎太郎でさえも、やはり出生地の近くではファンシー絵みやげ化されていました。「無い」と思われていたものが存在したので、まさに定説が覆り歴史が変わった瞬間です。しかもRPG的に「あそこへ行け」という指令に沿って動いて、探し回ってやっと見つけました。

「無い」という結果を持ち帰るのは良いですが、「無さそう」と思ってはいけません。どんなにマイナーな観光地であっても、ほとんどがファンシー絵みやげを販売しています。どのような結果が待ち受けていようとも「絶対ある」と思って行動してみるのが重要だと気付く旅となりました。

ちなみにその後、少しだけ時間に余裕があったので、室戸ドルフィンセンターでかわいいイルカを見て、無事飛行機に乗れました。

ちなみにその後、少しだけ時間に余裕があったので、室戸ドルフィンセンターでかわいいイルカを見て、無事飛行機に乗れました。

  ◇

山下メロさんが「ファンシー絵みやげ」を保護する旅はまだまだ続きます。withnewsでは原則週1回、山下さんのルポを紹介していきます。

ファンシー絵みやげ紀行

坂本龍馬だけじゃない! 高知で探した「中岡慎太郎」イラストみやげ
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小説「汗血千里の駒」の挿絵。京都の近江屋で暗殺される龍馬(手前)。奥は中岡慎太郎=高知市立自由民権記念館提供
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出典:朝日新聞
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