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連載

#40 #withyouインタビュー

中川翔子さんが見た「SNSいじめ」の今 自分の居場所を作るために

中川翔子さん=瀬戸口翼撮影
中川翔子さん=瀬戸口翼撮影

目次

昨年、#withyouのインタビューで、中学時代にいじめられ、不登校になった体験を語ってくれたタレントの中川翔子さん。あれから1年。「大人の押しつけにしたくない」と、いじめの現状を知るため、いじめられた10代に話を聞きにいったそうです。その中でたどりついた、SNS時代のいじめの対処法。そして、大人が伝えなければいけない「押しつけじゃない」メッセージについて、語ってくれました。

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SNSいじめの現状

テレビで、10代から寄せられる悩みに答える機会がありました。「わかる」「そうだよね」って思うこともあったけど、「今はそんなことになっているの?」って驚くこともありました。

私はしんどかった10代のとき、大人に「学校卒業しちゃえば大丈夫だよ」みたいに言われると、「なんて無責任なことを言うんだろう」「私は明日も行かなきゃいけないんだよ」って思ったのを覚えていました。

今の悩んでいる子たちと、感覚の剥離(はくり)が起こらないようにしたいと思って、話を聞きに行きました。

現状は、厳しいものでした。大きく変わったのは、やっぱりSNSです。

グループLINEで、誰のことなのか名前を出さないで、悪口を言ったりする。
それでも対象者は「自分のことだ」って分かるらしいんです。その子が発言すると、急に全員沈黙する。
裏アカウントでずっと悪口を晒されるとか。本当にいろいろ。

SNSでいじめられると、学校以外の時間も、24時間、気が休まらない。
子どもにとっては、学校や家がすべて。そこにさらにSNSで、本当にがんじがらめになっちゃう。当時の自分がそんな状況だったら、どうしようって思います。

悪口を言われない人っていない

SNSとどう付き合っていったら、いいんだろう。

10代のころの私は、「うまくやらなきゃ」「うまくやれない自分ってだめなんだな」って思っていました。人と違うだけで、「あいつキモい」になっちゃうから、気を遣って、「みんなに好かれるにはどうしたらいいのかな」とか、ずっと考えていた。

でも、優等生みたいな子だって、悪口を言われない人っていないんだと思います。10代の頃に、そうやって傷ついて、傷つけて、学ぶところもある。

だから「悪口を陰で言っている人たちに気を使う必要も、そんな人たちに好かれる必要もない」って言いたい。本当は。でもそう思えるのは、私がもう大人だからかもしれません。

たぶんネットの世界って、「言霊」がすごく宿りやすい

じゃあ、SNSでしんどい時ってどうすればいいのか。

「SNSは悪い物」って一言であしらっちゃう大人がいるって聞きました。いやいやいや。

私はSNSに救われたんです。

当時は分かっていなかったですけどね。
18歳ぐらいまで悩みやすかったし、仕事もうまくいかなくて、「どうせ私なんか」ってずっと思っていました。

でも、いま死んだら私がいた証拠が残らない。せめて、生きた証拠を残したいって、明るい遺書のつもりでブログを書き始めた。

本能的に、「後に残る愚痴とかやめておこう」、「いいなぁって思ったものを褒めるゲームっぽくしよう」、ってマイルールを決めました。

現実の自分は落ち込んでいたけど、この場所だけではポジティブでいようって。

そこで、気がついたんです。たぶんネットの世界って、「言霊」がすごく宿りやすい。

これが好き、あれがしたいって書いているうちに、せっかくだからメイクしよう、もっと猫載せようって、「せっかくだから」が心の口癖になって、言葉に引っ張られるようにポジティブになりました。

それに、学校では絵を描いているだけで「キモい」って言われてたのが、ブログで「わかります!」「楽しいよね」って、共感してくれる人が世の中にいっぱいいることにも気づけた。

本当に救われたと思いました。居場所があるんだ、ここにって。

ブログに書いたことは、お灸みたいにずっと燃えていて、その後めちゃめちゃ実現したんです。
一番びっくりしたのは「ああ、深海に行きたい」って書いて、2年後に本当に深海に行けたこと。それは特殊だと思うんですけどね!

