学校に行くのがしんどい、逃げたい--。そんな思いを抱える子どもたちの「居場所」はどこにあるのでしょう。また、大人はどう支えれば良いのでしょう。不登校経験のある俳優で漫画家の園山千尋さん、フリースクール代表の前北海さん、ノンフィクション作家の石井光太さんたちと考えました。「グループに加わりたくないけど、その空気に乗らないといじめられる気がして、息苦しい」。今まさに教室で悩んでいる小学生へのアドバイスは……。
俳優、漫画家。1990年、北海道生まれ。高校卒業後、上京して活動。出演作品は、福島中央テレビ「絶景探偵。」や、映画「モダン・ラブ」など。自身の不登校経験を「不登校ガール 学校の階段がのぼれない」として、コミック配信サービスアプリ「Vコミ」(https://vcomi.jp/)で連載中。
NPO法人ネモちば不登校・ひきこもりネットワーク理事長。1984年生まれ。中学1年の秋から中学卒業まで学校に行かなかった経験がある。千葉県習志野市のフリースクールネモの代表兼スタッフとして働きながら、不登校・ひきこもりの子ども・若者の支援をしている。
ノンフィクション作家。1977年、東京生まれ。「物乞う仏陀」でデビューし、国内外を舞台にしたノンフィクションを精力的に発表。子どもの問題を扱った作品も多い。近著に「どうしたらいいかわからない君のための人生の歩き方図鑑」。
「大人の声かけ」について
3人のトークイベントは8月26日、東京都港区の日本財団ビルで開かれました。「夏休み明けがしんどい子へ 『居場所はここにある』」(朝日新聞withnews・日本財団共催)として、朝日新聞社の金子元希記者が進行役を務めました。会場には、保護者世代の人や、支援に携わる人たちが多数。不登校経験があり、いま当事者や親を支援する立場の前北さんが、「大人の声かけ」について思うことを語ってくれました。
園山:私も学校に行けなくなった時、「何で?」「どうして?」って親に言われました。私自身なんで自分が学校に行けなくなったのか、原因がわからなかった。今になって「こういうことが原因だったのかな」と推測できるけど、当時は学校がイヤな理由を考えても、わからない。ただ行けない自分が恥ずかしくて、学校は大事ってわかってるからすごく悩んだ。

SOSの網の目を小さくする
園山さんは中学2年の夏、親の転勤で北海道の田舎のまちから同じ北海道の都会へと引っ越しました。転校先の中学校では、友達の悪口を言ったり、「みんな○○のこと嫌いだよ」と「嫌いを共有」しようとしたり。同調したくないけど、しないとノリが悪いと思われる--。そんなストレスをため込んでいったといいます。
石井さんがかつて取材したケースの中には、虐待や不登校をきっかけに質の良い児童福祉施設につなげてもらいながらも、自分たちから逃げ出して、事件を起こした子どもがいたそうです。

「楽しいことこそが未来を作る」
イベントのテーマは「居場所」。居場所を見つけられるような「転換点」は、不登校経験のある前北さん、園山さんにはあったのでしょうか。
園山:今思うと、私は自分の夢を見つけた時が居場所を見つけた時でした。中学時代は正直、封印していた、何もできなかった時代。中学の友達がいない高校に入って、何かを乗り越えたわけじゃないけど環境が変わったから新しい友達もできて、やっと落ち着いた。この先何がやりたいか考えた時、昔学芸会で褒められたとか、国語の朗読が上手だとかいわれたことがうれしかったことを思い出して、「役者業を目指そう」と未来に向かって考えられた時、やっと居場所を見つけられた気がします。
前北:楽しいことこそが未来を作る。大人は「楽しいことばかりしていたらダメ」「壁を越えなさい」っていうけど、苦しいとかしんどいっていうのは、過去を振り返っているよね。楽しいことをして未来を向くのが大切だと思う。
石井:生きづらさって、いまそこにある価値観と自分の価値観が合わないから苦しくなる。そんな時に誰と出会えるかは、とても重要だよね。フリースクールの先生、貧困家庭でフリースクールが利用できなければ、別に導いてくれる人、受け入れてくれる人。でも出会いは人だけじゃない。本や旅、音楽でも良い。新しい出会いが、自分にとってどんな価値観を持っているかが大きい。それと、人間って社会の中で、役割を見つけられないとしんどい。大人が用意して、選択できるようにしてあげても良い。役割と出会いがあって、初めて良い居場所となるんじゃないかな。

「人に意見を求められること、すごくかっこいい」
参加者が登壇者に質問する時間もありました。会場にいた小学生の男の子は、「学校でいじめグループがある。加わりたくないんだけど、その空気に乗らないといじめられる気がして、息苦しい」と訴えました。
石井:こんな美人にかっこいいって言われた。かっこいい生き方しなさい!
前北:コミュニティーを捨てる勇気を持ってほしい。だってそのイヤなコミュニティーにいたら、自分が腐っちゃうよね。そんなくだらない所に居続けるのがチャレンジだっていうのは、ばかげている。探せば仲間は絶対にいる。力の方向を、我慢しなくて良い自分のままでいられる場所を探すのに向けてほしい。自分に自信を持って、かっこいいって言われたきみのままで大人になってほしい。

大人にとっても大事な「居場所」
イベントは約1時間半。その後、場所を移動して参加者と登壇者が自由に語り合いました。質問してくれた男の子が、笑顔で周囲の大人に自分で描いたイラストを見せてくれました。
大人になっても、人生のステージごとに自分の居場所は変わっていきます。前の職場は良かったのに、新しい職場になじめない。子どもが生まれて幸せなはずなのに、社会で孤独を感じる--。
誰もが生きづらさを抱える時代。子どもだけでなく、大人にとっても、今の自分の居場所に縛られない生き方は大事なのかもしれません。


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今年のテーマは「#居場所」。
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