お仕事につながったり、10年後に会った人が「ブログ見てたよ」って話に花が咲いたり。好きなことでつながれてるってすごいことですよね。

この仕事をしていなかったとしても、そのブログで、私は救われていたんじゃないかと思います。

SNSは自分だけの場所です

いまは誰でもSNSができる。
言霊が実現したように、きっと逆のこともあって、裏アカウント作って誰かの悪口を書いたり、ネットで誰かをたたいたりしたら、何らかで返ってくる気がして怖いですね。

きれいごとじゃなく、誰かをたたくこと、誰かを攻撃すること、自分が死ぬことは、やっちゃいけない。

それ以外だったら、いま「無駄」とか「意味ない」って思っていたとしても、結果的に経験値になっています。

SNSは自分だけの場所です。
現実の自分がしんどくても、好きなことをつづる、好きなことをほめるしばりでやってみてほしいです。誰でもできるので。

LINEグループのしんどさは、少し置いておいて。

大人が背中で語っていくこと

ネットは炎上したり人を傷つけることもある。
大人でもあります。誰かをたたいているのを見ると、ただのイジメの構図だなぁって思います。

でも、大人が誰かを呪って生きていたら、子どもたちは「ずっといじめなんてなくらないんだ」って思っちゃう。
だから、大人として生きる上で、「大人って自由じゃん」「大人って楽しそうじゃん」って背中で語ってほしい。

大人になっても理不尽なことはある。
でも、大人になったからこそ分かる「あのときしんどかったけど、生きるのやめないでよかった」「あの頃、好きなことを見つけておいてよかった」を伝えていかないといけない。

私も30代になってようやく、気づいたこともすごく多かったから。

自分のいじめの体験や、話を聞いた10代の子たちのことをこの夏、本にまとめました。
しんどい子にも読みやすいように、漫画をたくさん描きました。
これができるのも、あの頃「キモい」って言われた、絵を描くことが好きだったから。

なんでもつながっているよなぁと思うと、あの頃の自分にも、今悩んでいる子にも、とにかく「死ぬんじゃねーぞ」って思います。

中川さんが著書に書いたイラスト
中川さんが著書に書いたイラスト 出典: 『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文藝春秋)

もう「最終段階」、見逃さないで

子どもが命を絶つことが、なくなりません。過去最悪になっています。

いじめって、本当に人の心を殺すようなこと。いじめる側にも、いじめがないと思っている大人にも知ってほしい。

先生や親に、子どもたちは言えないんです。

私は中学でずっといじめられていた。中3の最後になって、どうしても我慢できないことがあって、学校に行けなくなったとき、親には「行きたくない」としか言わなかった。理由は恥ずかしくて、言えなかった。

親は「ただ行きたくないだけ」って思って、最初は「義務教育。せめて高校までは出ないとダメ人間になる」って言いました。
「それでも私は今がだめなの!」って大げんかをしました。

本当に大人にこういうことが言えるのって、「最終段階」に近い。

どうか、すぐ対処してください。

傷つくことも、傷つく度合いも人それぞれで、「なんでそんなことで」って思うかもしれないけど、子どもにはそれまで傷ついてきた蓄積がある。誰にもわからないんです、その衝動がどうなってしまうか。

大人は絶対に適当にあしらわないであげてほしい。

著書に寄せた想い

この夏、『「死ぬんじゃねーぞ!!いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文藝春秋)を出版しました。

今の悩んでいる子どもたちへの「押しつけ」にならないように気をつけようって、しんどかった中2、中3だった頃の自分と心の中で確認を取りながら、書き進めました。

自分の体験も一部書きましたが、当事者になってしまった10代をインタビューしたり、いまのいじめのデータも盛りこんだりしました。
私は通信制高校を選び、だんだん学校に行けるようになりました。そういう場所から仕事や進学に羽ばたいていった同級生を知っているので、学校以外の選択肢も本に加えています。

いじめは、いじめている人が悪い。でも、それで自分の時間を悩んだり、苦しんだり、奪われるのはもったいない。そうじゃない選択肢に行ってほしい。そこは親にサポートしてほしいです。

とにかく、今死にたいほどに悩んでしまっている夜に、手に取りやすいような本にしました。

『「死ぬんじゃねーぞ!!いじめられている君はゼッタイ悪くない』(文藝春秋)のページはこちら

<なかがわ・しょうこ>
愛称は「しょこたん」。 歌手や女優、ディズニー映画の吹き替えなど声優、イラストレーターとして広く活躍。NHK「#8月31日の夜に」など、生きづらい子どもに寄り添う番組にも多数出演している。

 

withnewsでは、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou ~きみとともに~」を続けています。

今年のテーマは「#居場所」。 

 目に見える「場所」でなくても、本や音楽…好きなことや、救いになった言葉でもいいです。生きづらい時間や不安な日々をしのげる「居場所」をみなさんと共有できたらと思います。 以下のツイートボタンで、「#居場所」について聞かせてください。


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